新株予約権の仕訳方法を紹介!発行・取得・社外・社内それぞれ解説

企業が買収を防ぐためや、資金を調達するために新株予約権を発行するという手段を用いることがあります。

新株予約権を発行した時や株式を取得した時、どのように仕訳を行えば良いでしょうか。

今回の記事では、新株予約権の仕訳方法や種類、メリットやデメリット等について解説します。

目次

活用範囲に広がりを見せる「新株予約権」とは?区分と共に押さえよう

新株予約権とは|株式取得が可能な権利のこと

 新株予約権とは前もって条件・価格を決定し、その条件で会社が発行する株式を取得できる権利のことを言います。

条件とはどのような感じかというと、例えば、1株100円でA会社の株を買うことができるというようなイメージです。

株主や投資家等がその権利を行使して証券会社で手続きを済ませることで、新株を受け取ることが可能になります。

適切に正しく使用することができれば企業にとって大きな利益を上げることができますが、不利益が生じる可能性もあるので注意が必要です。

新株予約権はなぜ区分表示が純資産なのか

新株予約権は貸借対照表で純資産の区分です。

新株予約権を保有している人はその権利を行使することで企業の株式を取得し株主になります。

そして株主から支払われた資本は純資産の区分になるので、新株予約権を保有している将来の株主から受け取った資本も同様に純資産として扱うということです。

ちなみに、新株予約権を発行した段階では取得者は株主ではないため、資本金と資本準備金とは区別して管理しなければなりません。

ストックオプションとの違いを新株予約権の主な種類と共に解説

新株予約権は社外に向けて発行するか社内に向けて発行するかで大きく2種類に分類され、社外に向けての発行はさらに3種類に分類されます。

以下が、それぞれの種類と特徴の解説です。

  • ストックオプション・・・企業の取締役や従業員等社内に向けて発行される新株予約権。
    価額を現在の株価よりも低くし、数年後に権利を行使することができるよう設定されています。資金が少ないベンチャー企業等では従業員にストックオプションを付与し人材を確保します。
  • 社外向け発行・・・名前の通り社外に向けて発行される新株予約権であり、主に資金を集めるために発行されます。
  • 無償割当・・・既存の株主に対し無償で新株予約権を割り当てることを無償割当といいます。
    企業が新株発行等で増資を行う際に活用される方法であり、割り当てる量は保有している株式の割合によって決定されます。
    新株発行等で増資を行うと基本的に株価は下落する傾向にあるので、株主の損失を軽減するために無償割当は行われます。
  • 有利発行・・・株主以外の第三者に対し、新株予約権を割安の価格で発行する手続きのこと。発行する際は株主総会での特別決議による承認を得なければなりません。

発行者側の会計処理|新株予約権の仕訳例を順を追って見てみよう

社外に向けて発行した場合

新株予約権を社外に向けて発行する場合は、新株予約権の勘定科目を用いて仕訳を行います。

シンプルな仕訳ですが、ポイントを押さえて覚えることが重要です。

ちなみに社外向けの新株予約権は資金調達を主な目的に行われます。

1. 発行時|新株予約権の払い込みを受ける

新株予約権者から払われた金額を新株予約権という勘定科目で仕訳を行います。

借方貸方
当座10,000新株予約権10,000

払い込みが行われた直後の段階では権利者が権利行使するかしないか、まだ判断できないので、支払われた金額は資本金には含まずに新株予約権という勘定科目を用いて計上します。

2-1. 権利行使時|新株を発行した

権利行使時には新株予約権を発行した時に支払われた金額と、権利行使時に支払われた金額の合計を資本金勘定に振替えます。

ちなみに、合計金額の50%を超えない額までは資本準備金に加えることも可能です。

以下が仕訳の例です。

(例)新株予約権の内、10,000円が行使され権利行使額40,000円が当座に支払われた。

なお、そのすべてを資本金とした。

借方貸方
新株予約権10,000資本金50,000
当座40,000

2-2. 権利行使時|自己株式を処分した

企業が保有している自社の株式を売ることを、自己株式の処分といいます。

処分する時は売った時の価額と帳簿上の価額に差異が生まれるので、その差異を自己株式処分差益・自己株式処分差損という勘定科目を使って仕訳を行わなければなりません。

以下が仕訳の例です。

(例)帳簿価額1株10,000円の自己株式を9,000円で売却した。代金は当座に振込まれた。

借方貸方
当座9,000自己株式10,000
自己株式処分差損1,000

3. 権利失効時|新株予約権戻入益への振替

新株予約権の権利を行使しないまま行使期間が過ぎた場合は、新株予約権戻入益という勘定科目を用いて仕訳を行います。

以下が仕訳の例です。

(例)1個20,000円の新株予約権の内、5個分は権利行使しないまま行使期間が過ぎ失効した。

借方貸方
新株予約権100,000新株予約権戻入益100,000

新株予約権を借方で減少させ、貸方の新株予約権戻入益に振替えを行います。

なお、新株予約権戻入益は損益計算書の中では特別利益という分類に計上されます。

社内に向けて発行したストックオプションの場合

先ほどは社外に向けて発行した場合の仕訳を説明しましたが、続いて社内に向けて発行した場合の仕訳を説明します。

社内に向けて発行した場合は、社外に向けて発行した場合と処理の方法が異なります。

両者の違いをポイント毎に押さえて覚えることで仕訳のミスを防ぐことに繋がるのでしっかりと覚えましょう。

1. 発行時|企業から従業員に対して付与を行った

発行時の仕訳は社外向けに新株予約権を発行した時とさほど違いはなく、借方の勘定科目に株主報酬費用、借方には新株予約権を用いて仕訳を行います。

以下が仕訳の例です。

(例) ストックオプションを従業員に無償で付与した。なおストックオプションの評価額は1,000,000円である。

借方貸方
株主報酬費用1,000,000新株予約権1,0000,000

3. 権利行使時|新株の発行・自己株式の処分

ストックオプションの権利を行使した場合は、新株を発行するのか既に保有している自社の株式を交付するかどちらかを選択することができるので、状況によってどちらの方が好ましいか判断をしましょう。

なお従業員が権利行使し、リターンを大きく得た場合はそのまま会社を退職する可能性も生じるので事前に対策を行うことも重要です。

以下が仕訳の例です。

(例)ストックオプションを付与した従業員が10,000円の価格で権利を行使した。

借方貸方
当座10,000資本金20,000
新株予約権10,000

4. 権利失効時|新株予約権戻入益への振替

ストックオプションの権利が失効してしまった時は、社外向けに発行した新株予約権が失効した時と同様に、特別利益に分類される新株予約権戻入益の勘定科目を使って仕訳を行います。

借方で新株予約権を減少させ、貸方に新株予約権戻入益を計上します。

以下が仕訳の例です。

(例)1個あたり50,000円のストックオプションの内、2個分が権利行使されることなく行使期間が終了し、失効した。

借方貸方
新株予約権100,000新株予約権戻入益100,000

取得者側の会計処理|新株予約権の仕訳例を順を追って確認しよう

1. 取得時|新株予約権の支払いを行う

ここからは新株予約権を取得した側の仕訳をどのように行うか解説します。

取得時の仕訳方法については新株予約権の取得者側では新株予約権という勘定科目は用いずに代わりに有価証券という勘定科目を使用します。仕訳はシンプルな内容になっているので比較的簡単に覚えることができます。

 発行者側との違いをしっかりと覚えましょう。

以下が仕訳の例です。

(例)1個50,000円の新株予約権を1個取得し、当座にて支払いを行った。

借方貸方
有価証券50,000当座50,000

2. 権利行使時|株式の対価の支払いを行う

権利を行使して株式を取得した際は、株式をどのような目的で取得したのかによって仕訳の方法が変化します。例えば売買目的で株式を取得した場合は権利を行使した時の時価、それ以外の目的で取得した場合は帳簿上の価額で仕訳を行う必要があります。

何を目的として取得したのか正確に把握することが重要です。

以下が仕訳の例です。

(例)1個10,000円(1個につき交付株式数100株、行使価額1株1万円)の新株予約権を5個権利行使し、当座より支払った。

この株式は売買目的のために取得したものではない。

借方貸方
投資有価証券5,050,000当座5,000,000
有価証券50,000

3. 権利失効時|新株予約権失効損を計上する

権利が行使されず新株予約権の行使期間が過ぎて失効してしまった場合は、新株予約権失効損という特別損失に該当する勘定科目を用いて仕訳を行います。

権利行使時とは違い、失効時はどのような目的で保有していようとも新株予約権失効損として仕訳を行います。

ちなみに、新株予約権未行使損という勘定科目を代わりに使う場合もありますが意味は同じです。

以下が仕訳の例です。

(例)権利行使せずに1個50,000円の新株予約権の行使期間が過ぎ、失効した。

借方貸方
新株予約権失効損50,000有価証券50,000

新株予約権発行に伴うメリット・デメリットは?

メリット|大型買収を抑止|株式の価値の安定化

新株予約権の発行者側におけるメリットはまず敵対企業からの買収を抑止できることです。

企業はいつでも、買収が行われる可能性があります。

企業の内の過半数以上の株式を保有され、経営権を失わないために新株予約権を発行し抑止を行うことができます。

それ以外のメリットとしては、新株を発行する際に伴う株式の値段の下落を防止できることです。

公募増資と比較して、新株予約権は株価の下落をコントロールしやすく、下落の影響を緩和することができます。

ですが、あくまでも公募増資との比較なので、株価の下落リスクがなくなるわけではありません。

デメリット|行使されないと資金調達にならない

デメリットは行使されないと想定通りに資金調達が出来なくなるということです。

新株予約権は資金調達のために用いられることがありますが、実際に権利が行使されるかは予約権者がどう判断するかによります。

予約権者が思っていたより株価の上昇が見込めないと判断した場合は、権利が行使されることなく失効し、資金調達ができないというリスクがあります。

また、新株予約権やストックオプションの割当や条件等は場合によって不公平を感じてしまうことがあるため、どのように割当を行うかの基準を明確にすることが重要です。その作業が煩雑になることもデメリットとして挙げられます。

新株予約権取得に伴うメリット・デメリットは?

メリット|権利の行使を選択ができる

取得者側のメリットは新株予約権の権利行使を権利者が自分の好きなタイミングで自由に行うことができることです。

例えば、株価が上昇して行使価額よりも高くなるタイミングを見計らって、権利を行使することもできます。

同様に株価が下がっている場合は権利を行使せずに、再び株価が上昇するまで待つことも可能です。

権利行使のタイミングをうまく見極めることで多くのリターンを獲得できます。

デメリット|株価変動による損失のリスク

新株予約権は無償のものと有償のものがあります。

株価が上昇し支払った額よりも大きなリターンを得ることができれば問題はありません。

しかし、株価は様々な要素が絡まりあい変動しているので、必ず株価が上昇するとは限りません。

時には行使価額を下回り損失を被るリスクがあることがデメリットと言えるでしょう。

また、権利を行使せずに行使期間が終了してしまい、有償の新株予約権を得る際に支払った金額分の損失を被るデメリットも同時に存在します。

まとめ

今回は新株予約権について用語の解説や種類、仕訳の方法やメリット・デメリット等を紹介しました。

利用方法によっては企業に大きな利益をもたらしますが、同時に株価の下落等のリスクもあります。

社内に向けるか社外に向けて発行するかで処理の方法も異なりますので要点を押さえて覚えておきましょう。

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oneplus編集部

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