企業結合会計とは、M&Aや企業組織を再編成する際に必須の会計処理です。しかし、日本と海外では異なる基準が存在したり、企業結合の仕方によって会計処理方法が異なったりと、その内容は複雑です。
本記事では、企業結合の意味から日本会計基準における分類、会計処理方法まで基礎知識を徹底解説していきます。本記事を読んで基本的な考え方を理解しましょう。
企業結合の意味とは?
企業結合とはその名前の通り、企業同士や事業同士を結合することです。これは企業結合会計基準において定義されています。また、企業結合は日本会計基準によるものと、IFRSによるものとで意味が異なっていますので注意しましょう。まずは、それぞれの基準による意味を紹介していきます。
日本会計基準における企業結合
日本会計基準は日本独自のもので企業会計原則をベースに作成されました。日本企業の多くが導入しており、もっともなじみのある会計基準です。しかし、アメリカのように日本会計基準に沿って作成された財務諸表を認めていない国もあり、国際市場での影響力は小さくなっています。
この基準で企業結合は、以下の3つに分類されます。
・共同支配企業の形成
・取得
・共通支配下の取引等
これは経済的効果に焦点を置いた分類で、会計上はこの分類を基本として会計処理を行います。
IFRSにおける企業結合
IFRSとは、国際会計基準審議会によって設定された会計基準です。近年、経済のグローバル化が進む中、国によって会計基準の異なる財務表は、比較可能性を確保できない問題がありました。そこで、国際的な活用を目的とし、国を超えて基準を統一するために設定されたのがIFRSです。
日本でも、海外に多数の子会社がある企業等ではIFRSを導入していますが、まだ広く浸透していないのが現状です。その原因の一つとして、日本の会計基準では純利益を重視するのに対し、IFRSでは純資産を重視するという違いがあります。
企業結合の具体例
以下は、会社法に基づいた法的手法の観点から分類した企業結合の例です。
企業結合例
具体的な内容
新設合併
複数ある既存の会社を解散して新設会社を作り、すべての資産を移す方法
吸収合併
ある会社がもう一方の会社を丸ごと取り込む方法
新設分割
ある会社がもう一方の新設会社に事業等を移転する方法
吸収分割
ある会社がもう一方の既存会社に事業等を移転する方法
株式交換
ある会社が発行済株式のすべてをもう一方の会社に取得させ、完全親子会社関係が生じる方法
株式移転
ある会社が発行済株式のすべてを新設会社に取得させ、完全親子会社関係が生じる方法
事業譲渡
ある会社が事業のすべてまたは一部を、もう一方の会社に売却する方法
企業結合会計とは?
企業結合会計とは、その名前の通り企業結合の際に必要な会計です。企業結合の仕方や結合時の立場によって処理方法が変わるため、その内容は少々複雑に感じられます。ここでは日本会計基準に基づいて解説していきます。
①取得
取得とは、ある企業がもう一方の支配を獲得することです。支配を獲得した企業は、もう一方の財務および、経営方針の決定権を左右する能力をもらうことになります。
また、取得の目的として多いのがM&Aによる事業の買収です。事業買収することで、事業をはじめから作る手間や時間を削減することができるため、大企業のみならず中小企業や個人でも実施されています。
逆取得
逆取得とは、存続会社が消滅会社の株主に対して株式を引き渡すことで、実質的に消滅会社の株主が支配を獲得することです。つまり、株式を引き渡した企業と企業結合会計基準上の取得企業が一致しない取引をいいます。一般的には、逆さ合併等と呼ばれることもあります。
逆取得の目的として多いのが、非上場の大規模企業が上場している小規模企業を逆取得することで、上場企業に昇格することです。
②共同支配企業の形成
共同支配企業の形成とは、いくつかの独立した企業がある企業を共同で支配することです。これを成立させるには、4つの要件をすべて満たす必要があります。
1.共同支配投資企業となる企業が、複数の独立した企業から構成されていること
2.共同支配となる契約等を締結していること
3.企業結合に際して支払われた対価のすべてが原則として議決権のある株式であること
4.支配関係を示す一定の事実が存在しないこと
③共通支配下の取引等
共通支配下の取引等とは、共通支配下の取引と非支配株主との取引をあわせた呼び方です。結合対象となる企業のすべてが、企業結合の前後で同じ株主により最終的に支配され、かつその支配が一時的ではない場合の企業結合をいいます。
共通支配下の取引
共通支配下の取引等の中でも、親会社と子会社の合併や親会社の支配下にある子会社同士の合併等が当てはまります。連結グループ内での結合であるため、グループ内の再編を目的として行われることが多いです。
非支配株主との取引
非支配株主との取引とは、子会社を支配している親会社と、ある企業集団を構成する子会社の株主との間で行う取引のことです。連結グループ外の外部取引となり、親会社が非支配株主から子会社株式を追加取得する目的等で行われています。
企業結合の会計処理方法
企業結合は、大きく分けて共同支配企業の形成・取得・共通支配下の取引等の3つに分類されると解説してきました。意味や目的についてはこれまでで理解できたと思います。ここでは、実際にこれらの企業結合が行われたとき、会計をどのように処理しているのか、その手法について説明していきます。
取得の会計処理
取得では、パーチェス法を用います。パーチェス法とは、取得企業が取得原価を算定し、取得される企業または事業の資産や負債等の会計処理を行う方法です。現在、原則としてこのパーチェス法が広く浸透しており、持分プーリング法は制限される傾向にあります。
また、取得は新規投資とみなされるため、企業結合日時点の時価から取得原価を算定しますが、時価の把握は難しく、差額が発生することもあります。この差額をのれんまたは負ののれんとして会計処理を行います。
逆取得の会計処理
存続会社は消滅会社の資産や負債について、結合直前に記録されている帳簿上の評価額により算定し、適正な帳簿価額で引き継ぎ、その差額から引き渡す事業に関する評価・換算差額、新株予約権を差し引いた値を、株主資本の払込として処理します。消滅会社は受け取った株式を、引き渡した事業に関係する株主資本相当額から取得原価を算定します。
共同支配企業の形成の会計処理
共同支配企業の形成は、支配する側と支配を受ける側でそれぞれ会計処理が必要です。支配する側は、移転した資産や負債と受け取る株式を交換する会計処理を行います。支配を受ける側の企業は、移転されてくる資産や負債の評価額を適切に算定し、株式の発行を行います。
共通支配下の取引の会計処理
共通支配下の取引等では、吸収される側の企業または事業の、資産や負債の評価額を適切に算定します。連結グループ内での結合のため、移転した企業や事業、株式、現金等の対価はすべて消去されます。そのため、基本的には企業結合の前後で連結財務諸表は変わりません。
まとめ:企業結合会計は種類ごとに会計処理方法が異なる
本記事では、企業結合の意味から会計処理方法までの基礎知識を解説してきました。日本で用いられている基準には、日本会計基準と国際基準であるIFRSがあります。
日本会計基準に基づいた企業結合会計の分類は3つあり、それぞれ会計処理方法が異なるのがポイントです。特殊な会計処理があり、とっつきにくい分野ではありますが、基本的な考え方だけでも理解しておくとよいでしょう。
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