付加価値とは? 具体例や求め方・高める方法を簡単にわかりやすく解説

企業が生み出した価値を「付加価値」と言います。
現代は特に変化や競争が激しいので、付加価値は企業が他社との競争で生き残っていくためにも高め続けなくてはなりません。

本記事ではそんな付加価値の数値化した場合の求め方や、高めるための具体的な方法を説明します。

GDPとも関係が深い「付加価値」の読み方・英語・意味とは?

企業が商品等に上乗せした、他社にはない価値

「付加価値(ふかかち)」とは企業が商品やサービスに対して他社にはない価値を新たに付け加えることを言い、英語では「added value」や「value added」と表記します。
現代は商品やサービスが豊富に存在するので、消費者に自社の製品を選択し続けてもらうためにも付加価値を高めることは重要な要素です。

また、一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額という意味のGDP(Gross Domestic Product、国内総生産)と付加価値は密接に関わっています。

活用する場面はどんなときか

実際に付加価値は以下のような2つの場面で活用されます。

非付加価値業務を削減

付加価値を生み出さない業務にかかるコストを削減することで企業は効果的に利益を大きくすることができます。
ですが、経費の削減を適切に行わないと付加価値の削減に繋がる恐れがあるので、付加価値を生み出すためには経費を削るべき部分とそのままにしておく部分を適切に判断しなければなりません。

業績の比較

その年だけの利益では新たに加えた利益に関しての比較はできませんが、各事業年度における付加価値を比較することで企業業績の比較に役立てることができます。

業種別に見る付加価値の具体例

ここからは付加価値の具体的な例をいくつかの業種別に紹介していきます。

①飲食店の場合
飲食店では様々な店の中から自分のお店を選んでもらうための付加価値が必須になります。

例を挙げると

  • 独自のルートで仕入れた新鮮でおいしい食材
  • ほかの店では見ることができない珍しい料理
  • また来たいと思えるような接客や快適な環境

等です。

このような付加価値を高めることで他店との差別化を図ることが可能になり、差をつけることに繋がります。

②ホテルや旅館等の宿泊・接客サービスの場合
競争の激しい宿泊・接客サービスも付加価値を高めることが業績アップに繋がる業種のひとつです。
付加価値を高めることでリピーターを増やすこと、口コミで新規の顧客を呼び込むことができるでしょう。

付加価値の一例としては

  • もう一度ここに泊まってみたいと思わせるような接客やおもてなし
  • ほかのホテルにはない珍しい宿泊プラン

等があります。

③マンション(賃貸経営)の場合
マンションは基本的に時間が経過するほど賃貸料は低くなります。
ですが独自の付加価値をつけることで賃貸料を高いまま維持することもできます。

  • 駅から徒歩10分以内の利便性のある物件
  • インターネットが無料で利用可能・雑誌読み放題サービスがある物件
  • エントランスのオートロック、防犯カメラが設置されていて安心して住める物件

等があります。

ほかにも、人気の家具ブランドとのコラボのようにターゲットを絞った付加価値を付けている物件も増えています。

付加価値を数字で見積もるための指標「付加価値額」

記事の最初に、付加価値は企業が生み出した価値であるという説明をしましたが、それに加えて付加価値は企業の収益・生産性を算出するための指標としても使用されており、これを「付加価値額」と言います。
付加価値額は基本的に、売上から原価を引くことで求めることができ、粗利と近い意味で扱われています。

簡単に説明すると、原価1,000円(外注費、加工費を含む)の商品Aを加工して、2,000円で売った場合は付加価値は1,000円になります。
付加価値額を求める計算方法は2通りあり、詳しくは次章で紹介します。

付加価値額の求め方①控除法(中小企業庁方式)

付加価値額を求めるための計算方法のひとつが「控除法」です。
控除法は別名で中小企業庁方式とも呼ばれ、売上から原価を差し引くことで付加価値を求めるというシンプルな計算方法です。
控除法は以下の式で付加価値を求めることができます。

付加価値額=売上高-外部購入価値

外部購入価値に含まれるものとして、原材料費・運送費・加工費等の経費があります。
控除法の計算方法は以上ですが、付加価値額を求める計算方法にはもうひとつ積上法と呼ばれる計算方法があり、次項で説明します。
それぞれの計算方法と異なる点をポイント毎に理解しましょう。

付加価値額の求め方②積上法(日銀方式)

積上法で算出するための計算式

付加価値額を求めるためのもうひとつの計算方法は「積上法」という計算方法で日銀方式とも呼ばれます。
積上法では企業が生み出した利益・費用等の付加価値を構成している項目(賃借料や人件費等)を加算していくことで付加価値額を計算します。

以下が積上法の計算式です。

付加価値額=人件費+金融費用+賃貸料+減価償却費+租税公課+経常利益

付加価値額を計算するためにも各費用についてポイントを押さえましょう。
積上法には減価償却を含める場合と含めない場合の2種類あり、次項ではそれぞれの説明をします。

減価償却費を除いた求め方「純付加価値」

積上法の中で減価償却費を除いて付加価値を計算する方法を「純付加価値」と呼びます。
減価償却費は機械設備等の資産を費用計上します。
純付加価値は考え方として、このような他社から得た価値は一切含めずに自分たちが生み出した価値のみを加算して計算を行います。

減価償却費を考慮した求め方「粗付加価値」

もうひとつの計算方法「粗付加価値」では先ほどとは異なり、減価償却費を含めて計算を行います。
この粗付加価値では建物のように、他社から購入した価値も自分たちのが付加価値を生み出していくためにはなくてはならないものという考え方をしています。
よって純付加価値では計算から除外した減価償却費を粗付加価値では含めて計算を行います。

積上法に用いる5つの項目

①人件費

人件費は給料や賞与、手当等、従業員の労働に対して支払う経費のことを言います。
積上法の項目として人件費を使用する場合は非常に分類が細かくなっています。
以下が項目の分類です。

  • 販売費
  • 労務費(製品を作るためにかかった費用)
  • 給与
  • 役員報酬
  • 退職金
  • 福利厚生費(社員の家賃や通勤費)

②経常利益

経常利益とは言葉通り経常的に発生している利益のことであり、売上高から原価と固定費を差し引いた営業利益に営業外での利益と損失を加減することで求めることができます。
また、経常利益は企業が一年でいくら利益を生んだのかを知るための重要な指標のひとつです。

経常利益についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>経常利益とはなにか? 初心者も簡単にわかる利益の違いや計算を解説

③賃借料

賃貸料とは外部からモノを借りた際にかかる費用を指します。
例を挙げると以下のようなものが賃借料に該当します。

  • 建物
  • 土地
  • 自動車
  • 機械設備
  • パソコンやコピー機のレンタル

リース料という勘定科目が賃借料の代わりに使用されることもあります。

④金融費用

金融費用とは企業が事業活動を行うための資金を調達するためにかかった費用のことを言います。
債権者に対する費用のみを指し、株主への配当等は金融費用に含みませんが定義は企業により異なります。
以下が金融費用の分類になります。

  • 支払利息
  • 社債利息
  • 社債発行費償却

⑤租税公課

租税公課は固定資産税のような税金や印紙代といった公的な費用のことを言います。
税金を納めることも企業が活動していくにおいては必ず遵守しなくてはならないルールです。
そのため、付加価値を生み出すことに関して、租税公課も必要な費用に該当すると考えられます。

租税公課には

  • 車検時の印紙代
  • 固定資産税
  • 重量税
  • 組合費

等が該当します。

なお、すべての税金が租税公課に該当するわけではないので、何が租税公課に該当するのか判断できるように押さえましょう。

租税公課についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>租税公課とは? 計算式や仕訳例・法人税等との違いをわかりやすく解説

付加価値の分析に関わる「生産性」の指標

①付加価値率

「付加価値率」は売上高の中にどれだけ付加価値が含まれているかを示している数値です。
付加価値を大きく生み出しているほど、付加価値率もそれに比例して上昇します。

以下の計算式で付加価値率を求めることができます。

付加価値率=付加価値額÷売上高×100

付加価値率を高めるということは企業の利益を向上させていく方法のひとつとして、挙げられます。
このように経営にとっても重要な付加価値率を算出するために、まず付加価値額を正しく把握する必要があります。
付加価値率の平均値は業界によって大きく異なるので、比較する際は同業の企業を選ぶようにしましょう。

②付加価値労働生産性

従業員1人あたりが生み出した付加価値の値を「付加価値労働生産性」と言います。
付加価値労働生産性の数値が高いほど1人あたりの生産性は高く、低ければ生産性も低いということを意味します。
付加価値労働生産性は以下の式で求めることができます。

付加価値労働生産性=付加価値額÷従業員数

効率よく価値を生み出すことも、利益を向上させるために重要です。
付加価値を高めるために現在の業務の手順やルールを見直して、生産性を向上させましょう。

付加価値を高めるための企業対策・改善策

外注費用や人件費等、費用を削減する

付加価値を高めるためには対策をする必要があります。
そのためにまず外注費用や人件費等の費用を削減することが効果的です。
特に人件費は企業の経費の中でも最も重要でなおかつ、大きな割合を占めます。

人件費を削減する例として、

  • 現在正社員が行っている業務の一部を非正規社員に移す。
  • 1人当たりの人件費が高額になりすぎていないかを見直す。
  • 事務業務を費用が安い海外にアウトソーシングする。

等があります。

ツールの導入等、業務の無駄を省く

付加価値率を高めるために業務を効率化することも効果的です。
業務を効率化するためにも現在の業務を見直しや、ツールを導入することが必要になります。

書類のペーパーレス化やRPAでの単純作業の自動化、クラウドサービス等を活用することにより従来の負担を軽減させ、付加価値を高めることに繋がります。
このように業務の効率化のためのツールを導入することは重要ですが、各従業員がそのツールを活用できるような仕組みやルールを作っていくことも大切です。

労働分配率の数値を同業他社と比較・見直しを行う

「労働分配率」とは、生み出された付加価値がどれだけ労働者に還元されているかを示す指標で、以下の計算式によって求めることが可能です。

労働分配率=人件費÷付加価値×100

労働分配率が高くなりすぎると、場合によっては経営が成り立たなくなるため金額の設定は慎重に行いましょう。
設定した金額が高すぎるのか安すぎるのか判断するためには、他企業との比較が必要になります。
その際は全く異なる業界の企業と比較するのではなく、同じ業界で規模も同じ位の企業を参考にすると適切な比較ができます。

まとめ

経営において付加価値は非常に重要な指標になります。
付加価値を高めることで、企業の利益を拡大することができます。
そのために、コストの削減や業務の効率化等積極的に対策をとることが経営を続けていくにあたって大切です。
また付加価値の計算方法や費用の種類に関しても適切に把握を行い、経営に上手く活用を行いましょう。

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