有価証券の種類や仕訳|経理担当者が知っておきたいポイントを解説

有価証券と聞いても、ピンとこない方もいるのではないでしょうか。有価証券に関する取引は日常的に起こるものではなく、個人的に投資をしている人や経理担当者でない限り、触れる機会は少ないと言えます。

この記事では、経理担当者なら知っておきたい、会計上の有価証券について解説します。その概要から、種類や仕訳の方法、よくある疑問まで幅広く取り上げ、「有価証券とは何?」と感じる方にも理解しやすい記事になっています。是非この機会に有価証券について知っておきましょう。

有価証券とは財産の権利を表し証券自体に価値がある紙面

有価証券とは、それ自体が価値を持つ、お金に換えることのできる証券です。証券とは、財産における権利や義務について書かれた紙面(データ)のことです。補足ですが、株式や社債は有価証券のペーパーレス化により、現在紙面での証券はほとんどない状況です。

国や会社の資金調達手段として広く使われ、会社や個人の投資の対象として購入されることが多いものです。しかし、ほかの目的で保有されることもあります。

保有目的で分類する有価証券|4種類を解説

種類:運用目的で保有する【売買目的有価証券】

将来の売却を想定し、時価の変動によって利益を獲得することを目的としたものです。時価が高くなったタイミングで売却すれば利益が得られますが、そのタイミングはいつ来るかわかりません。そのため、いつでも現金に換えられるものとして、流動資産に分類されます。

貸借対照表には期末の時価で計上するため、期末には評価替えを行います。一般的には、証券取引所で公開された期末時点での最終売買価格で計上します。前期末から価額が上がっていれば「有価証券評価益」、下がっていれば「有価証券評価損」を用いて仕訳を行いましょう。

種類:満期まで保有する予定の【満期保有目的債券】

満期を迎えるまで現金化せずに保有することを目的としたものです。国債や社債等が主なもので、基本的に売却は認められません。満期まで保有することで発生する利益を受け取る、資金運用を想定したものです。時価による評価替えは行いませんが、将来得られる利益を見越して価額を調整する「償却原価法」を用いた計算を行います。

貸借対照表への記載は、流動資産である「有価証券」または固定資産である「投資有価証券」のどちらかになり、会計の「1年基準」によってどちらに分類されるかを判断されるのです。

種類:子会社や関連会社の株式等【子会社株式・関連会社株式】

別の会社の株式を保有することで、その会社の意思決定に影響を与える「議決権」を得ることができます。議決権の所有割合やその会社に与える影響の度合いが高いと、その実態から「子会社株式」または「関連会社株式」と判断されます。

これらの株式は短期的な売買を前提としたものではないため、時価による評価替えは不要です。また、貸借対照表では固定資産の「投資有価証券」として扱われます。

種類:【その他有価証券】

上記の3つの有価証券以外のものを「その他有価証券」と呼びます。期末には、時価評価額との差額を「その他有価証券評価差額金」という純資産の科目を用いて仕訳するのが通常の流れです。その他有価証券評価差額金は、会計上と税法上の税金金額の差異を調整する税効果会計が適用されます。

また貸借対照表での扱いは、満期日が1年以内かどうかによって、流動資産の「有価証券」と固定資産の「投資有価証券」のどちらかに判断されます。

経理担当者が知っておきたい「会計上の有価証券」

有価証券は商法上、権利の対象となる財産によって「貨幣証券」、「物財証券」、「資本証券」の3つに分類されます。しかし、会計上有価証券として扱われるものはこの定義とは異なり、出資者の権利として請求できる「資本証券」のみです。これは税法上の有価証券として扱われるもので、具体的には以下のものがあります。

  • 国債証券
  • 地方債証券
  • 社債券
  • 株券
  • 日本銀行等の発行した出資証券
  • 投資信託の受益証券
  • 合同会社、合名会社、合資会社の出資分
  • 協同組合の出資分

資本を提供したことによって、配当や出資分の償還等を受け取る権利を有するものが、税法上の有価証券とみなされます。

会計上は有価証券に含まれない証券の具体例

会計上の有価証券には、3つの分類のうち「貨幣証券」「物財証券」は含まれません。

「貨幣証券」とは、貨幣を受け取る権利を有するもののことで、手形や小切手等のことです。手形は「受取手形」「支払手形」、小切手は「現金」「当座預金」で仕訳を行います。また、「物財証券」は商品や船荷を受け取る権利を有するもので、「仕入」で仕訳を行いましょう。これらは会計上は有価証券に含みません。

満期保有目的債権(投資有価証券)の勘定科目と仕訳例

①投資有価証券を購入したときの仕訳

【例】・100,000円の満期保有目的債券(社債)を96,000円で購入
   ・利払日は3月末・9月末の年2回
   ・年利率1.5%、償還期間は2年間、償還日は2025年3月31日

購入した有価証券は、実際にかかった取得金額で計上します。上の例の社債について、2023年10月1日に購入して普通預金から支払った場合は、以下の仕訳を行います。

投資有価証券 96,000 / 普通預金 96,000

この場合は、利払日の翌日の購入です。そのため、次の利払日に半年分の利息を受け取ることができます。しかし、利払日の翌日以外に購入した場合は、保有していない期間の利息も受け取ることになるため、購入時に購入日以前分の利息を前もって返金する処理を行います。この社債を2023年12月12日に購入した場合は、73日分の利息を返金する必要があるため、以下のように計算します。

100,000円 × 1.5% ÷ 365日 × 73日 = 300円

この300円の利息を考慮し、仕訳を行います。

投資有価証券 96,000 / 普通預金 96,300
有価証券利息    300

②利払日に利息を受け取ったときの仕訳

社債の利息は、購入日に関わらず前回の利払日の翌日から次の利払日までの利息が支払われます。利払日2024年3月31日に普通預金に入金があった場合の仕訳は以下のようになります。

普通預金 1,500 / 有価証券利息 1,500

③-0.償却原価法とは

社債の利率が市場より低い場合は、社債を本来の額面より低額で販売した上で満期日に額面の総額を償還することもあるでしょう。これは実質の利息を底上げする意味を持ち、より広く資金を調達するために用いられる手法で、割引発行と言います。

割引発行された社債を購入した場合は、取得価額と額面の金額の差である「金利調整差額」が生じることになります。この差は償還日に一度に計上するのではなく、時間の経過によって発生するものとして、毎期計上する処理を行うのが原則です。これを「償却原価法」と言い、「利息法」と「定額法」の2通りの方法がありますが、原則的に利息法で処理します。

③-1.償却原価法による評価替えをする場合の仕訳

【例】・100,000円の満期保有目的債券(社債)を96,000円で購入
   ・利払日は3月末の年1回
   ・年利率1.5%、償還期間は2年間、償還日は2025年3月31日

原則として用いられる利息法は、債券の利息と金利調整差額の合計額が、社債の帳簿価額に対する実行利子率になるように処理し、利払日に仕訳を行います。上記の例で実行利子率が年3.6089%とすると、1年間に実質発生する有価証券利息は以下のようになります。(なお、端数は四捨五入しています。)

96,000 × 3.6089% = 3,465

また、利払日に実際に受け取ることのできる金額は以下のようになります。

100,000 × 1.5% = 1,500

この差額を、投資有価証券の増加分として仕訳します。

普通預金   1,500    / 有価証券利息 3,465
投資有価証券 1,965

なお、2年目の仕訳は取得価額の96,000円と増加分の1,965円の合計を帳簿価額として計算するため、投資有価証券の増加分は年を経るごとに複利的に増加します。

定額法では、額面と取得価額の差を、保有する期ごとに均等に計上し、最終的に額面と一致させる処理で、決算日に仕訳を行います。2023年4月1日に上記の社債を購入した場合は1期ごとの投資有価証券計上額は以下のように計算できます。

(100,000 - 96,000)÷ 2 = 2,000

そして、決算日の2024年3月31日の仕訳は以下のようになります。

投資有価証券 2,000 / 有価証券利息 2,000

④満期日に償還するときの仕訳

利息法でも定額法でも、償還日には額面通りの投資有価証券が計上されている状態になっています。償還日の仕訳は、この有価証券を減らし、入金があった普通預金等を増やす仕訳を行います。上記の例で、償還日の2025年3月31日の仕訳は以下になります。

普通預金 100,000 / 投資有価証券 100,000

売買目的有価証券の勘定科目と仕訳例

①売買目的有価証券を取得したときの仕訳

上記の投資有価証券と同様に、取得にかかった金額で計上します。付随してかかった手数料等の費用も取得価額に含め、以下のように仕訳を行います。

【例】売買目的でA社株式1,000株を1株96円で購入した。
   手数料5,000円とともに普通預金から支払った。

売買目的有価証券 101,000 / 普通預金 101,000

②配当金を受け取ったときの仕訳

有価証券を保有することで得られる配当には所得税等がかかり、入金されるのは税金の額が源泉徴収された後の金額となります。配当金の総額は「受取配当金」、源泉徴収額は「法人税、住民税及び事業税」または「租税公課」の科目で仕訳を行います。

【例】保有する株式の配当日になり、8,000円が普通預金口座に振込まれた。なお、この額は源泉徴収分2,000円を控除した金額である。

普通預金         8,000 / 受取配当金 10,000
法人税、住民税及び事業税 2,000

③決算時の評価替えの仕訳

売買目的有価証券は、利益の出るタイミングでの売却を想定したものです。利益を得ることのできる機会を逃さないためには、時価を把握しておくことが重要です。そこで、決算時には、保有しているものについて時価で評価替えを行います。簿価より時価が高ければ「有価証券評価益」、低ければ「有価証券評価損」を用いて、以下のように簿価を増減させる仕訳を行います。

【例1】期末に保有している売買目的有価証券の簿価は101,000円、時価は120,000円であった。

売買目的有価証券 19,000 / 有価証券評価益 19,000

【例2】期末に保有している売買目的有価証券の簿価は101,000円、時価は95,000円であった。

有価証券評価損 6,000 / 売買目的有価証券 6,000

なお、評価によって発生した損益は、損益計算書ではそれぞれ営業外収益・営業外費用に計上されます。

④売買目的有価証券を売却したときの仕訳

売却する場合は、簿価より売却価格が高ければ「有価証券売却益」、低ければ「有価証券売却損」を用いて仕訳を行います。

【例1】簿価120,000円の売買目的有価証券を150,000円で売却し、代金は普通預金に入金された。

普通預金 150,000 / 売買目的有価証券 120,000
             有価証券売却益   3,000 

【例2】簿価120,000円の売買目的有価証券を105,000円で売却し、代金は普通預金に入金された。

普通預金    105,000 / 売買目的有価証券 120,000
有価証券売却損   15,000

配当と同様に、売却で利益を得た場合も税金がかかりますが、この時には基本的に源泉徴収はされません。投資証券の保有口座として「特定口座」を開設している場合のみ源泉徴収が行われます。開設していない場合は、確定申告で利益を申告する必要があります。

また、売却によって発生した損益の損益計算書上の扱いは、評価によるものと同様に営業外収益・営業外費用となります。

有価証券について経理担当者のよくある疑問

Q1.有価証券と投資有価証券の違いは何か

投資有価証券は有価証券の内のひとつですが、貸借対照表上はそれぞれの項目が独立して記載されます。このときの「有価証券」は流動資産であり、売買目的有価証券や満期まで1年以内の満期保有目的債券が含まれます。

「投資有価証券」は固定資産であり、満期まで1年を超える満期保有目的債券、子会社株式・関連会社株式、その他有価証券が含まれます。

Q2.有価証券は流動資産なのか固定資産なのか

有価証券について、決まりとしての科目の分類は上記で述べたとおりですが、流動性に着目して考えるとよりわかりやすいでしょう。売買目的有価証券は、いつか現金化することを想定しており、いつでも現金化することができるため流動性は高いと言えます。子会社・関連会社株式とその他有価証券は、そもそも現金化することを想定しておらず、別の目的で保有するものであるため、流動性は低いものです。

満期保有目的債券については、満期までの期間が1年以下のものとそうでないものがあるため、扱いに注意が必要です。取得時は固定資産として計上しても、時間の経過によって満期まで1年以内となれば、流動資産として扱います。決算ごとにしっかりと確認を行う必要があります。

【まとめ】有価証券の種類・経理処理方法を押さえよう

有価証券とは、保有することで財産の権利を得るものです。その中でも、会計上の有価証券は出資者の権利を担保するものを指し、4種類に分類されます。それぞれの仕訳や流動資産・固定資産の判別の方法は複雑です。正しく理解するには、まずは有価証券の種類を知ることが重要です。基礎的な知識をつけた上で、ひとつひとつについて会計上の経理処理を押さえておきましょう。営業活動には直接関係のないものですが、会社の経営全体にとっては重要なものであり、資金繰りや財務分野で必ず役に立つはずです。

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oneplus編集部

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