会計処理の大前提・会計公準と企業会計原則をわかりやすく解説

会計公準と企業会計原則についてご存じでしょうか。どちらも企業活動を営む上で避けては通れない法律のようなものであり、会計上で最も重要と言える決まりごとです。

これらが重要なことは知っているけれども、多くの項目に分類されていて、すべてを理解できていないという方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、以下の内容についてまとめました。是非参考にしてください。

  • 会計公準の分類と解説
  • 企業会計原則の分類と解説
目次

「会計公準」とは何か? 意味や位置づけをわかりやすく説明

会計公準とは、企業会計の大元となる考え方を指す言葉

会計公準とは、企業の会計が実施される上で基本的な考え方、従わなければならない重要な概念を指します。仮に会計の仕方に決まりがなかった場合は、それぞれの企業が数字をいじり回し、実態とかけ離れた好業績に仕立て上げることができるようになります。

この状態では株主をはじめとしたステークホルダーの利益にならないばかりか、企業の運営が順調なのか、企業内部の人間ですら確認することができません。

誰もが納得できる会計上の決まりを作り、会計の状態を明確にすることを目指したもの、それが会計公準なのです。

会計公準は土台|その上に企業会計原則が成り立っている

企業会計原則とは、企業の会計の世界で妥当性が認められ、慣例として行われている、財務諸表で守るべき原則のことです。財務状態について、虚偽の報告をしない、帳簿は正確に記載する等、会計上の法律のように位置づけられています。

建物で例えると、会計公準は基礎にあたる部分、企業会計原則は基礎の上に立つ家屋部分のような位置づけと考えられます。

具体化した決まりごとである企業会計原則に則り会計を行うことで、財務諸表は誰が見ても妥当性のあるものとなり、ステークホルダーの利益も守られるのです。

複雑な会計公準の分類を整理しよう

では会計公準の中身を確認していきましょう。

大きく分けて、会計を行うための構造的な仕組みを示した構造的公準と、企業会計を実施する目的をあらわした要請的公準があります。構造的公準は、会計を行うために必要となる枠組みを示しています。

一方、要請的公準は、企業会計がステークホルダーの利益にならなければならないという意味合いのものです。

企業会計上、特に重要視されているのが構造的公準であるため、次で詳細を確認していきましょう。

会計公準の「3つの公準」|考え方と具体例を解説

構造的公準は3つに分類されます。企業会計を実施する上で大前提となるものであり、これを逸脱する基準が作られたり、実務が実施されることはありません。

3つの公準の説明に加え、具体例を挙げて解説していますので参考にしてください。

1.「企業実体の公準」の示す考え方と具体例 

1-1.考え方|企業の財産と、企業の株主や所有者の財産は分ける

企業実体の公準とは、企業と株主等出資者の所有物を区分するというものです。株主は会社の所有者ですが、会社の資金の所有者ではなく、区別され独立したものになります。

また、株主の財産も会社の資本に加算しないことで、企業の正しい売上や利益を正確に財務諸表に記載できるようになるのです。

個人事業主のように、会社の所有者と会社の資金を運用する者が実体として分かれていない場合にも、企業実体の公準を念頭に財務諸表を作る必要があります。

1-2.具体例

企業実体の公準を例を挙げて説明します。

経営者がひとりでスーパーマーケットを経営していたとします。
今月の生活費が苦しく、経営者は後で返すつもりで1万円をレジから抜いてしまいました。
会計上では、その日の売上が1万円減っていることになり、計算が合わなくなります。

企業実体の公準では、個人事業主であっても会社のお金と個人のお金は区別して考えるため、経営者の行動は正しいものではないのです。

2.「継続企業の公準」の示す考え方と具体例

2-1.考え方|企業は未来永劫事業活動を行う

継続企業の公準とは、企業は基本的に事業をやめずに継続するというものです。

企業が永遠に存続し続けるということは同時に、半永久的に利益や損失が確定しないことを示しています。

損益を確定できず、財務状況を把握できなければ、企業の向かう方向を決めることができず、株主も投資する判断ができません。

そのような不都合を解決するため、企業はある程度の期間で企業活動に区切りをつけ、区切りの間の経営状況を報告することを求められています。

2-2.具体例

継続企業の公準の例を挙げて説明します。

工場で機械を購入して製造する場合は、継続企業の公準を基に未来永劫事業活動が続くと仮定すると、購入した設備が使用不可能になるまで最終的な結果がわからないということになります。

仮に設備の耐用年数が50年だとしたら、50年間待つ必要があり、大変不便です。そのため、一定期間ごとに区切りを設けて経営の結果を計算します。

当該設備は、使い続けるごとに価値が減っていることを表すために、一定期間ごとに減価償却費を計上する必要があります。

3.「貨幣的評価の公準」の考え方と具体例

3-1.考え方|企業の事業活動の測定はその単位に貨幣を用いて行う

貨幣的評価の公準とは、会計における資産や負債のアップダウンを貨幣額で表す必要があるというものです。

量的表現ができないと、相対的な比較が困難となり、経営指標の判断ができない弊害が生まれます。

そこで、会計の単位を貨幣に統一することで、財務状態を相対的に分析できるようにすることが可能となります。

貸借対照表や損益計算書は貨幣の額が基準となり、企業ごとに扱う製品が異なっていた場合でも比較分析を行うことができるのです。

3-2.具体例

貨幣的測定の公準の例を挙げて説明します。

車を製造販売する企業と、ねじを製造販売する企業があり、車の在庫が1台、ねじの在庫が500個であった場合を考えてみましょう。

製品の数を共通単位として扱った場合は、在庫の数がより少ないため車を製造販売する企業が財務上優秀となってしまいます。

このように、企業ごとに扱う製品は異なるため、企業ごとに財務的に比較することは困難です。そこで、貨幣を企業共通の単位とすることで財務諸表の把握ができるようになるのです。

企業会計原則の分類を整理しよう

企業会計原則は、企業にとって遵守すべき非常に重要な決まりごとです。一般的ルールを示す一般原則、損益計算書を作る時に守るべきルールを網羅した損益計算諸原則、貸借対照表を作る時に守るべきルールを記載した貸借対照表原則の3つに区分されます。

一般原則の中には原則が7つ存在し、財務諸表を作る基本的な要件が記載されており大変重要です。次で詳しく確認していきましょう。

一般原則を構成する「7つの原則」を解説

1. 真実性の原則|企業が行う報告は真実の内容であること

企業は、財務状況や経営成績について、誤りのない正しい情報を提供する必要があるというのが真実性の原則です。

企業は、どうにか売上や利益を多く見せ、財政の健全性をアピールしたいところですが、そのことが粉飾決算になってしまう場合があります。

ステークホルダーの判断基準となる財務諸表の記載内容が真実ではなかった場合は、多大な不利益を被ってしまうため、虚偽の報告は許されません。

真実性の原則は、企業会計原則の中で最も重要な項目であり、会社に必ず遵守することが求められる一丁目一番地とも言えるものなのです。

2. 正規の簿記の原則|会計帳簿は正しい簿記により作成する

正規の簿記の原則に則り、企業は行った取引すべてを記載する正確な会計帳簿を作ることが必要です。

正確な会計帳簿とみなされるためには、多くの要件をクリアすることが求められます。その要件とは、取引すべてを網羅できること、取引の記録を検証できること、継続的に体系化されていること、作成済みの簿記により財務諸表を作ることが可能であることです。

ある程度の企業規模になると複式簿記が原則となり、会計帳簿の作成が必要となります。正規の簿記の原則を満たすことで、正確かつ抜け漏れのない財務諸表を作ることができ、真実性の原則に必要不可欠な要件となっています。

3. 資本取引・損益取引区分の原則|特に資本剰余金と利益剰余金を明確に区分する

資本取引と損益取引をはっきりと分ける必要があるというのが資本取引・損益取引区分の原則です。資本の払い込み等で資本を増加させる取引である資本取引と、利益の発生する取引である損益取引を区分するというものです。

利益も最終的には資本の増加に繋がりますが、資本取引には含みません。原資となる額からどれほどの儲けに繋がったのかが、財務諸表上重要となります。

また、資本剰余金は会社の運転資金にあたるため配当に回すことができないのに対し、損益取引で得た収益である利益剰余金は配当とすることができます。両者を混同することは、配当逃れ等株主の不利益に繋がるため適切に区分しましょう。

4. 明瞭性の原則|財務諸表を誤解のないよう明瞭に記す

財務情報の情報が不明確であったために、認識違いで不利益を被らないように明瞭に記載するというものです。重要なことは、情報の漏れがないように詳細な表記と、簡潔に見やすい表記を行うことです。

貸借対照表や損益計算書は簡潔に記載しましょう。情報に漏れがないように、追加で注記表や附属明細書に詳細記載、内訳記載を丁寧に実施することで、詳しく読みやすく正しい情報を伝えることができるようになります。

5. 継続性の原則|会計処理の仕方を安易に変更しない

正当な理由がない限り、会計処理を変えることはできないというのが継続性の原則です。会計期間ごとの比較を明確化するためということが理由として挙げられます。

また、企業にとって都合の良い会計処理を使用し、財務諸表の結果をよく見せることを防止することも理由とされています。例えば、減価償却費における会計処理を、1期目は定率法で行った場合は、2期目も定率法で行う必要があります。

途中で定額法に変更してしまうと、定率法であった会計期間との比較が困難です。会計期間ごとに企業に有利な会計処理を選択し、結果を誤認させる変更は認められません。

6. 保守主義の原則|財政悪化に備えて、収益を遅く・費用は早めに処理する

将来の財務状況の悪化対策として、収益は遅く、費用は早めに処理することを要求するのが保守主義の原則です。保守主義の原則の概念は、企業を守るために作られたとされています。

企業は減価償却や貸倒引当金等を計上し、将来かかるであろう費用をあらかじめ設定しておきます。それらを少なく見積もることで収益は増えますが、企業にとって収益が増えると、株主への配当や多くの法人税を支払う必要があり、多くの資金が流出してしまいます。

その後に経営が悪化したときのリスクをあらかじめ想定しておき、多額の費用を原因とする倒産を避けるための原則なのです。

7. 単一性の原則|財務諸表はひとつの帳簿のみから作成する

単一性の原則とは、財務状況をよく見せるために提出先ごとに異なる会計帳簿を作成しないというものです。

株主総会、銀行への融資依頼、税務申告等、提出先によって複数の財務諸表を作成することは問題ありません。

しかし、単一の会計帳簿から作成することが求められており、二重帳簿の作成は認められておらず、許されません。

二重帳簿が存在することで、正確な財務諸表であることが保証できなくなり、ステークホルダーが不利益を被ることになるためです。

しかし、財務諸表で重視する項目は提出先ごとに異なっており、内容の変更ではなく、形式を変更することはやむを得なことです。内容の変更にならないよう注意しましょう。

【まとめ】 会計公準の基本知識を押さえよう 

会計公準と企業会計原則について押さえられたでしょうか。会計公準と企業会計原則は、企業会計上の基礎と家屋の位置づけとなっており、遵守しなければならない大切な概念です。

財務諸表が嘘偽りのないことを担保する基準として機能しているからこそ、ステークホルダーの利益に繋がるのです。非常に重要なものであることを覚えておきましょう。

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