日本の会計ルールは、様々な法律と密接に関わりあって定められています。本記事では、会計と関係する法律の種類や内容について詳しく解説していきます。また、それらに関連する資格についても見ていきましょう。
会計と法律の関係性
日本の会計のルールは「公正なる会計慣行」を基準として定められています。これは、1949年に大蔵省企業会計審議会が定めた「企業会計原則」にはじまり、以後、同審議会が定めた会計基準と、2001年に企業会計基準委員会が定めた会計基準を合わせたものです。
これら会計のルールは会社法、金融商品取引法、法人税法等、様々な法律に対して適切な対応ができるように作成されています。また、独立行政法人、学校法人、政治政党等も各法律に対して適切な対応が行われるよう独自の規定で会計ルールを定めています。
日本の会計に関する3つの重要な法律
日本の会計には主に会社法、金融商品取引法、法人税法の3つの法律が密接に関係しています。ここでは各法律の目的や内容について簡単に解説しています。
金融商品取引法
投資家の保護や経済の円滑化を図るための法律です。金融商品を売買する消費者が不利益を被らないようにするためや、透明性のある公正な取引が行われるように、株式や債券等の有価証券の発行や売買についてルールが定められています。
これは、前身である証券取引法がいくつかの法律を廃止・統合して2007年に改名しました。またこの改名により、証券取引所と金融先物取引所は併せて「金融商品取引所」に改名しています。
この法律では主に以下の4つのことが定められています。
・投資性のある金融商品を利用する消費者を保護する仕組みの構築
・開示制度の拡充
・不公正取引等への厳正な対処
・取引所の自主規制機能の強化
この法律により、上場企業は財務諸表を含む有価証券報告書の作成・提出や、会計監査人による会計監査等の会計対応が必要です。
会社法
会社の設立から解散、組織運営や資金調達等、会社に関する様々なルールが定められています。これは、法人から個人事業主までに適用されます。以前まで株式会社の場合は最低1,000万円、有限会社の場合は最低300万円の資本金が必要でしたが、2005年の改正により、1年以上の資本金で会社設立が可能になりました。
また、会社法は以下の8つの編で構成されています。
1.総則:用語の定義や商号のルール等、全体を通しての基本的な事項
2.株式会社:株式会社に関するルール
3.持分会社:持分会社に関するルール
4.社債:会社が発行する債券に関するルール
5.組織変更、合併、会社分割、株式交換・移転・交付:会社結合やM&Aの手続きに関するルール
6.外国会社:日本で事業活動を行う外国会社に関するルール
7.雑則:解散命令や訴訟手続き、非訴訟手続き、登記、公告等に関するルール
8.罰則:違反行為に課される罰則に関するルール
法人税法
法人の所得に課せられる税金についての様々な取り決めを定めた法律です。法人税を納めるにあたって最低限必要な情報を知ることができます。その内容は、納税義務者や課税所得等の範囲、税額の計算方法、申告方法、納付および還付の手続き、納税義務を適切に果たすために必要な事項等です。
主に以下の3つに分類されて定められています。
・各事業年度の所得に対する法人税
・退職年金等積立金に対する法人税
・各連結事業年度の所得に対する法人税
会計・法律の国家資格
会計や法律に関するルールは膨大で、それらに対して適正に対処するには膨大な量の知識が必要です。そこで、分野ごとに専門的な知識を必要とする国家資格を設けています。ここでは、5つの国家資格について紹介していきます。
弁護士(弁護士法)
弁護士法では「様々な憲法や法令を使って基本的人権を擁護し、社会正義の実現を使命としている人」と定められています。活動内容としては、紛争予防のための活動、訴訟活動、立法や制度の運用改善に関する活動、人権擁護活動、企業や公共団体の組織内での活動等があります。
具体的には、法的手続における当事者の代理人や被告人の弁護人として法廷に立つこともあるでしょう。事務所においては、法律に関する事務作業や法律相談に乗ることもあります。会計との関わり方としては、財務会計に関わる各訴訟や不正調査、非公開株式の株価算定等について相談や対応を依頼することが可能です。
公認会計士(公認会計士法)
主に企業の財務諸表が正しく作成されているかチェックする監査業務を行います。この監査業務は公認会計士の独占業務です。これには、銀行等の金融機関や投資家が適切な情報を用いて、出資を判断できるようにする目的があります。
そのほかにも、経営戦略の立案や組織再編等の経営に関わる相談や助言等のコンサルティング業務を行う会計士もいます。また、税理士登録することにより税務業務につくことも可能です。このように、会計に関する幅広い業務を担っています。
行政書士(行政書士法)
主に官公署に提出する書類、権利義務に関する書類、事実証明に関する書類の作成や代理で提出手続きを行う仕事で、これらの書類作成は独占業務です。行政に関する手続きを円滑に実施し、国民の利便を図ることを目的としています。
そのほかにも、各種許認可申請や法人設立、外国人雇用、残留資格申請と帰化申請、会計業務、遺言書の作成と相続相談等に関する業務も担います。行政書士は書類作成が業務の中心のため、他資格者と連携を取って行うことが多くなります。
特に職域の近い、司法書士、税理士、土地家屋調査士、宅地建物取引士、社会保険労務士等とは多くの場面で連携が必要となるでしょう。また会計業務では、税務申告は税理士の独占業務に当たるため連携を取るか、両方の資格を保有している方が業務に当たることもあるようです。
司法書士(司法書士法)
法務局や裁判所、検察庁等の行政機関に提出する書類の作成や、審査請求を行う仕事です。特に登記または供託における手続き代行が多く依頼されています。
登記には大きく分けて不動産と法人の2つがあります。家や土地等の不動産を購入したときは不動産登記によって権利を示す必要があります。また、新しく会社を設立したときは法人としての登記が必要です。
供託とは有価証券や金銭を供託所である法務局に預け、適切に分配するための手続きです。支払うべき金銭を相手に受け取ってもらえない時に行う弁済供託がよく取り扱われています。
このように、依頼者が必要な手続きを円滑に進められるようサポートする役割があります。
社会保険労務士(社会保険労務士法)
主に労働基準監督署や公共職業安定所、年金事務所等に提出する社会保険に関する申請や届出、異議申し立て書類等を作成する仕事です。事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上を目的としています。
それ以外にも、人事労務管理のコンサルティングを行うこともあります。近年働き方の多様化が進む中で、人事労務の問題も複雑になり会社だけでは解決が難しいこともあるでしょう。そのような時に社労士が専門的な立場からアドバイスを行います。こちらは独占業務ではありませんが、近年需要が高くなっている業務です。
まとめ:日本の会計制度は様々な法律によって形成されている
各法律が定める目的を達成するために、会計制度が存在しています。そのため、金融商品取引法や会社法、税法等は法律に準拠した会計を行うために欠かせません。本記事で紹介した、会計と法律の関わりについての理解を深めて、適切な会計処理を行えるようにしましょう。