変化する電子帳簿保存法のために2年後に向けてすべきこと

2022年以降、電子帳簿保存法は大きく姿を変えようとしています。

電子帳簿保存法とは電子的にデータを残したい時に初めて適用する法律です。

すべての書類を紙で残していた時代から大きく変化を遂げ、電子帳簿保存化する試みが行われようとしています。

今回は以下の点について、税理士法人山田&パートナーの三浦康太氏と共に紹介していきます。

  • 2022年以降の電帳法について
  • 令和4年度の税制改正によって変化したこと
  • 2024年に向けてすべきこと

最後にoneplatのサービスの紹介もしますので是非ご覧ください。

■「電子帳簿保存法」対策セミナー

セミナー概要:2022年以降の電帳法対応、「インボイス制度」への対応方法等

登壇者:三浦 康太 氏

税理士法人山田&パートナーズ 国際部 マネージャー

多国籍企業グループが抱える国内・国際税務の問題に関して、多角的な視点からアドバイスを行っている。 近年では、組織基盤の強化を目的に書類の電子化を推進する企業も多く、電子帳簿保存法に関連したサービスの提供にも力を注ぐ。

2022年の電帳法について

電帳法とは紙保存が原則となっているものを、データとして保存したいと思ったときに初めて適用します。

データとして保存したい場合は、2つに分けられます。

  • 自己が一貫してデータにより作成し、データのまま保存する前提

   (帳簿保存の充足・書類保存の充足)

  • 紙で作成された書類をスキャンして保存する前提

   (スキャナ保存の充足)

それぞれの要件を充足することによって、特例としてデータで保存しても青色申告の要件を満たすこととなります。

ここまでの電子帳簿保存法の適用は任意であるものの、以降は電子取引をする上で強制適用となるので注意が必要です。

電子取引に係るデータとは以下のようなことを指します。

  • 電子メールにより受領した請求書のデータ(PDF等)
  • インターネットにより受領した請求書等のデータ

これらは法人税法に取り扱いの定めはなく、すべて電子帳簿保存法についてのみ規定されているのです。

電子取引に係るデータは保存義務があり、データを保存しないと青色申告の要件は満たしません。

その代わり、代替措置として紙出力保存でも可能となります。

しかし、この代替措置についても2024年1月以降は不可となりますので注意してください。

令和4年度の税制改正によって変化したこと

令和4年に改正された電子帳簿保存法ですが、それまでの流れと令和6年までの保存方法は以下のようになります。

  • 2021年12月31日以前

   原則:データでの保存

   但書:紙出力保存

  • 2022年1月1日以降施行予定(令和3年度の税制改正の内容)

   一定の要件を満たしてデータ保存(紙出力保存不可)

   ※これはあくまで予定だったもので、実際は令和4年に改正され、準備期間として2年間の猶予が与えられました。

  • 令和4年度改正内容

   2022年1月1日~2023年12月31日

   原則:データ保存

   容認:紙出力保存

  • 2024年1月1日以降

   一定の要件を満たしてデータ保存(紙出力保存不可)

電子帳簿法の改正前後で変化したこと

電子帳簿保存法の改正前にポイントとして記載があったものに加えて、改正後に加わった内容は以下の通りです。(一部抜粋)

  • 改正前の記載…”保存義務者が電子取引を行った場合に当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存をすることが出来なかったことを証明したとき”
  • 改正後の記載…”納税地等の所轄税務署長が保存することが出来なかったことについてやむを得ない事情があると認める”

   ”当該保存義務者が出力することにより作成した書面の提示若しくは提出の要求に応じる”

2年間の猶予を受けるための要件

2年間の猶予を受けるためには、以下の(1)、(2)の要件を満たさなければなりません。

(1)「やむを得ない事情がある」こと(要件充足に向けて準備中であること)

取扱通達7-10:宥恕措置における「やむを得ない事情」の意義による記載(一部加工)

対応が困難な事業者の実情に配意し、引き続きその電子データを出力することにより作成した書面等による保存を可能とする経過措置として設けられたものであることに鑑みて、その適用を広く認めることとしている。例えば、その電磁的記録の保存に係るシステム等や社内のワークフローの整備が間に合わない等といった、自己の責めに帰さないとは言い難いような事情も含め、要件に従ってデータの保存を行うための準備を整えることが困難な事情がある場合については、この宥恕措置における「やむを得ない事情」があると認められることとなる。

(2)「書面出力による保存が出来ている」こと(書面の提示若しくは提出の要求に応じる)

取扱通達7-11:宥恕措置適用時の取扱による記載(一部抜粋)

電子取扱データについて、税務調査等の際に、そのデータを出力することにより作成した書面(以下「出力書面」という。)の提示または提出の要求に応じることができるようにしているときは、その出力書面の保存をもってその電子データの保存をしているものとして取扱う。従って、例えば、電子取引データを書面に出力し、出力した書面に押印を行う形式で社内の承認フローが構築され、最終的に出力書面を所定のファイルに保存している場合には、過去に保存要件を満たしていることとなる。

これらの猶予措置を受けるための事前に税務署へ申請等は一切必要ありません。

2024年に向けてすべきこと

ここからは電子帳簿保存法が本格的に大きく変わる2024年に向けて最低限準備しておくことや、プラスで準備しておくべきことを紹介します。

2022年度の改正はあくまでも2022(令和4)年から2023(令和5)年12月31日までの間に行った電子取引に適用されるもの。

2年の猶予の間に、2024(令和6)年から義務化となる要件に従えるよう以下の2点について見ていきましょう。

  • 最低限必要になること
  • プラスαで検討したほうがよいこと

最低限必要になること

電子取引のデータの保存要件を満たす体制の構築

ステップ1:税制改正に関する社内通知・勉強会

      電子取引の範囲・保存要件の正確な理解(専門家にお願いする)

      ※令和3年税制改正の範囲について

ステップ2:現状分析→検討→実行

ステップ1の勉強会で周知すべきことは以下の通りです。

  • 電子取引とは…取引情報の授受を電磁的方式により行う取引のこと。
  • 電子取引の範囲とは…取引情報が電磁的記録の授受によって行われる取引は通信する手段に問わずすべて該当する。

    例として以下のようなものがあります。

   (1)いわゆるEDI取引

   (2)インターネット等による取引

   (3)電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む)

   (4)インターネット上にサイトを設け当該サイトを通じて取引情報を授受する取引

  • 保存すべき取引情報…過程で発生する訂正または加除の情報を個々に保存することなく、確定情報のみを保存することとしている場合

契約上のドラフト:確定情報ではないため保存は不要。最終的に合意に至った情報のみの保存。
見積書①、②:各々の見積金額が確定データとなるため、①、②共に保存が必要

保存する範囲については法人税法と電子帳簿保存法を紐づけてみましょう。

法人税法施行第59条第1項:取引関係書類(一部抜粋)

青色申告法人が保存を義務付けられている取引関係書類とは「取引に関して、相手から受け取った注文書、契約書、請求書、見積書、その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類で、その写しのあるものはその写し」

取引関係書類に該当するかどうかの判断は取引の相手方に交付しているか、又は相手から受領した書面の書類であるかどうかで判断する

法人税法の取引関係書類は上記のようになります。

法人税法と電子帳簿保存法の保存範囲は全く同じなので以下のような疑問点も出てくるでしょう。

  • データ(PDF)と紙書類(書面)を受領した場合

   →紙書類(書面)を正本取り決める

  • 2つの電子取引により受領した場合

   →メールかクラウドサービス等のいずれかひとつを電子帳簿保存法に基づきデータ保存する

ステップ2での流れ

  • 現状分析…現状どのような電子取引があるのか棚卸しをする
  • 検討…どの措置を講じるか、また検索機能の確保の2点について
  • 実行(保存体制)…運用準備

2024年1月までに、このステップ2までを済ませておくことが最低限必要です。

プラスαで検討したほうがよいこと

2年間の猶予の中でプラスαで行うと良いことは以下の3点です。

  • 業務フローの見直し
  • 税務に関するコーポレートガバナンス
  • インボイス制度

業務フローの見直し(システム導入・各部門における業務の棚卸)

・システムの見直し

会社で行っている仕事の流れとして以下の2つがあるでしょう。

(1)取引先と行う業務プロセス

(2)社内で完結する業務プロセス

どこのプロセスを電子化することが、会社にとってメリットになるかを協議することが大事です。業務を効率化出来るかどうかの重要な部分になります。

(イ)EDI取引等の利用…取引先と社内を繋ぐ部分で電子化

(ロ)電子ワークフローの利用…社内で完結する部分の電子化

(ハ)文書管理システムの利用…社内の最終的な書類を保存する部分を電子化

・各部門においての業務棚卸

経理部・財務部を例にして考えてみます。

様々な仕事がある中で、実際は入出金の管理等に時間を割いていることが多いのが現状。

しかし、今後経理・財務に求められる役割は以下になります。

  • 外部環境の変化(改正等)を正確に捉え、うまく活用し、経営戦略を支えることができているか
  • 税務面におけるリスク等を把握できているか(税務コンプライアンスの遵守)

このように重要視すべき点を考え直して備えることも重要です。

税務に関するコーポレートガバナンス

国税庁の取り組みとして企業の大規模化、取引の複雑化等に伴い、国税庁は大企業に対して「協力的税務コンプライアンスの維持・向上のための取り組み」を実施しています。

税務行政の定員と申告件数の状況を見てみると、国税庁の定員は平成元年から平成29年まで定員の数にさほど変化はありません。

しかし、所得税申告数は同じ期間に27%、法人数も30%増えています。

国税庁の定員が横ばいにも関わらず、見なければいけない所得税や法人数が増えています。そのため適切なメリハリを付けることが重要となっています。悪質な納税者には時間を割き、厳正な調査をしなければなりません。

その他の納税者には簡易的な接触をすることが重要とされています。

優良な企業には調査に行く期間が長く空くということが実際に行われています。

そのためしっかりと準備をしておくことで、アピールできるポイントにもなるでしょう。

インボイス制度

検討の全体像として買い手側と売り手側にわかれます。

(売り手の立場での検討)

  • 適格請求書の発行に向けた準備

   (1)請求書フォーマットの改訂

   (2)販売システムの改修

(買い手の立場で検討)

  • 適格請求書の保存…どの書類を適格請求書とするか
  • 免税事業者との取引※…価格の見直し
  • 消費税の適正な申告に向けた準備…経過措置への対応

※免税事業との取引について

インボイス制度導入後は免税事業者からの仕入について適格請求書の交付を受けられないため仕入額税額控除の適用がありません。

そのため、自社への影響を早めに確認して、対応について検討しておきましょう。

また、影響が大きいと想定されるケースは、顧問税理士がいない等の理由で外注先の事業者が自ら確定申告を行っている場合で、インボイス制度に関する適切な判断を出来ない可能性があります。

この場合は、「当社」が適切な助言を担う役割をしなければいけない可能性があります。

最終的に「当社」が増税負担を受け入れるという選択も考えられ、ほかの法令も関わってくる内容となります。

価格交渉をする際は、優位的な地位を利用した形式状の価格交渉とならないよう「下請法」「独占禁止法」等の確認が求められるでしょう。

適格請求書等に記載すべき事項は以下のようになります。

  • 軽減税率対象商品…軽減対象資産の譲渡である旨
  • 税率ごとの税抜対価または税込対価の合計
  • 税率ごとの消費税額
  • 登録番号

これらの事項に関して、請求書や納品書等、複数の書類を交付する場合に関しては1枚に収める必要はなく、複数枚合わせて必要事項が書かれていれば良しとされます。

・電子インボイス協議会

経理の仕事の効率化を図るため、電子インボイス協議会というものがあり、共通のフォーマットを作っている協議会になります。

主に、請求書のフォーマットを作成または検討している協議会です。

標準化された電子インボイスの活用により請求業務のペーパーレスが実現されるだけではなく、売り手・買い手双方において、支給業務の自動化。デジタル化が進み、会計・税務の事務も含めたバックオフィスの仕事の効率化の実現が期待されています。

電子帳簿保存法・インボイス制度に対応している株式会社Oneplat

株式会社Oneplatの営業担当入學氏よりサービスの紹介がありました。

oneplatは国内の法人向けに企業間取引を一元化するスマート決済プラットフォームであり、以下のような特徴を持つサービスです。

(1)業務コスト削減

納品書や請求書を一元管理し、電子化してペーパーレス化できる。

(2)業務時間の削減

データの自動取り込み、会計システムや販売管理システムとの連携で仕訳入力不要で、様々な会計ソフトと連携可能。

(3)会計業務の改善

取りまとめたデータは総合振込データに変換されネットバンキングへ。経理部の入力作業がゼロになる。

(4)財務・経理部門のリモートワーク化に貢献

高度なセキュリティと運用度の高い機能。自宅のパソコン・スマホ・タブレットでも完結。

  • 納品データの登録
  • 請求処理
  • 決済・納品確認
  • 会計仕分

また、oneplatの強みは以下の点になります。

  • 日々の納品書から請求書までデータで受け取れるため、一元管理が可能
  • 納品情報をリアルタイムで確認・記録・日時で納品情報や決済が可能
  • 納品書と請求書の電子化が可能(電子帳簿保存法・インボイス制度に対応)
  • 締め日後、すぐに請求情報を把握することが可能
  • 納品書と請求書の突破作業が不要
  • 全銀データへの変換が可能なため、支払業務に係る工数の削減が可能
  • 現在、利用しているシステムやフローを変えることなく連携が可能

冒頭にもあるように電子帳簿保存法やインボイス制度にもoneplatは対応しています。

初期費用は0円、月額22,000円でサービスを提供しています。

まとめ

セミナーの最後には株式会社Oneplatより、システムの画面の説明もありました。

電子帳簿保存法の改正に向けて各会社が動き出している中、何をすべきなのか理解できるセミナーとなったでしょう。

oneplatは電子帳簿法やインボイス制度に対応したサービスを提供しています。

ご興味のある方は以下より資料をダウンロードしてチェックしてみてください。

https://www.oneplat.co.jp/download/

この記事を読んだ方で「受け取る」納品書や請求書を「電子化」することに興味がある方はいませんか?

oneplatは、納品書や請求書をデータで受け取れるサービスです。

会社組織の財務・経理部門や、支店・店舗・工場などの、 管理業務における下記の課題解決にoneplatは大きく貢献できます。

  • 会計/販売管理システムとの連携で仕訳入力が不要に
  • 取りまとめたデータを自動で取り込み
  • 総合振込データの作成や仕訳の消込も自動入力

導入後は複雑なデータ入力業務に時間を奪われることなく、本来の業務へ時間とコストを割くことが可能です。

このウェブサイトでは、他にもコスト削減・業務効率化に役立つ資料を無料で配布しておりますので、 是非、この機会に一度資料ダウンロードしてみてください。

oneplus編集部

この記事の執筆者

  • 【アパホテル株式会社取締役社長 元谷芙美子氏 セミナーレポート】コロナ禍で業界大打撃でも「黒字経営」を続けられる経営哲学とは

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