前払費用とは? 前払金との違いや仕訳例をわかりやすく解説

経理の仕事を行っていると、ほかの勘定科目との違いや使い方で判断を誤ってしまうことがあるのではないでしょうか。今回の記事ではその代表格である前払費用について、下記内容等を紹介します。

  • 前払費用と前払金のどちらを使うべきか判断するポイント
  • 計上するタイミング
  • 消費税が課税されるタイミング

本記事を参考に「前払費用」についての理解を深めましょう。

勘定科目の「前払費用」について解説! 前払金との違いは?

経理をはじめて間もない方にとって、前払金と前払費用のどちらを選択すべきか判断に悩むことが多いのではないでしょうか。この章では前払費用の定義と、前払金と異なる点について紹介します。

前払費用とはどのような計上科目?

前払費用とは、今後も継続的に受けるサービスに対して先に支払いをした金額の内、これからサービスを受ける分について計上する時に使用する科目です。よくある例としては、契約期間が1年間の保険料や事務所の家賃があります。

家賃は、当月に来月分を支払うことが多いのではないでしょうか。支払いが完了した段階ではまだサービス提供を受けていないので、資産として前払費用で計上します。そして翌月になってサービスを受けたら、経費として処理を行っていく流れになるでしょう。

ただし一点だけ、注意点があります。それは、前払費用として計上できるのは「今後も継続して使用する予定のあるサービスのみ」であることです。先ほどの例で言うと、事務所は今月も来月も引き続き借りていく予定なので該当します。

前払金(前渡金)との違いは対価の対象に継続性があるかないか

前払金(前渡金)は、代金は既に支払っているものの、まだその対価は受け取ってない時に使う科目です。先に支払いが完了しているという点においては前払費用と全く一緒ですが、一体何が異なっているのでしょうか。それは、支払いが完了しているサービス・モノを「今後も継続して使用していくかどうか」です。継続して使っていく予定がある場合は前払費用、ない場合は前払金として処理を行うのが正解です。

一般的な例として、販売する商品を仕入れる時に金額の一部を先に支払った場合は、前払金として処理を行います。また、前払費用を使えるのは「サービス」に限定されていることも今回を機に覚えておきましょう。

前払費用の2つの種類についてわかりやすく解説

前払費用は、実は「長期」「短期」の2種類あります。それぞれ「どのような場合に使用するのか」「使用できる条件はあるのか」等について、紹介していきます。

長期前払費用:継続的なサービス契約で1年を超えた部分の費用

長期前払費用とは、既に支払っている分の対価として、サービス提供の受け取り可能な期間が「1年以上先」になる場合に使用する科目です。例として、2年契約の火災保険等が該当するでしょう。

長期前払費用として処理するポイントは、下記2つです。

  • 期間が1年を超えるサービスを契約した場合
  • かつ、事前に支払っている期間が1年を超えている場合

また、会計処理上、長期前払費用も前払費用と同様に「資産」として計上されます。
しかし区分が異なっており、前払費用は「流動資産」ですが、長期前払費用は「固定資産」として計上するので注意が必要です。

最後に特殊なケースとして、法人税法上の繰延資産は、長期前払費用として処理されることを覚えておきましょう。「創立費」「株式交付費」等が該当します。

短期前払費用:支払い時に全額経費に計上できる費用

前の章で紹介した長期前払費用に該当しない場合は、短期前払費用または前払費用として処理します。しかし、前者として処理を行うためには、下記の要件を満たしている必要があるので注意が必要です。

  • 全額の支払いが完了していること
  • 支払いが完了した日から1年以内にサービスの受け取りが完了すること
  • 契約中は「同じサービス」を受け続けること
  • 今期だけではなく来季以降も「短期前払費用」として処理を行うこと
  • 売上等、収益を生むための経費ではないこと
  • 来季以降も時間の経過とともに経費への振替を行うこと

なお、短期前払費用は、支払った金額全額を経費として計上することが可能です。また損金として算入できるので、該当する期の節税対策としても活用できるでしょう。

支払いと同じ事業年度にサービスの提供があることが条件

短期前払費用として処理するためには、「代金の支払い」と「サービスの提供」が同じ事業年度に行われなければいけません。例えば、3月決算の会社が1月に支払いを完了させ、サービスの提供を受けるのは5月だとしましょう。

この場合は、「支払った期 ≠ サービス提供を受ける期」なので、短期前払費用として処理をすることはできません。

注意:短期前払費用として計上できない費用もある

短期前払費用として計上できない例を2つ挙げます。似たケースがあった場合は、使用可能かどうか事前にチェックを行いましょう。

・雑誌、新聞等の定期購読
 これらは「継続的なサービスの提供」という条件に当てはまらないため、前払金として処理を行います。雑誌や新聞という「モノ」の購入と判断できるからです。

・顧問料(弁護士、税理士等)
 相談内容が異なれば、それに対して提供されるアドバイス(サービス)も違ってきます。このように、都度提供されるサービスの内容が均一ではない場合は「継続的なサービス」とはみなされません。

短期前払費用には税務上の特例が存在する

税務上の特例が存在しており、法人税、所得税のどちらでも節税に繋げることができます。ただし、支払った金額全額を損金として計上するには、下記要件を満たす必要があるので注意しましょう。

  • 支払いが完了した日から1年以内にサービスの受け取りが完了すること
  • 翌期以降も継続して同じ処理を行うこと
  • 収益を生むための経費ではないこと

また、上記の特例を適用して経費となった支払い分については、仕入税額の控除を行うことも可能です。これはすなわち、消費税の節税にも繋がります。

前払費用の例は? どんなものが分類される?

前払費用として処理されるものの具体例を、下記に挙げます。

繰り返しになりますが、前払いを行っていて、かつ継続して受け取るサービスであることが条件です。

  • 地代(土地を借りる際に支払うお金)
  • 家賃(事務所等、建物を借りる際に支払うお金)
  • リース料(複合機、車等)
  • 保険料
  • 支払利息(借入金の利息等)

上記がよくある一例になりますので、覚えておきましょう。

なぜ?前払費用を資産として計上する理由とは 

「費用」と名前が付いているのに、資産として計上されるのはナゼなのでしょうか。

前払費用は「今後サービスを受ける権利」を保有していると解釈できるからです。例えば、家賃は当月支払いを行うことで、来月も仕事ができる空間を確保できることに繋がります。また、保険料であれば、何かあった時に保障を受けれる権利を有していると言えるでしょう。

前払費用の計上のタイミングは3つ

1.支払い時

会計期間が、1月1日〜12月31日の会社であると仮定します。7月1日に、翌年6月30日までの複合機のリース料12万円を現金で支払ったとしましょう。

支払い時に計上する時の仕訳は次の通りです。

【借方】前払費用120,000円【貸方】現金120,000円

当期分は7〜12月までの6か月分なので、決算時に下記仕訳を行います。

【借方】リース料60,000円【貸方】前払費用60,000円

最後、翌期首に残り半年分を費用とする再振替処理を行って完了です。

【借方】リース料60,000円【貸方】前払費用60,000円

2.決算を行った時

次に、決算時に前払費用を計上する場合を確認していきましょう。
設定は「支払い時」と同様です。

今回のケースでは、支払い時はいったん全額リース料として仕訳を行います。

【借方】リース料120,000円【貸方】現金120,000円

今期に経費計上できるのは6か月分のみなので、来季の6か月分については「前払費用」として決算時に処理します。

【借方】前払費用60,000円【貸方】リース料60,000円

翌期に入ったら、「前払費用」から「リース料」へ再振替処理を行えば完了です。

【借方】リース料60,000円【貸方】前払費用60,000円

3.翌期に入った時

3つ目の計上方法として、支払い時に「当期分のリース料」「来期分の前払費用」をそれぞれ計算して処理します。

【借方】前払費用60,000円【貸方】現金120,000円
リース料60,000円

今回のケースの場合は、決算時に処理は必要ありません。

【借方】【貸方】

翌期に入ったら、前期で「前払費用」に計上していた分を「リース料」に振替処理を行えば完了です。

【借方】リース料60,000円【貸方】前払費用60,000円

前払費用はどう仕訳する? 具体例を交えて解説

前章では前払費用の計上タイミングに分けて紹介しましたが、今回は「短期前払費用」「長期前払費用」を絡めた仕訳を解説していきます。

前提条件は下記の通りです。

  • 12月決算の会社
  • 火災保険料(2年契約)240,000円を7月に現金で支払い完了

支払い時の仕訳は下記になります。

【借方】保険料60,000円【貸方】現金240,000円
短期前払費用120,000円
長期前払費用60,000円

今回のケースでは契約期間が2年なので「長期」「短期」に分けて仕訳を行っています。しかし、ワンイヤールールに則り、すべて「長期前払費用」として振替えてもOKです。

【借方】 保険料 60,000円 【貸方】 現金 240,000円
長期前払費用 180,000円

前払費用の消費税が課税されるタイミングは?

消費税課税のタイミングは原則サービスの提供時

前払費用の場合は、今後サービス提供を受ける分についても先に支払いが完了しているでしょう。しかし、消費税を課税するタイミングは、原則として「サービスの提供時」です。

なお、先述の通り「短期前払費用」は、税務上の特例として全額損金として処理することができます。法人税で損金処理を行うことが前提になりますが、消費税も仕入税額の控除が可能です。

前払費用も決算時ではなくサービスの提供時に課税される

先に代金の一部や全額を支払ったり受け取ったりするケースは、経営を行っていく上でよくあることではないでしょうか。どのようなケースであれ「実際にサービス提供が行われたタイミング」が、消費税を課税されるタイミングです。

よって、前払費用においても同様で、サービス提供時に消費税が課税されます。「決算時」ではないので注意しましょう。

勘定科目や仕訳の悩みは会計システムのサポートで軽減できる

ここまで前払費用の種類や仕訳方法の事例等をお伝えしてきました。

しかし、処理方法を適切に間違えることなくできるか、心配になられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

解決方法のひとつとして、会計システムの導入があります。今回の前払費用のような処理が難しい勘定科目であっても、システムのサポートがあればミスはもちろん作業時間の削減も可能になるからです。もしまだ導入していない場合は、今回を機に前向きに検討してみましょう。

まとめ

前払費用は前払金との使い分けだけでなく、「短期」「長期」と2種類あったり、仕訳方法も複数考えられるので混乱してしまうことの多い勘定科目ではないでしょうか。

今回の記事で基本的な要素を押さえることはもちろんですが、会計処理をスムーズに行っていくために会計システムを導入することもオススメします。

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oneplus編集部

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