平成30年に政府が掲げた「働き方改革」は、企業にとって勤務形態や業務内容の見直しをするターニングポイントになりました。しかし、中小企業や個人で経営する方にとってはまだまだ縁遠いものになっています。
本記事では、働き方改革を実現するのに際して必要な目的の確認や、具体的な改善方法を紹介します。目的やゴールを知って、適切な働き方改革を実践しましょう。
働き方改革とは?
最初に働き方改革の概要を確認しておきましょう。働き方改革を端的に言い表すと「働く人の様々な事情やニーズに対応できるよう、柔軟な働き方を目指す取り組み」です。
しかし、ただ「働き方改革だ」と言っても、企業が独自で進めていくことは困難を極めます。そのため、政府が労働に関する法の整備を積極的に進めることで企業にも浸透させようという働きです。これらの法整備から、アクションまでを含めて一般的には「働き方改革」と呼ばれています。
なぜ働き方改革の考えが始まったのか
しかし、なぜ急に働き方改革が叫ばれるようになったのでしょうか。そこには大きくわけて2つの要因があります。
ひとつは「生産年齢人口の減少」が挙げられます。生産年齢人口は15歳以上65歳未満の「生産活動(働く)をメインに行う人々」を指します。生産年齢人口は、近年の少子高齢化からわかるように年々減少傾向にあります。
そのため、働く人がだんだん減っている状況が続くため、少ない人員でうまく業務や経済を回していく必要が生じました。
2つ目の要因は「介護や育児による働き方の多様性」です。かつては夫が稼ぎ、妻は家庭に入り、子どもは祖父母や地域ぐるみで育てていく風潮がありました。
しかし、近年は女性の社会進出が目覚ましい上に核家族化が進んだことから、従来の働き方が困難になっています。また、高齢化により親の介護に時間を割くケースが増加しているため「仕事と介護」「仕事と育児」さらに深刻なケースでは「仕事と育児と介護」という問題が起こっています。
これらの背景に注目が集まった結果、政府主体で働き方改革が進められることになりました。
働き方改革のゴールとは何か
社会的な課題を解決するために始まった働き方改革ですが、何を持ってゴールとするのかを知らない方も多いです。実際に、働き方改革は始まったばかりでこれからも法改正が進むでしょう。
しかし、厚生労働省が発表している働き方改革の実現は「働く方の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現すること」「一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすること」となっています。
介護をする人、育児をする人等、様々な環境に身をおきながらも「自由な働き方ができる状態」を目指すことがゴールと言えるでしょう。
働き方改革を実施する3つのメリット
ここでは企業が働き方改革を実施するメリットを見ていきましょう。メリットは「生産性向上」「社員の満足度上昇」「優秀な人材の確保」があります。
生産性の向上
働き方改革では、不必要な残業や長時間労働に関しても触れています。そのため、企業は労働時間の見直しを余儀なくされます。
しかし、労働時間を見直して改善できれば、従業員も「この時間内で終わらせよう」と意識が高まります。その結果、だらだら仕事をするのではなく時間内に仕事を終わらせる意識を持たせて不要な残業を削減できます。
すると、これまで残業代として支払っていた人件費の削減に成功し、生産性の向上に繋がります。
社員の満足度の向上
残業の削減や労働時間の見直しは、社員にとってもメリットをもたらします。これまでは朝早く出社して終電まで働いていた社員も、定時や短時間の残業で済むようになればプライベートの時間を確保できるようになります。その結果「会社が動いてくれたから自分もこの会社で頑張ろう」と、所属企業に対して満足感をおぼえます。
優秀な人材の確保に繋がる
福利厚生の充実や労働時間が適切な企業は「働きやすい企業」として人が集まります。さらに、働きやすい企業には向上心が高く優秀な人材が集まるため、企業の成長を加速します。
最初は企業にとって不利と感じる働き方改革ですが、長期的に見ると企業の成長に欠かせない要素であると気付きます。
働き方改革の具体的なアイデア
「働き方改革とは言うが、実際に企業では何をすべきなのか」と悩む方も多いでしょう。ここでは、働き方改革に繋がる具体的な10の方法を紹介します。
個人で意識してできることから企業規模でチャレンジするものまであるため、できるものから着手していきましょう。
➀研修制度を充実させる
働き方改革には生産性の向上が必要です。生産性を上げるためには作業の属人化を防止し「誰もができる仕事」を増やすことが求められます。
そのため、新卒者はもちろん中途採用の方や既存従業員に対して研修の機会を充実させることが、業務の非属人化に繋がります。また、研修で多くの従業員とコミュニケーションを取れるため、社内の風通しが良くなるメリットもあります。
②会議を減らす
社内会議が多い企業は会議の頻度を減らしたり、所要時間を減らす試みを行いましょう。会議は長時間行ったからといって成果が伸びるものではありません。
参加人数の見直しや、事前準備の徹底、上限時間の設定をして効率的な会議づくりに努めましょう。
③給与制度の見直し
働き方改革には「不合理な待遇の差を無くす」という課題があります。正社員と非正規雇用の待遇格差をはじめとした、働き方に見合っていない給与制度を見直そうという動きがあります。
企業としては「自社の給与が業務量に見合っているか」「非正規雇用者がいる場合は適切な処遇になっているか」を今一度確認しておきましょう。適切な待遇は従業員満足度を高める効果が期待できます。
④人事制度の導入
昇給や昇格には人事考課が欠かせません。しかし、判断基準があいまいだと適切な人事配置が不可能です。そのため、人事評価制度を導入し「評価の可視化」を行いましょう。
適切な人事配置は生産性向上や従業員の質の上昇に必要不可欠です。
⑤リモートワークの実現
介護や育児等を理由として「決まった時間に働けない」という方が増えています。そのため、リモートワークを積極的に導入して、自宅でも働ける環境づくりに努めましょう。
リモートワークを導入すると、「企業としては重要な人物だけど、家庭の事情で退職せざるを得ない状況の従業員」を離職させずにすむ可能性が高まります。
⑥フレックスタイム制度の導入
始業・終業時刻を自由に設定できるフレックスタイム制度は、多様な働き方に適した制度です。従業員それぞれのワークライフバランスに対応した働き方の提案は、従業員の満足度を高める効果があります。
⑦有給休暇の導入
義務化された有給休暇制度ですが、人員不足の企業や古い体制の企業では最低限度の取得に留まっています。しかし、積極的に有給休暇を取得できる環境を整えると、授業員のモチベーション向上や、生産性向上に繋がります。
⑧休暇制度の見直し
企業ごとに様々な休暇制度を設けていますが、今一度休暇制度について見直しを進めましょう。法律で義務付けられた休暇だけでなく、誕生日休暇や子どものイベント休暇等、企業ならではの休暇制度を策定すると、企業ブランドの向上にも効果的です。
⑨ CWO(チーフ・ワークスタイル・オフィサー)の設置
大手企業を中心にCWOという役職の設置が広がり始めています。CWOは働き方改革に置いて「経営戦略の観点から見た働き方改革」「従業員目線で満足度を上げる働き方改革」という双方向からの視点で企業改善を目指す役割を果たします。
⑩健康経営の導入
長時間労働は従業員の心身を蝕む要因になります。そのため、従業員の健康を意識した制度を策定することも大切です。
具体的には、ストレスチェックや産業医による問診やカウンセリングの体制強化等が挙げられます。近年では「ジムを併設」という企業もあるほど、従業員の心身状態を整えることは企業として求められています。
まとめ:企業に合った「働き方改革」を実現しよう
今回は働き方改革について、その概要と企業が取り組む具体策を紹介しました。
人が少ない企業の場合、上記で紹介した方法をすべて採用するのは困難です。しかし、できることから少しずつ進めることで、だんだん従業員が働きやすい職場になっていきます。
本記事を参考に、働き方改革の第一歩を踏み出しましょう。