経理業務を行っていく上で、損益計算書と貸借対照表を扱うことは避けて通れません。しかし、損益計算書と貸借対照表の違いはどこにあるのでしょうか。
今回は損益計算書と貸借対照表の違いについて、各書類の構成や活用方法を紹介します。
損益計算書と貸借対照表の違いは?
損益計算書と貸借対照表、そしてキャッシュフロー計算書の3つをまとめて「財務三表」と呼びます。いずれも書類も企業の経営状態を示すために重要な書類ですが、記される情報は書類によって異なります。
今回は損益計算書と貸借対照表の違いについて、詳しく解説していきます。違いを整理して経理に上手く活かしましょう。
損益計算書は「1年間の経営成績」
損益計算書に記載してあるのは、企業の「1年間の経営成績」です。
表は、1年間で生まれた収益と経費が一度で確認できるようになっており、差額の利益がわかるようになっています。英語にすると「Profit and Loss statement」となり、略してPLと呼ばれることもあります。
損益計算書を正しく読み解くことで、企業の経営状態を判断したり、改善点を洗い出したりすることが可能です。損益計算書に記される利益は、①売上総利益②営業利益③経常利益④税引前当期純利益⑤当期純利益の5種類です。
「営業利益」と「経常利益」を比較すると、本業とそれ以外の事業どちらで多くの利益を出しているのか判断することができます。また、損益分岐点を判断する際にも、損益計算書は重要な資料となります。
貸借対照表は「ある時点での保有資産リスト」
一方、貸借対照表とは「ある時点での保有資産リスト」を示しています。「ある時点」は、企業によって様々ですが、主に決算日に設定している企業が多いです。
資産を保有するためには、何らかの方法で資金を準備する必要があります。貸借対照表に記されている保有資産の合計額は、手に入れるために準備した負債と純資産の合計額と必ず等しくなければなりません。
貸借対照表は企業がどのような方法で資金を準備し、どのようなバランスで、資産として投資したのかが一目でわかるため、バランスシートとも呼ばれています。
損益計算書と貸借対照表はどう繋がる?
損益計算表と貸借対照表は全く関係のない書類ではありません。財務三表として括られていることもあり、2つの書類は繋がりを持っています。
次に損益計算書と貸借対照表がどのような繋がりを持っているのか、確認していきましょう。
勘定科目の「当期純利益」と「利益余剰金」
損益計算書と貸借対照表は、「当期純利益」と「利益余剰金」という項目で関連しています。
「当期純利益」は損益計算書に記載される項目で、企業があげた利益からかかったすべての経費を差し引いた金額です。株式会社であれば、当期純利益からさらに株主に決まった割合の配当を分配しなければなりません。すべての処理が終わり、残った資金のことを「当期末未処分利益」と呼び、会社の自己資金として処理されます。
残った自己資金は、貸借対照表に「利益余剰金」として記載されます。損益計算書にある当期純利益の増減が、貸借対照表の利益余剰金の増減に影響を与えます。
損益計算書と貸借対照表の構成と活用方法
損益計算書と貸借対照表の概要と繋がりについて整理したところで、それぞれの書類の構成と活用方法を見ていきましょう。
書類の構成を把握することで、より正確に企業の状態を知ることができます。今後の経営に活用していきましょう。
損益計算書の構成
損益計算書の構成は、以下の5つから成り立っています。
①売上総利益
②営業利益
③経常利益
④税引前当期純利益
⑤当期純利益
実際に損益計算書を作成する場合は、①〜⑤の順番で上から記していきます。
売上総利益は売上高から、売上原価を差し引いた粗利益のことです。
・売上総利益=売上高-売上原価
売上総利益の中には、商品を売るために行った営業活動にかかった経費、販管費が含まれていません。売上総利益から販管費を差し引いたものが、営業利益で本業で生まれた利益を示しています。
・営業利益=売上総利益-販管費
経常利益とは、商品の売上以外で生じた利益を指しています。経常利益は、営業利益から営業外収益と営業外費用を差し引くことで求められます。
・経常利益=営業利益-(営業外収益+営業外費用)
税引前当期純利益を算出するには、経常利益から当該期だけに発生した特別利益と特別損失を差し引く必要があります。
・税引前当期純利益=経常利益-(特別利益+特別損失)
税引前当期純利益が算出され、法人税等の税金を差し引くことで、ようやく当期純利益が計算されます。
・当期純利益=税引前当期純利益-法人税等
損益計算書の活用方法
損益計算書を正しく読み解くと、1年間で企業がどの程度経営で成果をあげたのかがわかります。最終的に計算される当期純利益を見ると、企業が1年間で生み出した「もうけ」がわかります。
しかし、当期純利益を計算するまでの流れを把握していると、純利益を生み出すまでにどれくらい経費がかかったのかも知ることができます。想定よりも当期純利益が上がっていない場合は、経費を見直すことで、次期の経営に活かせます。
貸借対照表の構成
貸借対照表は、大きく「資産の部」と「資本の部」に分かれています。
資産の部は表の左側に記載され、「借方」と呼ばれています。借方には現金の他に売上金や機械設備・土地といった企業が持っているすべての資産が記載されます。
一方、資本の部は表の右側に記載され「貸方」と呼ばれています。貸方は資産を手に入れるための資金をどこから、どのように準備したのかが記されているものです。企業の純資産から調達した場合は「自己資本」となり、他から借入を行い返済の義務がある資金は「他人資本」として表の中でも区別されています。
貸借対照表の活用方法
貸借対照表を読み解くと、企業がどの規模の資産を保有していて、資産を保有するため資金をどこから調達したのかがわかります。
多くの資産を保有しているからといって、経営規模の大きな企業と言い切ることはできません。重要なのは、資産を手に入れるための資本をどの程度他人資本に頼っているかです。
資金の多くを他人資本に頼っているということは、企業の純資産が少なく、経営状態が不安定であることを示しています。逆に、自己資本の割合が多い場合は、経営が安定していると考えることができるでしょう。
補足:個人事業主にも損益計算書と貸借対照表は必要?
法人の場合は、決算に関する書類として損益計算書と貸借対照表は必要になりますが、個人事業主の場合はどうなるのでしょうか。最後に個人事業主のパターンを確認していきましょう。
損益計算書は必ず必要
個人事業主であっても、損益計算書は準備する必要があります。一方、貸借対照表は必ず準備しなければいけないものでもありません。
個人事業主が確定申告を青色申告で行う場合は、帳簿形式は、現金主義・単式帳簿・複式帳簿の3種類があります。簡易帳簿とも呼ばれている現金主義・単式帳簿を採用して確定申告を行う場合は損益計算書のみで手続きを進めることができます。
個人事業主が貸借対照表を準備するケースは、青色申告を複式簿記で行い、最高65万円の控除を得る場合のみです。
まとめ:損益計算書と貸借対照表の違いを理解して経理業務に活かそう
損益計算書と貸借対照表に記されている情報は基本的には異なるものですが、どちらも企業の経営状態を示しているもので、算出される値は深い繋がりを持っています。
損益計算書と貸借対照表の違いを理解し、正しく読み解くことで、次に企業が進むべき方向が明確になってきます。経理業務を担当する場合は、それぞれの数字を正確に把握して業務に活かしましょう。