売上原価の計算式と求め方|4つの仕訳方法をわかりやすく解説!

経営判断を行う際、売上だけでなく売上原価にも注目することで、製品やサービスが生み出す利益を把握でき、より良い判断ができます。

原価に含まれるコストは業種によって異なるのが特徴です。
また、計算の方法も複数あり、どの方法を選ぶかで数字や勘定科目も異なってきます。
今回詳しくご説明しますので、参考にしてください。

売上原価が示すものとは|混同しやすい項目との違い

売上原価とは|提供した商品等に関する全費用を指す

売上原価とは、提供した商品を仕入れた際や製造した際にかかる費用です。
損益計算書の費用の部に分類され、売上高のすぐ下に表示されます。費用の中でも大きな割合を占める傾向にあります。

原価には、材料費に加えて、製造にかかる人件費・光熱費・減価償却費も含まれます。
厳密には製造業・サービス業・小売業といったどの業種に分類されるかによって、原価に含む範囲が異なってくるため、事前に確認しておくと良いでしょう。

売上原価と区別がつきにくい項目との違い

費用を表す会計用語はいくつかあり、区別がつかないように感じる方も多いのではないでしょうか。これらの用語の間では、対象となる商品や費用の種類が異なりますので、それぞれ詳しくご説明します。

仕入とは|提供したか否かに関わらない費用

売上原価とは、今期に売上となったものにかかった費用を示します。
原価を計算する際には、今期に売上げた商品や製品の量を計算し、売れなかった在庫分の費用は除く必要があるでしょう。

一方で仕入とは、その年度に購入した費用すべてです。
仮に売れなかった場合でも、その年度に買った商品や原材料費はすべて含まれます。

仮に商品を70個購入して7個しか売れなかった場合は、売上原価は7個分に対する費用・仕入は70個分に対する費用です。

製造原価とは|商品等を製造するために発生した費用

売上原価とは、販売された商品や製品にかかった費用を示します。
販売にかかる費用だけでなく、外注費や人件費といったサービスの提供にかかる費用も含まれ、対象は今期売上げた商品のみです。

一方で製造原価とは、製品の製造にかかった費用の合計です。
主に製造業で、製品を作る上でかかる材料費・工場で働く人にかかる労務費・光熱費や家賃といった経費が含まれます。

製造原価は、期首の資産残高に今期製造にかかった費用を足し、期末の資産残高を引き算することで求められます。

売上原価を求める計算式|数値からわかることとは?

売上原価の計算式|損益計算書での位置を理解すると覚えやすい

計算式は次のとおりです。

売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高

それぞれの言葉の意味は次のとおりです。

  • 期首商品棚卸高…期首に残っている在庫の総額
  • 当期商品仕入高…期中に仕入れた商品の合計
  • 期末商品棚卸高…期末に残っている在庫の総額

これらの項目は、損益計算書上で売上原価の内訳として位置付けられます。
用語が多く出てきますが、それぞれの意味をきちんと理解すれば覚えやすくなります。次に実際の数字を使って計算の仕方を解説します。

売上原価の求め方|数値を用いた例題から解説

次のような場合を考えます。

2019年(設立)
商品Xを仕入    :500円にて10個
Xの販売数     :3個
Xの期末在庫数       : 7個

2020年
商品Yを仕入         :700円にて3個
Xの販売数     :3個
Xの期末在庫数       : 4個
Yの販売数     :2個
Yの期末在庫数       : 1個

この場合は、次のように計算されます。

2019年:
Xの売上原価
=期首0+仕入500円×10個-期末500円×7個
=0+5,000円-3,500円
=1,500円

2020年:
XとYの売上原価
=期首500円×7個+仕入700円×3個-期末(500円×4個+700円×1個)
=3,500円+2,100円-2,700円
=2,900円

売上原価の活用|売上総利益がわかるので企業の稼ぐ力を評価できる

売上から売上原価を引くことで、売上総利益がわかります。
これは企業が商品を販売したり、製品を作って売ったりする過程でどれくらいの利益を生み出したかを示す指標です。

販売管理費・管理部門の人件費・税金等は含まれておらず、商品の販売や製造にかかるより直接的な費用のみ含まれています。企業の商品や製品が持つ稼ぐ力を直接計算でき、経営判断の重要な指標のひとつとしても活用できるでしょう。

売上原価の範囲|該当する費用例を業種別に把握しよう

小売業|主な範囲と具体例

スーパー・コンビニエンスストア・文房具屋・ドラッグストア等が含まれます。

商品を他社から仕入れて売る形態が一般的で、製造にコストがかからず仕入にコストがかかります。そのため、原価として計上される範囲は比較的狭く、仕入にかかるコストが中心です。

ただし、大手スーパーや大手ドラッグストアでは自社でプライベートブランドの製品を製造して販売する場合があります。この場合は、製造費も原価として計上しましょう。

製造業|主な範囲と具体例

製造を行っている企業では、次のような項目が原価に含まれます。

  • 製品の仕入にかかった材料費
  • 製造ラインに使用した水道光熱費
  • 製品を修理するのに必要な部品費用・外注費
  • 製造ラインの機械にかかる減価償却費
  • 製造に関わる人の人件費

製造を行う工場勤務の人の人件費は「製造費用」として分類され、販売費及び一般管理費ではなく原価に計上されることに注意が必要です。
また、本社勤務でも工場経理や工場人事を一部担当している人がいる場合は、一部売上原価に配賦するケースがあります。

飲食業|主な範囲と具体例

飲食業は料理に使う材料費が主な原価です。

お客さんに提供する料理にかかる食品の費用に加え、ドリンクの仕入代も費用として含まれます。原価は、期首在庫に仕入分を加え、期末在庫を引き算すれば求められるでしょう。

また、企業によっては、料理を作る過程を「製造」と捉えて、シェフの人件費・ドリンク担当者にかかる人件費・キッチンの光熱費も売上原価として含める場合もあります。方針は企業によって様々ですので、事前に社内で決めておくようにしましょう。

サービス業|主な範囲と具体例

サービスを提供するために支払った外注費が主な原価です。
内容によって様々ですが、機械や時計の修理を行う人に支払う報酬や美容院・エステを行うスタッフに対する報酬等が含まれます。

サービス業に分類される企業でも、小売業のように合わせて雑貨の仕入・販売を行っている場合は、商品の買い付けにかかる費用も原価とします。

サービス業では自社の管理部門の人件費は基本的には原価に含めません。
従業員の業務が事務や営業等、多岐にわたっており、サービスだけを行っている人は少ないと考えられるためです。

売上原価を算出する際の注意点|在庫に関する費用の取り扱い

期末に在庫が残っている場合は、その在庫にかかった費用は原価に含めないことに注意しましょう。
会計上の「費用収益対応の原則」に基づき、当期発生した売上に対してのみ費用を計上する必要があるためです。

もし、期末に残っている在庫分に対する原価も計上してしまうと費用を計上しすぎている状態となり、課税される金額が不正に小さくなってしまいます。期末に在庫を数え、その分の費用は計上しないように注意しましょう。

売上原価の仕訳|4種類の方法と仕訳例を紹介

①三分法|仕入・売上・決算整理

仕入・売上・繰越商品の3つの勘定科目を使って、仕訳を入力する方法です。
簡易的でわかりやすいため、今回ご紹介する4つの方法の中で最も広く使われています。

具体的な仕訳例を見てみましょう。

仕入:原価500円の商品を現金で5個仕入れた

借方勘定金額貸方勘定金額
仕入2,500現金2,500

売上:原価500円の商品を1,000円で3個売上げた

借方勘定金額貸方勘定金額
現金3,000売上3,000

決算整理:期首商品棚卸残高は4,000円、期末商品棚卸残高は5,000円で決算を迎えた

借方勘定金額貸方勘定金額
仕入4,000繰越商品4,000
繰越商品5,000仕入5,000

仕入の金額が売上原価となっており、決算整理仕訳を入力することで、自動的に当期の売上原価を調整できます。

②売上原価対立法|仕入・売上・決算整理

商品・売上・売上原価の3つの勘定で仕訳を入力します。
期中から売上原価に関する仕訳を直接入力するため、かかっている原価を常に把握できるのがメリットです。

具体的な仕訳例を見てみましょう。

仕入:原価500円の商品を現金で5個仕入れた

借方勘定金額貸方勘定金額
商品2,500現金2,500

売上:原価500円の商品を1000円で3個売上げた

借方勘定金額貸方勘定金額
現金3,000売上3,000
売上原価1,500商品1,500

決算整理:期首商品棚卸残高は4,000円、期末商品棚卸残高は5,000円で決算を迎えた
→既に期中に原価に関わる仕訳を入力しているため、決算整理での仕訳入力は不要。

③分記法|仕入・売上・決算整理

商品と商品売買益の2つの勘定を使って仕訳を入力します。
期中に売買の利益を直接計算するため、各時点での利益を随時把握できるのが利点です。

具体的な仕訳例を見てみましょう。

仕入:原価500円の商品を現金で5個仕入れた

借方勘定金額貸方勘定金額
商品2,500現金2,500

売上:原価500円の商品を1,000円で3個売上げた

借方勘定金額貸方勘定金額
現金3,000商品1,500
商品売買益1,500

決算整理:期首商品棚卸残高は4,000円、期末商品棚卸残高は5,000円で決算を迎えた
→仕訳の入力は不要。

売上原価については、別途期首・期末残高・仕入原価から計算すれば求められます。
原価の管理が別となってしまうため、管理が複雑になることに注意が必要です。

④総記法|仕入・売上・決算整理

総記法では「商品」と「商品販売益」の勘定を使い、仕入時も売上時も商品を使って記帳します。

具体的な仕訳例を見てみましょう。

仕入:原価500円の商品を現金で5個仕入れた

借方勘定金額貸方勘定金額
商品2,500現金2,500

売上:原価500円の商品を1000円で3個売上げた

借方勘定金額貸方勘定金額
現金3,000商品3,000

決算整理:期首商品棚卸残高は4,000円、期末商品棚卸残高は5,000円で決算を迎えた

借方勘定金額貸方勘定金額
商品1,500商品販売益1,500

このようにすべて商品の勘定を使うため、仕訳の入力は比較的簡単です。
一方、原価を直接表す勘定がないため、別途計算・管理が必要で、実際にはほとんど使われていません。

納品データや請求データをシステムに連携!手入力作業が自動化できる「oneplat」

納品データや請求データの入力には手間がかかり、手作業で仕訳を入力すると金額の転記や勘定の選択等でミスが発生しやすいです。

経理事務の自動化におすすめなのがoneplatです。
oneplatでは、納品書や請求書をデータで受け取ることで、手作業での処理を減らし自動で仕訳もできます。

oneplatを使えば、商品名やコードの紐付けといった作業を軽減させられます。またミスが起こりにくくなることで、売上原価も正確に把握できるでしょう。

まとめ

売上原価は会社の利益を把握する上で重要な数字です。
業種や会計方法によっても、原価に対して使う勘定や計算の仕方が異なってくるため、事前に確認が必要です。今回、実際の例を使いながら仕訳の入力方法もご説明していますので、参考にしていただけたら幸いです。

原価の計算は複雑ですが、oneplatを使うことで手入力の作業を減らして効率化できます。
納品や請求に関する仕訳も自動で連携されるため、より正確で素早い決算が可能になるでしょう。

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oneplus編集部

この記事の執筆者

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