会計参与とは?監査役との違いや必要な資格・報酬や任期も解説

「会計参与」という言葉をご存知でしょうか? 聞いたことはあっても、何をするのかまでは知らないという方々も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、会計参与の仕事内容や必要な資格、報酬や任期等について解説します。最後まで読んでいただければ、会計参与について一通り理解できると思いますので、是非参考にしてください。

目次

会計参与とは?設置義務についても解説

会計参与とは会計書類の作成を行う役員のこと

「参与」とは事業における事務・職務の相談に加わることを意味するので、会計参与とは、会計に関わる株式会社の役員を指します。

つまり、決算書や事業報告書等の会計書類を取締役等と共同で作成するのです。その他にも、会計書類を別の場所に備え置き、株主や債権者からの開示の求めに対応したり、株主総会において説明したりする役割があります。

会計参与は、2006年5月の会社法の施行の際に新しく設けられました。

会計参与設置会社=会計参与がいる会社

会計参与設置会社とは、単純に会計参与がいる会社のことを指します。

会社法における会社の種類は株式会社・合資会社・合同会社・合名会社の4種類に分類されます。

ただし、株式会社は会計参与を置くことができますが、持分会社である合資会社・合同会社・合名会社、および特例有限会社は設置できません。

特例有限会社とは、会社法の施行により廃止された有限会社を、特例として株式会社とみなして取り扱うことです。

会計参与は基本的には設置義務はない

会計参与を置くことは任意となっており、会社の規模等に関係なく基本的に設置義務はありません。

しかし、非公開会社(株式譲渡制限会社)において、取締役会を設置しているにも関わらず監査役がいない場合は、会計参与を設置する必要があります。

本来であれば、このような条件下では監査役を置かなければならないのですが、会計参与を監査役の代わりにすることができるのです。

監査役については、次の章で詳しく解説します。

会計参与の資格は?監査役や会計監査人との違いも

会計参与の資格・欠格事由

会計参与になるのに必要な資格

会計参与になるためには、税理士またはその法人形態である税理士法人、公認会計士またはその法人形態である監査法人の4つの中のどれかである必要があります。つまり、国家資格を有する会計のスペシャリストです。

会社と顧問契約を結んでいる税理士がいる場合は、会計参与を依頼することができます。ただし、支払う報酬が高額になったり、会計参与という職務に慣れていなかったりすることも考えられますので注意が必要です。

欠格事由に当てはまる場合は専任されない

次に欠格事由に当てはまる場合は会計参与になれません。

  • 株式会社とその子会社における取締役や執行役等の役員、その他の使用人等、地位の独立性が認められない者
  • 業務停止処分を受け、その期間が経過していない者
  • 税理士業務を行うことができない者(税理士法第43条)

監査役は基本的に誰でもなることができる

監査役になるためには、特に資格等は必要ではなく基本的に誰でもなることができます。しかし、その会社と子会社の取締役等や使用人、または子会社の会計参与と兼任することはできません。

監査役は、株式会社の経営において取締役等の業務や会計が正しく行われているかを監査する役割を担っているからです。

資本金5億円以上または負債額が200億円以上の「大会社」や「公開会社」は、監査役の設置義務があります。また、非公開会社においても取締役会を設置している場合は、監査役が必要です。

会計監査人になれるのは公認会計士・監査法人のみ

会計監査人になれるのは、公認会計士とその集団である監査法人のみです。

会計参与は取締役と一緒に会計書類を作成することから内部的な立場にありますが、それに比べて会計監査人は、外部から会計監査を行う第三者的な立場にあると言えます。

前述した「大会社」に該当する会社や、委員会設置会社において会計監査人の設置が必要です。また、それ以外の会社も、定款を定めることで任意で会計監査人を設置できます。

ただし、多額の費用がかかることから、中小企業等の規模の小さい会社が設置することは難しいでしょう。

会計参与はどのように選任される?任期は?

会計参与は株主総会で選任される

会計参与は、株主総会の決議によって選任されます。反対に、解任することも株主総会の決議によっていつでもできるのです。

選任や解任の決議は、議決権を行使できる株主(定足数)が出席し、出席した株主の議決権の過半数の賛成によって行われます。

また、既にある会社が新たに会計参与を設置する場合は、株主総会で定款変更の特別決議を行わなければなりません。

会計参与の任期は取締役の任期と同様

会計参与の任期は取締役と同様になっており、原則として選任されてから2年(委員会設置会社の場合は1年)以内に終了する事業年度における最後の定時株主総会までです。任期は、定款または株主総会の決議によって短くしたり長くしたりすることができます。

また、非公開会社においては、定款によって任期を伸長することが認められており、選任されてから10年以内に終了する事業年度における最後の定時株主総会まで伸ばすことが可能です。

会計参与の報酬は選任のタイミングで決定する

会計参与の報酬は、選任のタイミングで決定します。

報酬の金額については、目安を立てることは難しいと言えます。なぜなら、企業の規模や請け負う業務内容が大きく異なることが考えられるからです。

また、依頼を受ける側における信頼度や実績によっても報酬金額は変わってくるでしょう。そのため、総合的に判断して報酬を決める必要があります。

顧問税理士に依頼する場合は、新たな業務が発生するので通常の業務分とは別に報酬を請求される場合が多いでしょう。その報酬が高額になりすぎると経営を圧迫しかねないので注意が必要です。

会計参与の仕事内容は主に6つ

1.取締役・執行役とともに計算関係書類を作成する

取締役・執行役と協力して貸借対照表や損益計算書、株主資本等変動計算書等の計算関係書類を作成します。

会計参与と取締役等が共同作成することによって両者の意見が一致していると判断できるので、計算書類として有効になり、株主総会に提出することができるのです。計算書類の信頼性を担保するためにも大切なプロセスと言えるでしょう。

2.会計参与報告書を作成する

会計参与報告書とは、株主・債権者への情報提供を目的として、会計参与が作成しなければならない報告書を指します。

主な報告内容として、会計参与になる際にその会社と合意した事項や、共同作成した計算書類の種類や作成の過程および方法、会計方針に関する事項等があります。

3.計算関係書類・会計参与報告書を備え置く

計算関係書類および会計参与報告書は、就任している会社ではなく、会計参与が定めた場所(自身の事務所等)に据え置かなければなりません。

その期間は、定時株主総会の1週間(取締役会を設置している場合は2週間)前からの5年間となります。また、臨時計算書類がある場合の期間は、作成した日から5年間です。辞任等によって会計参与の任を解かれると、備え置く必要はなくなります。

4.取締役会や株主総会へ出席・必要に応じて発言する

計算書類を承認する取締役会へ出席して、必要に応じて発言しなければなりません。また、株主総会にも出席して、株主から説明を求められた際に発言する必要があります。

5.株主や債権者からの開示請求に対応する

株主や債権者から、計算書類・会計参与報告書の閲覧の請求や、謄本等の交付の請求があった場合は、これらに対応する必要があります。その際は、請求者が株主や債権者であるかどうかの確認手続きを行った上で開示請求に応じることが大切です。

また、開示請求には対応しなければなりませんが、それによる請求者からの質問(口頭や文書等)に答える必要はありません。

開示請求に対応する義務はありますが、その中に説明義務は含まれていないのです。なお、会社からの依頼により、請求者に説明することは問題ありません。

6.取締役の不正行為を監査役や監査役会等に報告する

会計参与の職務中に、取締役の不正行為や法令または定款に違反する重大な事実を見つけた場合は、速やかに監査役や監査役会に報告しなければなりません。監査役がいない会社は、株主に報告します。

会計参与設置のメリットは?

計算関係書類の正確性・信頼性がアップする

会計参与が計算書類の作成に関わることで、決算書の正確性・信頼性がアップします。

会計に詳しくない人が書類を作成するとミスが発生する可能性が高くなるので、どうしても正確性や信頼性は低くなってしまうからです。

会計参与を置くことで、正確性・信頼性がアップすれば、金融機関からの融資を受けやすくなったり、信用保証料の引き下げに繋がったりする可能性があります。

信用保証料とは、融資の際に信用保証協会に支払う保証料のことで、その会社の経営状況に応じて保証料率が決定するのです。

取締役の業務を一部軽減できる

会計参与と協力して計算書類を作成することによって、取締役の業務を一部軽減できます。その結果、経営に集中することが可能になり、会社全体の業績アップも見込めるでしょう。

また、例えば海外取引が多い会社等においては関税に関する知識が必要です。このような状況を踏まえて、高い専門性を持つ会計参与を置くことができれば、業務の負担を軽減できるでしょう。

会計参与の設置にはデメリットもある

会計参与の設置には、コストがかかるというデメリットがあります。一般的に、税務顧問料よりも高額な報酬を支払う必要があるからです。顧問税理士が兼任する場合も、別途請求される可能性が高いので、報酬が高額になることを避けられません。

そのため、メリットとして述べたように信用保証料の支払いが減ったとしても、コストはこれまでよりも増えてしまう結果になりかねないのです。

コストが増大することによって経営が悪化するケースもあるので、メリットとデメリットを把握して慎重に判断しましょう。

会計参与の設置手順をわかりやすく解説

会計参与の設置は、次の手順で行います。

  1. 株主総会において、定款に会計参与設置を定める旨の特別決議を行う
  2. 株主総会において、会計参与を選任する
  3. 就任承諾書を受け取る(株主総会議事録に就任承諾の記述がある場合は省略してよい)
  4. 就任する税理士または公認会計士の資格証明書、税理士法人または監査法人の場合は登記事項証明書を取得する
  5. 計算書類等を備え置く場所を確認する
  6. 会計参与を設置する旨、会計参与の氏名または名称、書類の備置場所を登記する

会計参与の基本知識まとめ

今回の記事では、会計参与とはどのようなものなのかについて見てきました。

会計参与は国家資格を有する会計のスペシャリストなので、正確性・信頼性の高い計算書類を作成できます。さらに、会社の登記簿に記載されるので、対外的にも信頼性がアップすることになるでしょう。しかし、コストがかかりすぎることが設置するにあたっての難点と言えます。

会計参与を設置するかどうかは、メリットとデメリットを把握して、企業経営により良い結果をもたらす選択をする必要があるのではないでしょうか。

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oneplus編集部

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