企業のバックオフィスを効率化させる「oneplat」が、スターバックスコーヒージャパンのCEO等を務めた「プロ経営者」、岩田松雄氏をお招きし、特別講演会を開催!企業同士の競争が激しい昨今、企業成長や事業再生には何が求められるのでしょうか?そこで今回は、コロナ禍における「ミッション」経営の重要性、そのミッション経営に欠かせないヒューマンタッチを増やすための取り組み、経営者の心構え等をスターバックス時代に実践されていた実例をもとに岩田様にお話いただきました。講演後にはご参加者から質問が飛び交い、皆様それぞれの気付きを持ち帰っていただいたことでしょう。本記事では、セミナーの内容をダイジェストにして公開いたします。よりよい組織づくりを志す経営者の方々、必見です!
①VUCAの時代に必要なことは「学び続ける力」
最初に岩田氏から語られたのは、今の時代に必要な習慣でした。
現在はとひとことで言うと、「VUCAの時代」(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)と言えるでしょう。
この時代においては、常に高い視座を持ち、イノベーションを起こすためにも自分の視野を広げること、ものの見方を研ぎ澄ますことが大切であると言います。
さらに、世の中には変わるものと変わらないものがあるなかで、常に普遍的な哲学などを身につけながら、進展の早い科学技術に対しても常に学び続ける習慣をつけることが大切だと伝えられました。
そしてコロナ禍では、「リモートワーク」などにより人と人との結びつきが希薄になり遠心力が働き、企業への帰属意識が薄れています。企業が求心力を取り戻すために、企業は何のために存在しているのか?自分はなぜこの会社に勤めているのか?というそれぞれの「ミッション」に立ち戻ることが、今まで以上に重要になってきています。
岩田氏は「ミッション」を「企業の存在理由」と定義しています。また個人のミッションについては、「自分がこの世に生かされている理由」と定義しています。
ここでは、岩田氏は日産自動車入社当時同社に経営理念がなかったことや、同じような商品を売っているA社とB社でも従業員の働く姿に差があることが、経営理念やミッションの重要さに気付いたきっかけであったということも語られました。
②企業は、事業を通して世の中を良くするためにある
ビジネススクールでは、企業の目的は「利益の最大化」であると教えられますが、岩田氏は「企業の目的は事業を通して世の中を良くするためにある!」と語りました。利益はあくまで、企業を存続させミッションを達成するための手段なのです。
ではなぜミッションが大切なのでしょうか?
①会社の原理原則としてのミッション
常に変化する社会のなかで原理原則に立ち返ることができる
②共通のゴールとしてのミッション
様々な価値観を持った人たちを同じ方向に向かわせる、明確な共通のゴール
③ミッションに共鳴した人が集まる
旗を掲げ、共鳴する人たちを惹きつける
④ミッションがモラルを上げる
通常崇高であるミッションを実現できていると感じるとモラルが高くなる
このように、企業にとってミッションが大切であり、その結果人を惹きつけ、同じ方向に向かわせることができるのです。
③人々を惹きつけ、感動させるスターバックスのミッション
ここでは、当時スターバックスジャパンの社長であった岩田氏に宛てられた手紙が読み上げられました。
毎日家の近所にあるスターバックスに通っていた心臓の弱い女子高校生のお父様からの手紙でした。このご息女は心臓の移植の手術でアメリカに発つ朝、空港ではなくいつものスターバックスの焼きたてのシナモンロールを食べたいとわがままを言いましたが、その時間店舗は開店前。困ったお父様が無理を承知で店舗にお願いしたところ、ご息女が憧れるスタッフが快諾、店舗開店前にも関わらず早朝に駅までシナモンロールを届けにきてくれたそうなのです。手紙は、このことに対する感謝の手紙でした。
大変素晴らしいお話に感動しつつも、店舗開店前に駅までシナモンロールを届けに行ったこのスタッフの行動は会社のルール違反とも言えるものでした。場合によっては社長の立場からは罰しなければいけないかもしれません。しかし、当時社長であった岩田氏はこの行動を社員の前で「これぞスターバックスだ!」と称賛したのです。
スターバックスにはオペレーションマニュアルはありますが、サービスマニュアルはありません。あるのは「Just Say Yes!(道徳、法律、倫理に反しない限り、お客様が喜んでくださることは、何でもして差し上げること)」という標語のみ。
つまり、そのパートナーはスターバックスのミッション(人々の心を豊かで活力あるものにする)に従って行動したのです。
まさに「これぞスターバックス」であり、これを体現するのはお客様の一番近くにいる各店舗のパートナー。そしてそのパートナーの行動こそがスターバックスのブランドになっていくのです。
④リーダーに求められるものとは
まとめとして、リーダーに求められる項目を8つ挙げていただきました。
・高い志をもつ
・徳を高める努力をする
・無心の心を保ち続ける
・素直さを持つ
・範を示す
・怨みに任ずる覚悟を持つ
・後継者を育てる
・意中に人あり
この8項目に、スパイダーマンの言葉「大いなるパワーには、大いなる責任が伴う」が添えられました。リーダーには大きな権力を与えられます。それとともにリーダーには大きな責任が伴う。そのことを忘れてはならないのです。
⑤組織に求められるものとは
最後に「本質において一致 行動において自由 全てにおいて信頼」という言葉を述べられました。これは、“本質つまり「ミッション」は皆が共有し、全ての行動は信頼の上に成り立つ”という意味を持ちます。先ほどの手紙に登場したスターバックスのパートナーも、会社のルールを外れても会社のミッションのために行うべきだという、会社との信頼関係があってこその行動でした。もちろん会社からも、これを許したからといって全店舗全社員が開店前にシナモンロールを勝手に配るようなことはしないだろうという信頼があっての、社長からの称賛であったわけです。
そしてミッションを浸透させこういった信頼関係を構築するには、やはりヒューマンタッチを増やすことが大切です。例えば自社の中にある無駄な作業、標準化できる作業はITに置き換えることでお客様や従業員との時間が生まれ、ヒューマンタッチを増やすことができます。もちろんそれだけでなく、他にも取り組むべきことは多くあります。こうして経営者自身が「学び続ける力」を持ち続けることが、より良い組織運営へと繋がっていくことでしょう。
■ 岩田 松雄(いわた・まつお)
1958年生まれ。日産自動車で、生産、品質、購買、財務、販売等様々な分野での現場経験をする。外資系コンサルのジェミニでは、主にクライアントのトランスフォーメーション(リエンジニアリング)を指導する。
日本コカ・コーラでは、購買を通じ、コスト削減に大きな実績をあげる。 経営者として、3期連続赤字のアトラス のリストラクチャリング実行と成長戦略の策定により黒字化、タカラでの子会社再編し、イオンフォレスト(THE BODY SHOP JAPAN)では、ブランドを再生し、売上・利益を倍増させた。スターバックスでは、新商品のローンチ、ニューマーケット開拓、新チャネル開拓を成功させ、再成長軌道に乗せる。経営において「人がすべて」の信念の下、人を大切にする経営を掲げ、 従業員のモチベーションアップを再成長の原動力にしてきた。UCLAビジネススクールより「100 Inspirational Alumni」に選出される。主な著書「ミッション」(アスコム)・「ついていきたい」と思われるリーダーになる51の考え方(サンマーク)・「新しい経営の教科書」(コスミック出版)その他多数