商品有高帳の移動平均法の書き方|割り切れない時や返品方法も解説!

企業には様々な補助簿が存在します。なぜ補助簿を作成するのかと言えば、日々の仕訳や総勘定元帳だけでは取引の詳細がわからないからです。

今回ご紹介する商品有高帳は、補助簿のうち商品の在庫を捕捉するのに役立つ帳簿となります。商品の適切な在庫管理と関係性の深いものですので、商品有高帳の内容や記帳方法についてマスターしておきましょう。

商品有高帳とは?意味や作成の目的を整理しよう

商品有高帳とは商品の在庫を種類別に管理する帳簿

倉庫に商品を受け入れたり倉庫から商品を払い出したりしたときに、数量等の残高を取引の発生順に記録するための帳簿です。商品の種類ごとに分けて記帳します。

コンスタントに記録をすることで、入出庫量と在庫量を把握することが可能です。

帳簿のフォーマットは下記になります。ご参考になさってください。

日付摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額

【備考】
摘要:仕入や売上といった、受け入れや払い出しの事由を記入。
受入・払出の金額:原価で記入。

なぜ、このようなものを作成するのでしょうか。

作成の目的は即時的で適正な在庫管理をすること

この帳簿が作成される目的は、適切な在庫管理をするためです。帳簿を見れば、その時点での在庫状況が確かめられます。

在庫状況を明らかにすると、何ができるのでしょうか。適正な在庫数量の水準に対して、現在の在庫が多いか少ないかを判断できます。

適正水準を下回っていれば商品が欠品している状況ですし、それを上回っていれば商品の在庫が過剰な状況です。

紛失や盗難等が原因で発生する、実地棚卸高との差異を計算するための根拠にもなります。

実地棚卸については、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

作成には、2つの方法があります。それぞれについて、ひとつずつ確認していきましょう。

商品有高帳作成時の在庫計算・評価の主な方法は2つ|移動平均法と先入先出法

在庫の評価方法は6種類ありますが、期中の経営判断に役立つ主な方法を2つご紹介します。

移動平均法=商品の変動の都度計算し直す方法

在庫に変動が発生する度に、平均単価を計算して評価する方法です。

棚卸資産の評価方法で、原価法のひとつです。前述した通り、商品を種類別にして取り扱います。

期中は商品を調達する度に、アベレージとなる単価を計算。その単価が、次回の調達まで使用する商品単価です。期末においては、商品の評価額を決定する方法となります。

売り渡すときに平均単価を決定できるため、随時評価が可能なのがメリットです。逆に、都度計算が必要であるため会計処理が煩雑であるのがデメリットとなります。

計算が複雑ですので、パソコンの計算ソフト等で処理するのが作業の負担が減って便利でしょう。

【補足】
棚卸資産は、以下の資産です。
•商品や製品
•半製品
•原材料
•仕掛品
•貯蔵品 等
将来的に売り渡すことを見込んでいる資産だけでなく、売買用ではない貯蔵中の消耗品も含みます。一般的に在庫と呼ばれるものです。
※本記事では、内容をわかりやすくするために「棚卸資産=商品」として解説をしています。

もうひとつの方法を確認します。

先入先出法=「古い商品から出庫する」と仮定する計算方法

先立って調達した商品から先んじて売り渡したと仮定して、単価を評価する方法です。取得日が早い、つまりは古い商品から順に払い出していきます。

棚卸資産の評価方法で、原価法のひとつです。前述した通り、商品を種類別にして取り扱います。期中における払出単価と期末における評価額を決定する方法です。

先立って調達した商品から順次売り渡していくという考えは、常識的かつ自然なものだと言えます。

しかし、物価の変動に影響を受けやすいのがデメリットです。

インフレーション局面では、物価が安いときに調達したものを先に売り渡すことになります。原価を安く抑えることに繋がり、売上原価がが減れば、利益が多くなることでしょう。期末における評価額も高くなる傾向にあります。

デフレーション局面では反対の状況です。一般的に、利益が少なくなる傾向にあり、期末における評価額は低くなる傾向にあります。

ここまで2つの方法をご紹介しました。どちらを選んでよいか、迷われると思います。しかし、酷なようですが評価方法は慎重に決めていかなければなりません。その理由を次でご説明します。

評価方法を決めたら届出が必要・変更は簡単にはできない

評価方法は簡単には変更できません。法人税法施行令において、一度評価方法を選んだのであれば、その方法をコンスタントに使用しなければならないと定められています。

変更するときには、申請書を提出して納税地の所轄税務署長の承認を受けることが必要です。

ただし、評価方法を採用してからある程度の期間を経ていない場合や変更後の評価方法では適正な所得金額の計算が難しいと判断された場合は申請が却下されてしまいます。

最初にどの方法を選ぶか、よくよく検討しましょう。

移動平均法を用いた平均単価の求め方

移動平均法の計算式

アベレージの単価は、以下の計算式により求めます。

平均単価 =(直前の残高金額 + 仕入金額)÷(直前の残高数量 + 仕入数量)

商品の合計金額を商品の数で除して、ひとつあたりの単価を算出するのがこの計算式です。後述する帳簿の書き方で上記の計算式を使用しますので、そちらで理解を深めてください。

平均単価が割り切れない場合は?

簿記の問題であれば、平均を算出する際に割り切れない場合は端数処理の指示があります。実務においてはどうなのでしょうか。

実際のところ、小数点以下は四捨五入するのが一般的です。

では、いよいよ帳簿の記入方法をフォーマットを用いて解説します。

【移動平均法】商品有高帳の書き方を流れに沿って解説

①商品有高の前月繰越

日付摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
4/1前月繰越101001,000101001,000

前月末の残高を翌月に持ち越します。

  1. 期首(または月初)の日付を記入し、摘要に「前月繰越」と書き入れます。会計期間を跨ぐ場合の摘要は、「前期繰越」です。
  2. 受入の欄と残高の欄に、数量・単価・金額を原価で書き入れます。

②商品を販売した(売上)

取引例
4/10:商品を5個販売した。

日付摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
4/1前月繰越101001,000101001,000
4/10売上51005005100500

前月から持ち越した商品しかありませんから、その単価・@100円で売り渡します。

  1. 売買した日付を記入し、摘要欄に「売上」と書き入れます。
  2. 払出の欄に単価@100円で数量等を原価で書き入れ、払出後の数量等を残高の欄に記入します。

③販売した商品の返品があった(売上戻り)

売上戻りを払出のマイナスとする場合と、売上戻りを受入とする場合があります。

取引例
4/15:4/10に販売した商品のうち、1個が返品された。

【払出のマイナスとする場合】

日付摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
4/1前月繰越101001,000101001,000
4/10売上51005005100500
4/15売上戻り-1100-1006100600
  1. 返品があった日付を記入し、摘要に「売上戻り」と書き入れます。
  2. 売買時の単価を用いて、払出の欄に数量等を原価で書き入れます。このとき、払出を取り消すので、数量・金額はマイナス表記です。
  3. 売上戻り後の数量等を原価で書き入れます。

【受入とする場合】

日付摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
4/1前月繰越101001,000101001,000
4/10売上51005005100500
4/15売上戻り11001006100600
  1. 返品があった日付を記入し、摘要に「売上戻り」と書き入れます。
  2. 売買時の単価を用いて、受入の欄に数量等を原価で書き入れます。
  3. 売上戻り後の数量等を原価で書き入れます。

④商品を仕入れた

取引例
4/20:商品をひとつ140円で10個仕入れた。

日付摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
4/1前月繰越101001,000101001,000
4/10売上51005005100500
4/15売上戻り11001006100600
4/20仕入101401,400161252,000
  1. 調達をした日付を記入し、摘要に「仕入」と書き入れます。
  2. 受入の欄に、数量等を原価で書き入れます。
  3. 公式を使って平均単価を計算し、残高に数量等を原価で書き入れます。

【計算方法】

平均単価 =(直前の残高金額 + 仕入金額)/(直前の残高数量 + 仕入数量)

それぞれに数字を代入すると、アベレージが算出できます。

(600+1,400)÷(6+10)=@125円

⑤仕入れた商品を返品した(仕入戻し)

仕入戻しを受入のマイナスとする場合と、仕入戻しを払出とする場合があります。

取引例
4/25:4/20に調達した商品のうち、1個を返品した。

【受入のマイナスとする場合】

日付摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
4/1前月繰越101001,000101001,000
4/10売上51005005100500
4/15売上戻り11001006100600
4/20仕入101401,400161252,000
4/25仕入戻し-1140-140151241,860
  1. 返品をした日付を記入し、摘要に「仕入戻し」と書き入れます。
  2. 調達時の単価を用いて、受入の欄に数量等を原価で書き入れます。このとき、受入を取り消すので、数量・金額はマイナス表記です。
  3. 仕入戻し後の数量等を原価で書き入れます。

アベレージは、公式に当てはめて以下のように算出します。

(2,000-140)÷(16-1)=@124円

【払出とする場合】

日付摘要受入払出残高
数量単価金額数量単価金額数量単価金額
4/1前月繰越101001,000101001,000
4/10売上51005005100500
4/15売上戻り11001006100600
4/20仕入101401,400161252,000
4/25仕入戻し1140140151241,860
  1. 返品をした日付を記入し、摘要に「仕入戻し」と書き入れます。
  2. 調達時の単価を用いて、受入の欄に数量等を原価で書き入れます。
  3. 仕入戻し後の数量等を原価で書き入れます。

⑥商品有高帳の締め切り 

期末になれば帳簿を締め切り、以下の計算式で売上高・売上原価・売上総利益を計算します。

売上高の計算:単位売価×販売個数

単位売価が複数あれば、それぞれ計算して合算します。

売上原価の計算:払い出し金額の合計  

払出の欄の金額を合算します。

売上総利益の計算:売上高-売上原価

既に計算した売上から原価を差し引きます。

商品有高帳に移動平均法を使用するメリット・デメリット

メリット:常に評価額の把握ができる    

メリットは商品を調達する度に再計算が行われるため、随時評価額や評価額の推移を掴むことができる点です。

何かしらの変化があったときには、それを察知し可及的速やかに対応に結びつけられるでしょう。移動平均法は、素早い経営判断に役立ちます。

デメリット:計算量が多く業務の負担が大きい  

計算する回数が多いのがデメリットです。担当者の業務負担が増えますので、それが許容範囲かどうか考慮に入れておきましょう。

なお、対象とする商品の数が増加するほどに、計算は複雑化します。取り扱う商品が多い場合は、手間の少ない総平均法を使用するのもよいでしょう。

※総平均法は「仕入原価の合計÷仕入数量の合計」平均単価を求める方法です。

まとめ

商品有高帳は在庫管理に役立つ補助簿です。この帳簿により在庫状況を明らかにすれば、現在の在庫量が適正な水準かどうか判断できます。

商品の在庫は利益の鍵を握るものです。丹念に管理しなければなりません。在庫には管理費等の付随費用が発生しますし、売れ残って不良在庫になるリスクもあります。

勿論、在庫がなく欠品状態であるのも望ましくありません。ですから、企業は適切な管理により過分すぎない在庫を抱えている状態にしておきたいところです。

是非、本記事の内容をお役立ていただき、商品有高帳を作成して適切な在庫管理を始めてみませんか。

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oneplus編集部

この記事の執筆者

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