意思決定会計とは?意思決定の種類からその必要性、プロセスを解説

意志決定は企業会計の一部であり、企業の将来を左右する大きな選択を行うときに重要な役割を果たします。しかし、その内容や必要性について深く理解していない人も多いのではないでしょうか。本記事では、管理会計についても触れながら、意思決定会計の目的や必要性、プロセスや種類等について解説していきます。

意思決定会計とは?

意思決定会計という、特定の会計方法があるわけではありません。管理会計が担っている業務の一つとして存在しています。複数の選択肢から企業にとって最も良い選択肢を選ぶ時に、将来の取り組みや変更に関わる情報を把握することが目的です。

意思決定会計の情報は、経営者が戦略や経営方針を決めるための資料にもなり、戦略管理会計と呼ばれることもあります。企業が将来より大きな利益を生み出すためにも、非常に重要な役割を果たしています。

財務会計と管理会計

財務会計は、決算日に企業が所有する資産や負債等の状況や、決算日を含む会計期間内に生み出した利益による影響を開示するために、決算報告書を作成します。これは、税務署や投資家、債権者等企業外部の利害関係者へ企業の財務状況を報告することが目的です。

管理会計は、財務状況や経営成績を集計し、経営者がこれからの経営方針を立て、意志決定するのに必要な情報を提供します。情報は企業内部で共有し、経営管理に役立てることが目的です。あくまで企業が自分たちのために任意で取り入れる会計のため、資料の作成方法は企業によって異なります。

意思決定会計の必要性

意思決定会計は、企業が任意で取り入れるものであり、定められた基準やルールはありません。しかし、多くの企業が意思決定会計を重要視しており、積極的に導入しています。企業が義務ではなくても取り入れているのには、次のような理由があります。

会社の意思決定に客観的な視点を持つため

企業では、日々小さなものから大きなものまであらゆる意思決定を行っています。そのうちの大きなもの、つまり長期的な影響を及ぼす意思決定に対しては、より慎重に判断しなければいけません。

意思決定会計により、過去から現在までの資金の流れを理解し、会計的な課題を洗い出すことで、客観的な視点を持つことができます。経営状況を具体的な数値で表すことで、今後の方針についてより適切な判断が行えるでしょう。

意思決定会計のプロセス

意思決定会計のプロセスは、次の4つのステップに分けることができます。

1.課題の発見と情報収集
適切に意思決定する上での土台となるため、様々な部門や単位で収集します。

2.課題解決のための代替案作成
経営者が比較・判断しやすいように収集した情報をもとに複数の代替案を作成します。

3.代替案の評価と最善案の選択
複数の代替案を比較・評価し、今後生じる可能性があるメリット・デメリットやその確率等を予測し、最も有益な解決策を明確にします。

4.代替案の遂行と結果の分析・検討
実際に決定した解決策を遂行後、一定期間経過したのちに適切であったか分析し、軌道修正が必要か検討します。

このプロセスをうまく活用するためには、代替案を可能な限り数値化することが重要です。数値化することで比較が容易になり、適切な評価がしやすくなります。

意思決定会計の種類

企業では日々、大小様々な意思決定を行っていますが、その意思決定は重要度別に3つの階層に分けることができます。ここでは、影響力の低い日常的なものから、経営に大きく影響を及ぼすものまで、順に紹介していきます。

①業務的意思決定

比較的重要度が低く、日常業務において頻繁に発生する意思決定です。業務の進行計画や、現場における従業員のシフト管理等に関わる決定を行います。現場レベルの意思決定であり、部門責任者やグループリーダー等が担います。

また、短期で頻繁に行われるため関わる金額は小さく、多くは既存の枠組み変更を必要としない決定です。製品単価、製品の販売数量等の数値データが必要になります。

②管理的意思決定

中程度の重要度であり、主に戦略的意思決定を基盤にした業務進行の過程を管理する意思決定です。中間管理職の部長や課長が担い、自分たちが管理する部門において戦略を実現するため、人員配置や業務内容、スケジュール等を決定し、業務の進行を管理します。

③戦略的意思決定

非常に重要度が高く、企業のこれからの経営方針や財務状況に大きく影響を及ぼす意思決定です。経営者や役員クラスが担い、管理会計の情報をもとに慎重に判断する必要があります。例えば、工場の設置や新店舗の出店、新しい地域や海外への進出、企業合併の検討等、今後の経営状況を大きく左右する決定がほとんどです。

財務会計によって作成された決算書で資産や負債の状況を把握することはできますが、かかる費用を予測することができません。そのため、かかる費用や資金繰り等を把握できる管理会計の数値が必要不可欠となります。

正確な意思決定のための「差額収益分析」

正確な意思決定を行い、今後の経営方針について適切に判断するためには、代替案の具体的な数値を明確にする必要があります。そのために用いられる手法が「差額収益分析」です。ここでは、「差額収益」「差額原価」「埋没原価」の3つの概念について解説していきます。

差額収益・差額原価

差額収益とは、ある代替案Aを遂行した場合と、代替案Bを遂行した場合でそれぞれ得られる収益の差額のことです。

差額原価とは、ある代替案Aを遂行した場合と、代替案Bを遂行した場合でそれぞれ発生する原価・費用の差額のことです。正しい分析のためには、差額原価は生産量を増やすことで発生する追加の原価であるという認識を持ちましょう。

埋没原価

埋没原価とは、代替案A・Bのどちらを遂行した場合でも、変化や支出が生じない原価・費用のことです。正しい分析のためには、生産量の増減にかかわらず同額発生する原価であるという認識を持ちましょう。

意思決定会計の具体例

意思決定会計では、その時々の場面において適切に判断する必要があります。そのため、勘や経験のみに頼らず管理会計の数値を追うことも重要です。ここでは、意思決定会計を行う際の流れを詳しく見ていきましょう。

①業務過程における意思決定

ある企業で商品Aと商品Bを製造しており、製造機械には毎月150,000円の固定費がかかっています。商品Aの原価は200円でAとBを1個ずつ1セットにして800円で販売しています。また、商品Aの1か月の最大製造可能数は1000個です。

ここで代替案として商品Aの代わりに類似品の商品Cを買う案がでました。商品Cの仕入れにかかる費用は180円です。この場合は、商品Cを買う案が20,000円節約できるため商品Cを買う案の選択が望ましいといえるでしょう。その内訳は以下の通りです。

商品Aの原価200円×1000個=200,000円
商品Cの原価180円×1000個=180,000円

製造機械にかかる毎月150,000円の固定費は埋没原価となります。

②会社の投資における意思決定

ある企業が200万円の設備投資を検討しています。年間のキャッシュインフローは40万円で、耐用年数5年で償却可能です。年利率5%で5年間運用する場合は、年金原価係数は4.329となります。200万円×40万円=5となり、この投資は5年で回収できることが分かります。

さらに40万を5年間複利で運用する場合を考慮すると、200万円-40万円×4.329=268,400円とプラスの数値を示しているためこの投資は有益と判断されます。代替案がある場合はこの差額や回収期間を比較して、より安全な案を選択するのが良いでしょう。

まとめ:経営の要である意思決定会計で正しい判断をしよう

本記事では、意思決定会計について広く解説してきました。意思決定会計は管理会計業務の一つであり、財務会計と併せて経営者が戦略や経営方針を決定していくための重要な役割を担っています。プロセスの流れや重要度別の階層を理解し、実際の企業経営に役立てていきましょう。

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oneplus編集部

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