内部統制とは?目的や構成要素をわかりやすく解説

企業を経営する上で大切なのが内部統制です。

「内部統制」という言葉を耳にしたことはありますが、その意味や内部統制の重要性が分からない人もいるでしょう。

内部統制とは何か、その重要性や目的を知ることで、前向きに企業経営に取り組むことができますので、わかりやすく解説します。

内部統制は企業が機能するために必要不可欠なもの

内部統制とは企業運営を健全に行うための仕組み

内部統制とは企業運営を健全に行う、すなわち不正やミスを防止するための仕組みで、すべての従業員が業務を適正に行うためのルールや、ルールを守らせるための取り組みのことをいいます。

例えば、会社で何かを購入するとき規則を決めていないと「許可なしで誰でも」「金額関係なく」購入するでしょう。その購入したものが会社で使うものではなく、従業員が私用で使うものだったらどうでしょうか。

「従業員が私用で使うものを、会社のお金で購入する」ことは明らかに不正です。

また、そのような場合は、厳密にはその従業員の給与となり課税処理が必要となります。

度重なると赤字を招き、倒産に陥ることにもなりかねません。そのためにも内部統制は企業にとって必要不可欠なものです。

金融庁が定義する内部統制と会社法が位置づける内部統制

内部統制には「金融庁が定義する内部統制」と「会社法が位置づける内部統制」があります。

「金融庁が定義する内部統制」については、のちほど詳しく解説しますので、ここでは「会社法が位置づける内部統制」について解説しましょう。

会社法第三百六十二条第四項第六号および第五項において、

・取締役の職務の執行が法令および定款に適合することを確保するための体制
・その他株式会社ならびに企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制
・大会社の取締役会においては、取締役の職務の執行および業務の適正を確保するための体制を決定しなければならない

引用:e-Gov会社法

とし「業務の適正を確保するための体制の構築と運用の権限が取締役会にある」というのが、会社法が位置づける内部統制です。

内部統制の4つの目的 (金融庁の定義)

金融庁が定義する内部統制については金融商品取引法で定められており、4つの目的が示されています。

【目的1】業務の有効性および効率性の向上

うちひとつ目は「業務の有効性および効率性の向上」です。

業務とは事業の目的を達成するために継続して行う仕事のことで、別々の部署で同じ業務をしていたのでは時間や労力が無駄ですし、効率的ではありません。

業務をフロー化して「見える」ようにすることで時間や労力、お金の無駄が省け、効率性の向上に繋がります。

【目的2】財務報告の信頼性を高める

2つ目は「財務報告の信頼性を高める」ことです。

金融庁の企業会計審議会が取りまとめた「財務報告に係る内部統制の評価および監査の基準」では、財務報告の信頼性とは「財務諸表財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性のある情報の信頼性を確保すること」としています。

財務諸表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書等)は、企業の経営状況を判断するもので、株主や銀行等にとっても重要な情報です。

その情報が虚偽であれば信頼が失われ、株主や銀行等は大きな損失となるため情報は正確でなければなりません。

そのため内部統制をしっかりと構築し運用して信頼性を高めなければならないのです。

【目的3】事業活動に関連する法令等を遵守する

3つ目は「事業活動に関連する法令等を遵守する」ことです。

事業活動をする上で法律や条例等を守るだけではなく、労務や財務・税務等の幅広い法令等を守らなければなりません。

これらの法令等を無視して、利益だけしか考えずに活動をしていると明るみになったときには世間から批判を浴び、企業は社会的に信頼を失う事態になります。

法令等を無視して利益だけを追求すれば、法令違反として罰せられることはもちろんですが、従事している従業員は違反行為に加担させられていることで心理的負担が増加し、モチベーションが下がることでしょう。

【目的4】資産の適切な管理と活用・保全を行う

最後の目的は「資産の適切な管理と活用・保全を行う」ことです。

資産には有形の資産だけではなく、特許権や実用新案権・顧客情報等の無形の資産も含まれます。

その資産は株主や銀行等からの資金を調達源泉としているため、適切に管理・保全を行わなければなりません。

大切な資産を勝手に取得したり処分したりしてしまうと、社会的な信用に影響を与える可能性があります。

そのため正当な手続きで承認を得て、資産を取得および管理・処分する体制を整備することが求められます。

内部統制の構築に必要とされる6つの構成要素

4つの目的が達成されているという合理的な保証を得るために、6つの基本的な条件が内部統制を作りあげる上で必要とされています。

では、その6つの基本的な構成要素を見てみましょう。

【要素1】統制環境
企業全体が法律や規範を守り、不正を行わないようにしようとする環境、社風のようなものです。6つの要素の中でも、他の要素の土台となるもので重要な構成要素となります。

【要素2】リスクの評価と対応
目的を達成する上でどのようなリスクがあるのか、リスクが及ぼす影響について分析・評価を行い、適切な対応を行う一連のプロセスのことです。

【要素3】統制活動
経営者の命令や指示が確実に行われるための方針および手続きのことをいい、業務の役割や責任の所在を明確にすることです。

【要素4】情報と伝達
必要な情報がきちんと従業員に伝わらなければ、目的を達成することはできません。
その情報を適切に把握し、識別・処理を行い、社内だけではなく社外にも正しく伝達される仕組みを整備することです。

【要素5】モニタリング
内部統制がきちんと機能しているかどうかを常に監視し、継続的に評価や是正を行うことです。

【要素6】ITへの対応
ITはどの企業も利用し、業務を行う上で必要なものとなっているため、利用状況や浸透度に対して適切な方針と手続き・対応を行う必要があります。
IT環境を整え、継続して整備・維持をしましょう。

内部統制報告制度:上場企業は対応必須

「内部統制報告制度」とは「J-SOX」と呼ぶこともあります。

金融商品取引法に基づき、経営者が財務報告に関する内部統制が適正に機能しているかどうかを評価し、公認会計士または監査人の監査を受け、有価証券報告書とともに内閣総理大臣に提出する制度です。

上場企業は事業年度ごとに提出することが義務付けられています。

内部統制とコーポレートガバナンスの違い

内部統制と間違いやすい言葉として「コーポレートガバナンス」があります。

違いは何でしょうか。

目的監視・管理する人
内部統制不正やミスを防ぐため経営者・従業員
コーポレートガバナンス不正やミスを防ぐため株主・顧客

内部統制、コーポレートガバナンスともに不正やミスを防ぐための仕組みですが、上記の表のとおり、監視・管理するのが社内なのか社外なのかが大きく違う点です。

内部統制に関わる役職や団体名・それぞれの役割は何か?

では、どのような人が内部統制に関わるのかでしょうか。

  • 経営者
  • 監査役
  • 内部監査人
  • すべての従業員

一般的には「取締役会」が内部統制に関わります。では、それぞれの役割を見ていきましょう。

・経営者
経営者は内部統制の整備と運営で、すべての活動の最終責任者です。また事業年度ごとに、内部統制報告書と有価証券報告書を提出する義務があります。

・監査役
監査役は取締役や会計参与等、役員の職務を監査することが役割であり、独立した立場から監視や検証を行います。

・内部監査人
経営者の整備および運用のサポートです。構成要素のモニタリングの一環として、検討や評価を行い、必要に応じて改善を促す役割を担っています。

・すべての従業員
内部統制はすべての従業員が業務を通じて関わります。ルールを守り、適切に遂行する役割を担っています。

・取締役会
取締役会は、内部統制の整備等の方針を決定するのが役割で、経営者の実施状況を監視する責任も担っています。

内部統制の把握のために必要な3点セットの内容を解説

内部統制の把握に必要な3点セットは

  • 業務記述書
  • フローチャート
  • リスクコントロールマトリックス

それぞれの内容を解説します。

【業務記述書】業務の流れを整理する

業務記述書には

  • 担当部署や担当者
  • 業務内容
  • 利用システム
  • 証憑

等あらゆる業務の流れを文章化したもので、業務の内容やリスク・コントロール(回避・損失制御・結合・分離)の把握、担当者の理解度がわかります。

【フローチャート】業務内容を図で可視化する

フローチャートは業務ごとの流れを図で可視化した書類のことです。

業務の過程や全体の流れ、リスク等の把握・確認ができます。

【リスク・コントロール・マトリックス】リスクへの対応を明確にする

リスク・コントロール・マトリックスとは「業務上考えられるリスク」と「そのリスクへの対処(減らす、または回避)」を一覧にして比較した書類のことで、リスクへの対応を明確にすることができます。

内部統制に取り組むべき5つのメリット

内部統制に取り組むことのメリットは以下の5点。

  • ルールが明確になり、コンプライアンス意識が向上
  • 業務の見える化に繋がり、効率性が向上
  • チェック体制が強化され、正しい経営判断が下せる
  • 常にルールや仕組みの改善が行われ、社内制度が整備される
  • 社内のルールや業務の流れを明確にすることで働きやすくなり、従業員のモチベーションが上がる

このように5つのメリットがありますので、取り組むべきものだといえるでしょう。

内部統制を効率的に行う2つのポイント

【ポイント1】重要なリスクに最少の工数で対応する

ひとつ目は「重要なリスクに最少の工数で対応する」ことです。

内部統制は様々なリスクに対して、すべての従業員が業務を適正に行うためのルールや仕組みを設定できる一方で、工数が多くなってしまいがち。

重要なリスクは何かを考え、最も有効なルールや仕組みを最少の工数で対応することが重要です。

【ポイント2】運用をデジタル化する

内部統制を運用する際、申請は「紙媒体」で承認は「ハンコ」という企業があります。

承認を得るために業務過程が増えるのは、適切な内部統制とはいえません。

そのため、内部統制の運用をデジタル化することが重要です。

まとめ

内部統制は企業を経営する上で重要です。

取り組みには組織内のすべての人が関わりますが、内部統制を実現することで、社内外から信頼を得ることができ、従業員にとっても働きやすくなります。

また、業務の見える化により、経費削減にも繋がりますので、この機会に検討・取り組んではいかがでしょうか。

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