法人税申告書の作成方法|初心者にわかりやすく書き方・申請方法を紹介

法人税申告書の作成は、一年に一度必ずあることですが、苦手意識を持っていませんか?
今回は、法人税申告書の作成方法、申請方法を簡単に解説します。
はじめて申告を行う方や、法人税申告にお困りの方のお役に立てれば幸いです。

法人税申告書とは? 入手方法や提出期限を紹介

法人税申告書とは「確定申告書」と「明細書」の総称

法人税確定申告書は別表とも呼ばれ、法人税を計算する書類のことです。
別表以外のものがあるわけではないのですが、法人税法施行規則に附属する別表で様式を規定しているので、そのまま「別表」と呼んでいます。
法人税申告書には1から19までの別表があり、その中で「別表1」が「確定申告書」です。
別表2以降は、確定申告書の「明細書」になり、この確定申告書と明細書の総称を法人税申告書と言います。

各法人の経営内容や、規模によって法人税の金額が異なるので、明細書は法人税の金額に対する説明書と言って良いでしょう。

法人税とは1年間の事業所得に対して発生する税金

法人税は、1年間の企業活動により得られた所得に対して発生する税金です。
「所得」と似た言葉には利益があり、混同しやすいですが、次のように違ったものです。

  • 会計上の利益は、「収益ー費用-損失」
  • 法人税法上の所得は、「益金-損金」

法人税法上の益金とは、資産を増加させる収益すべてを指すので、会計上の収益と違って益金として参入・不算入するものがあります。
同じく損金とは、資産の減少の原因になった原価・費用・損失等のすべてを指すので、会計上の費用・損失と違って損金として参入・不算入するものがあります。

申告の対象となる法人の種類

種類納税義務該当する法人/内容
普通法人すべての所得株式会社、有限会社、合同会社、医療法人(社会医療法人は公益法人等)、企業組合、日本銀行等
通常の営利法人
協同組合すべての所得農業協同組合、漁業協同組合、信用金庫等、共通の目的のために集った個人や中小企業の組合
人格のない社団収益事業のある場合の所得のみPTA、管理組合、研究会、同窓会等
多数の人や財産等が同じ目的のもとに集まっていながら、法人格がなく、代表者また管理人の定めがある団体
公益法人収益事業がある場合の所得のみ一定の社団法人、財団法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人等
公益を目的としており、営利目的ではない法人
公益法人なし地方公共団体、金融公庫、国立大学法人、地方独立行政法人、日本中央競馬会、日本年金機構、日本放送協会等
公共性のある目的を持った法人

法人税申告書は国税庁からダウンロードできる

法人税申告書は、国税庁のHP「確定申告特集」から、確定申告書、付表、計算書、明細書、手引き等がダウンロードできます。

確定申告特集はこちらからご確認ください。

また、税務署や確定申告会場のほか、市区町村の担当窓口や指導相談会場でも受け取ることができます。
この場合は、各窓口の受付時間等を前もって調べておきましょう。

法人税申告書の提出期限は決算日によって変わる

法人税申告書の提出期限は、法人の決算日によって変わります。
法人税の申告期限は、原則として決算日の翌日から2か月以内です。
例えば 決算日が3月31日の場合は、申告期限は5月31日になります。
決算日の2か月後の日が、土曜、日曜、祝日等の場合は、その翌日が申告期限です。

法人税申告書は「別表」から構成されている

法人税申告書を構成する別表の種類は100種類以上

法人税申告書を構成する別表の種類は、別表1から19まであると冒頭で述べましたが、さらに細かい項目に分かれていて、その種類は100種類以上もあります。
もちろんすべての法人が、すべての別表を提出する必要があるわけではありません。
必ず提出が必要な別表はこれから解説していきます。

これらの別表は法人税の申告で中心的な役目を持つ書類です。
多くの別表は、決算書にその別表で申告するべき項目がある場合や、特別な税法上の処理を行うときに使います。

法人税申告書作成に重要となる主な別表

別表名内容
別表1各事業年度の所得に係る申告書
別表2同族会社等の判定に関する明細書
別表4所得の金額の計算に関する明細書
別表5(1)利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書
別表5(2)租税公課の納付状況等に関する明細書

上記の別表は、法人税申告書作成の際、必ず提出しなければなりません。

  • 別表1.法人の基本情報と申告を行う書類で、申告については47項目あります。
  • 別表2.株主がいる場合は「株主名簿」を、株式がない会社の場合は「社員名簿」を作ります、株主の整理をして同族会社であるか判断します。
  • 別表4.損益計算書で計算された利益を基に、法人税法上の所得を計算します。
  • 別表5(1).会計上作成した決算書の財務諸表を税務上の財務諸表に書き換えます。
  • 別表5(2).租税公課納付の際に行われた経理処理を示します。

法人税申告書の作成方法|作成から提出まで流れに沿って紹介

法人税申告書の作成方法|ソフト・エクセル

法人税申告書の作成には、用紙に手書きで行うこともできますし、法人税申告書作成ソフトやエクセルのテンプレートを使って行うこともできます。
作成ソフトの一例

  • クラウド会計ソフト『freee』
  • フリーウェイ税務
  • 弥生会計
  • 10book

エクセルには、「Excel 法人税テンプレート」があります。
平成28年4月1日以降に開始した事業年度等分です。
法人税申告書だけではなく、勘定科目内訳明細書・法人事業概況説明書・適用額明細書等も作成できるテンプレートです。

法人税申告書の作成前に準備する書類は決算書

法人税報告書の作成の前には、決算書等が必要です。
具体的には

  • 決算報告書:1年間の事業概況、損益や年度末の財政状態を記載したものです。
  • 勘定科目内訳書:16項目に分かれた勘定科目の中で、使用している勘定科目の内訳書を作成します。
  • 事業概況書:法人名・納税地・事業内容・従業員数等19項目を記入します。
  • 適用額明細書:租税特別措置法による法人税の優遇措置の適用を受けている場合は、提出しなければなりません。
  • 法人税法上では、決算報告書は下記になります。
  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算書

損益計算書についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

>>損益計算書とは? 貸借対照表との違いや見方を簡単にわかりやすく解説

貸借対照表についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

>>貸借対照表の作成方法とは?ルール・注意点や簡単な作り方も紹介

法人税申告書の作成方法を手順ごとに解説

①別表6以降の文書の作成

別表6以降は、別表4を作成するための明細です。
300を超える項目があり、必要な項目の明細を入力します。

別表番号別表及び付表名
別表6(1)所得税額の控除に関する明細書
別表15交際費等の損金算入に関する明細書
別表16(1)旧定額法又は定額法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書
別表16(2)旧定率法又は定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書
別表16(5)繰延資産の償却額の計算に関する明細書
別表19退職年金等積立金に係る申告書-退職年金業務等を行う法人の分

別表19以降も、「特別償却の付表」等があります。

②別表4に「会計上」「税務上」の損益をまとめる

財務諸表の損益計算書に記された、税引前当期純利益は企業会計上のものです。
法人税申告書を作る際に、決算利益との違いを調節することを調整申告と言います。
別表4には、この調整申告の内容が記入されます。

具体的には次のような作業です。

【利益を加算する項目】

益金算入企業会計上収益ではないが、税務上益金の額に算入するもの
損金不算入引当金の取り崩し等

企業会計上費用であるが、税務上損金の額に算入しないもの
法人税、住民税、税務上限度を超える減価償却費、交際費

【利益を減算する項目】

益金不算入企業会計上収益であるが、税務上益金の額に算入しないもの
受取配当金等
損金算入企業会計上費用ではないが、税務上損金の額に算入するもの
利益処分による特別償却準備金等

③別表7に過去から現在までの損失を記載する

別表7は「欠損金又は災害損失金及び私財提供等があった場合の欠損金の損金算入に関する明細書」になります。
欠損金の損金算入では、各事業年度の始まる日の前10年以内にはじまった事業年度に発生した損失を繰越控除できます。

損失の繰越控除とは、当該事業年度で損失を控除できない場合は、翌年以降にもその損失を繰り越して翌年以降の発生する利益から控除することができる制度です。
この控除を受けるため、10年にさかのぼって損失を記載する必要があります。

④該当内容があれば別表5(1)に記載する

別表5(1)は、「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」と、付表の「種類資本金額の計算に関する明細書」になります。

  • 利益積立金額:各事業年度の所得のうち留保金額から、その事業年度の法人税及び住民税(都道府県民税及び市町村民税)として納付予定金額等の合計額を減算した金額の累計額のことです。
  • 資本金等の額の計算:資本金の増減について記載します。

前述の通り、5(1)では、会計上作成した決算書の財務諸表を税務上の財務諸表に書き換えます。
5(2)では、租税公課納付の際に行われた経理処理を示します。

⑤別表1に記載・税額を確定する

別表1は、「各事業年度の所得に係る申告書」です。
記載し、税額を確定する手順は下記の通りです。

  1. 法人名、納税地等の法人の基本情報を記入します。
  2. 所得金額または欠損金額を記入します。
  3. 法人税額の計算をします。
  4. 地方法人税の計算をします。
  5. その他の項目の記入を行います

⑥確定した税額を別表5(1)・別表5(2)に記載する

最終的に、これまでの過程で計算された税額を、別表5(1)・別表5(2)に記入します。

法人税申告書の提出方法|窓口・郵送・電子申告

法人税申告書の提出方法は3通りあります。

  • 税務署の窓口に直接持参
  • 郵送により提出
  • インターネットを通じて申告書のデータを提出

それぞれにメリットとデメリットがありますので、ご自身に合った方法を選んでください。

法人税申告書を作成する際の注意点

決算報告書を正しく作成する

決算報告書を正確に作成することが、法人申告書を作成するためのひとつのポイントです。
貸借対照表と損益計算書に記載した数字が重要。
各勘定科目へ記入した金額が間違っていると、最終の段階で問題が発生する可能性があります。
日頃から正確な勘定処理をするように心がけましょう。

転記ミスや計算ミスがないように確認する

法人税申告書を作成する際には、決算書に記載されている情報を、漏れなく正確に転記することが大切です。
しかし、すべてを手作業で行っていると転記ミスのリスクもありますし、チェック体制も整えるのにコストがかかります。
転記ミスがあると、最終的に正しく法人税額を計算ができないことになるため、ミスを避けるためにもシステムを導入するのがよいでしょう。

別表は必要な書類のみ使用する

前述通り、別表は1から19まで、100種類以上におよびます。
別表6以降の書類は、すべてを使用する必要はありません。
必要な項目に該当する別表だけを使用することで、申告内容の記入の複雑化を避けられます。

まとめ

法人税申告書の作成方法、申請方法を簡単に解説しました。
法人税申告書の提出期限は、各法人の決算日によって変わりますが、法人税の申告期限は原則として決算日の翌日から2か月以内です。
今のうちに、法人税申告書の作成方法をしっかりと理解しておきましょう。
また、法人税申告書は、手引きを含めて国税庁のHPからダウンロードできますが、ミス軽減や負担軽減のためにもシステムの導入がおすすめです。

スムーズな納税のために、早めに準備をしておきましょう。

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