自社の経営状態を確認できる「決算書」
多くの場面で耳にする用語ですが「正しい分析方法がわからない」「そもそもどの書類が決算書なんだろう」と悩むこともありますよね。
本記事では、企業経営に必須の決算書について、基本的な用語解説から、分析方法までを網羅して解説します。決算書の分析は「手法」と「視点」が重要です。
決算書とは
ここでは決算書の概要について確認します。
決算書は、該当する会計年度(1年間)における「自社の利益と損失」等、企業の現状を報告する書類を指します。
会計年度は1年となっているものの、全企業で期間が定まっているわけではありません。そのため、業種等によって期間は異なります。しかし、国内では4月から3月末を会計年度に定めている企業が多い傾向にあります。
決算にまつわる書類を総括して「決算書」と呼ぶ
決算書には種類があり、関連する書類をまとめて「決算書」と呼びます。
決算書と呼ばれる書類は以下の3つです。
・貸借対照表(BS)
・損益計算書(PL)
・キャッシュフロー計算書(CF)
貸借対照表はバランスシートとも呼ばれ、企業の資産状況を確認できます。資産の内容は2つに分類され、借入金の「負債」と自己資本である「資本(純資産)」があります。
損益計算書は、企業の利益と損益を表しています。また、利益と一口に言っても損益計算書で使う利益には「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」と細かく分類できます。
そしてキャッシュフロー計算書は、家庭で言う「家計簿」の役割を担います。企業における資金の流れを一覧にした書類です。
決算書の役割
3つの書類から構成される決算書ですが、外部に企業状況を報告する際に活用されます。具体的には、株主や取引先、銀行等への報告があります。また、企業内における役割としては経営陣が自社の状況を客観的に把握し、新たな指針を策定する際にも役立ちます。
さらに、確定申告や融資のお申し込みの際にも決算書は必要です。
決算書を分析する3つの理由
多くの場面で活用する決算書ですが、作成して終わりではなく、分析して来期に活かすことが求められます。ここでは決算書の分析が必要な理由を3つ解説します。
理由には「現状把握」「資金調達の判断材料」「投資の判断材料」という3つがあります。
①企業が現状を把握するため
経営状態の把握は、健全な企業運営に欠かせません。いくら潤沢な資金があっても、「どんぶり勘定」ではトラブルの元になります。
企業が現状を確認するために、決算書は必要不可欠です。
②銀行が返済見込みを確認するため
自己資本のみでの企業運営は非常に難しいです。そのため、どの企業も融資を受ける機会があるでしょう。銀行で融資を受ける場合にも決算書は必要です。
銀行は決算書の情報を元に、融資の判断を行います。
③投資の判断材料
上場企業の場合は、決算書は投資の判断材料として活用されます。決算書の健全性によって、投資をするか否かを決定します。
決算書分析に必要な3つの視点
分析が必要な決算書ですが、分析の方法や視点を間違えると正確な読み取りや判断ができません。ここでは正しい分析に必要な視点を3つ紹介します。
決算書は「推移」「比重」「比較」の視点で分析が必要です。
①推移を確認
決算書を分析する際は、今期の資料はもちろん、数年間の推移を確認することも大切です。
具体的には、損益計算書(PL)における売上利益や経常利益の推移を3年〜5年の期間で分析すると、企業の規模の変化が確認できます。
②科目の比重を確認
損益計算書(PL)において、各科目の比重を比較分析することも重要です。先述したように損益計算書には5つの科目があります。それらを比較して「どの利益がどれくらいのパーセンテージを占めているか」を確認します。
③他社との比較
自社の推移や、項目ごとの利益率を比較することはとても重要な作業です。しかし、分析は自社のデータ内だけでなく、競合他社との比較も検討しましょう。
他社のデータは入手しづらく、確認できるとしても後ろめたさを感じるでしょう。しかし、他社と比較することで、「うちは人件費率が良くない」等の課題に気が付きます。一方で「うちはここが強みだな」と、自社の良いポイントを発見できるメリットもあります。
決算書分析に必要な3つの手法
次に、決算書の分析に必要な手法を3つ紹介します。具体的な分析は「収益性」「安全性」「成長性」を算出して判断します。
①収益性
収益性は「儲かっているか」を判断する手法です。「売上の高さ=儲け」ではありません。例えば、売上が伸びた分、人件費も上がっていては儲かっているとは言えないからです。
そのため、儲けが出ているかは「売上総利益率=売上総利益÷売上高×100(%)」で算出します。
売上総利益率は、粗利とも呼ばれ商品価値を表します。この数値が高い場合は「付加価値をうまくつけられている」と判断できます。
②安全性
安全性は「支払い能力があるか」を判断する手法です。どれだけ有名な企業でも、支払い能力に問題があると、信用を失い存続に影響が出ます。そのため、安全性についても分析が必要です。
貸借対照表を元に、自己資本比率を確認します。総資産の中で自己資本比率が高ければ「支払い能力がある」と判断できます。
反対に、負債の占める割合が高い場合や、流動資産(短期で現金化できる資産)が少ない場合は、資金に余裕がないと判断できます。
参考までに、流動資産の比率は「流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債×100」で算出できます。この値が200%以上が理想の企業です。しかし100%を超えていれば問題ないでしょう。
③成長性
成長性は「企業が成長を続けているか」を判断する手法です。
通常、売上高が伸びると「成長した」と判断します。しかし、ただ売上が伸びただけでは本当に成長したかは不透明です。些細な事がきっかけで偶然一定期間売上が伸びてただけの可能性もあります。
そのため、企業の成長を分析するためには売上高の成長率を算出して分析します。売上高成長率は「(当期売上高-前期売上高) ÷ 前期売上高」で算出できます。
売上高成長率が前年度よりも高い場合は「成長している」と判断できます。
反対に、売上高が伸びていても、売上高利益率が低い場合は成長したとは言えません。
まとめ:決算書の分析にはツールの利用もおすすめ
今回は決算書の分析方法について、視点や手法等具体的な観点から解説しました。
決算書の分析は、企業が現状を把握して来期にさらなる発展を目指すために必要です。
しかし決算書の作成は手間がかかり、人的ミスが発生する可能性もあります。そのため、近年では決算書の作成および分析を行うツールを使用する企業が増加しています。
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