経理業務をするときに、財務調査のチェックポイントである仕掛品は注意して扱わなければなりません。
本記事では、仕掛品の解説、仕掛品と混同しやすい半製品の説明、正しい棚卸の評価方法、税務調査をクリアする仕掛品を扱うときの注意点等を具体的にご紹介します。
仕掛品とは?
仕掛品とは、製品の製造過程のなかでそのままの状態では売れる状態ではない製品としては製造途中の状態のことを指します。
また、目に見えるやりかけの製品だけでなく、やっている間にかかった人件費や光熱費等も仕掛品の項目にあたります。
一見この説明だけを聞くと価値がないように見えますが、仕掛品は棚卸資産の一種に当たるので取り扱いには注意が必要です。そして仕掛品は、税務調査の指摘項目にも含まれているのできちんとした取り決めのうえ扱いましょう。
仕掛品と間違えやすい「半製品」
半製品とは製造途中で販売できない状態にない仕掛品と違い、半製品は会社の製造品としては未完成だが販売ができるところまで製造できているものです。
例えば、飴を販売している会社であれば梱包されていない飴が半製品になります。
飴を加工している途中の成形前の飴であれば販売は出来ません。すなわち仕掛品ということになります。
仕掛品と半製品では、棚卸資産の評価も異なるので確実に区別をつけましょう。
具体的には仕掛品ってどんなもの?
仕掛品と半製品とは具体的にどのようなものなのか例をあげてご説明します。
例えば、パンを製造品として出荷する会社があります。
パンを製造するための素材の小麦粉やバター等が原材料となります。
パンを作る過程にある発酵途中の生地は販売できる状態になく、製造途中のやりかけのもののため仕掛品となります。
そして、そのパン生地が焼きあがった状態のものは、会社内では未完成ですが、外部に販売する事もできるため半製品になります。
焼きあがったパンを梱包し、自社の完成品として販売出来るものが製品になります。
このように考えると仕掛品と半製品の区別はつきやすくなります。
経理の棚卸での仕掛品の評価方法は?
仕掛品は、決められた方法で正しく評価し、計上することが重要です。
棚卸資産の評価方法は、原価法と低価法の二つがあり、どちらか決めた方法を税務署に届ける必要があります。
仕掛品の原価の計算方法
一般的に仕掛品の評価は、「直接材料費」と「加工費」の二つの原価を合計してだします。
直接材料費とは原材料の費用の事を言い、加工費とはそれ以外の人件費や光熱費等の費用の事を言います。
そして、仕掛品評価の計算方法は原価法であれば「最終仕入原価法」「個別法」「先入先出法」「総平均法」「移動平均法」「売価還元法」の6種類があります。
低価法とは、資産の取得原価法と時価を比較しどちらか低い方をとる評価方法です。
どの方法を取っても、メリット・デメリットがあるので、自社に合った計算方法をよく見極めて決める事が大切になります。
仕掛品はいつ計上する?
仕掛品を計上するタイミングは、決算時期等の在庫を棚卸して資産や経費を算出するタイミングに行われるのが一般的です。
仕掛品の計上をしっかりと行わないと、その分決算の際にでる利益が正確なものではなくなってしまうので、きちんとした取り決めのうえ正しく確実にこなす事が重要になります。
あいまいに棚卸をやってしまうと利益計算もおかしくなり、税務調査で指摘を受けることにもなりかねません。
そのため、毎月決まった時期に決まった計算方法で仕掛品の棚卸を計上することが大切です。
最終的には「棚卸資産」として計上する
仕掛品は、費用だけかかっていて売上が発生していないので経費として考えてしまうかもしれませんが、その後販売品となるので、売上が発生するものになります。
そのため、経費ではなく「棚卸資産(流動資産)」として計上しなければなりません。
万が一、仕掛品を経費として計上してしまうと必要以上の経費が増え、決算時に所得が減ってしまいます。
また、税務調査の際には指摘を受けることになり、その後流動資産に計上した場合追微課税の対象になったり、粉飾決算として問題になってしまうこともあります。
仕掛品についての税務調査で注意すること
仕掛品の計上をするうえで、税務調査で指摘を受けないように、しっかりと取り決めし、管理する必要があります。
これを怠ると、追微課税が課せられてしまったり、粉飾決算とみなされてしまう場合があります。
ここでは、3点に絞って注意すべき点をご紹介します。
ずさんな管理をしない
仕掛品は会社の大切な資産になるため、ずさんな管理は厳禁となります。
仕掛品の棚卸時期が決まっていない、また仕掛品なのに原材料として計上している等してしまうと税務調査で指摘を受けてしまうことになります。
特にソフトウェアやデザインを製造している会社であれば、ソフトウェアやデザインを作成途中であり、人件費がかかっているということでも「加工費」が仕掛品になるので注意してください。
第三者の税務調査官が見て納得できるルールや計上方法をしっかりと決めておくことが必要になります。
算定根拠のある金額を用意する
仕掛品を計上する際には、算定根拠のある金額を出す事も重要になります。
なぜこの金額になるのか、またなぜこの計算方法を使用しているのか等しっかりと説明出来るようにしていなければいけません。
税務調査では、他にも色々な数値のチェックがされるため他の数値との関連性も含めた根拠のある金額をしっかりとだすことが大切です。
そのため税務調査官からみて、算定根拠のある金額を示す必要があります。
過去の処理内容との整合性を確認する
仕掛品を計上する際に、途中からルールが変更になっていたり、異なる計算方法を時期によって使用してしまったりすると税務調査で指摘を受けることになります。
そのため、やはり毎月決まった時期に決まった計算方法で確実に行う事が必須になります。
もし、変更になる場合には過去に行った処理内容と整合性のある説明ができるようにしておかなければなりません。
仕掛品として仕訳される例
製品の製造途中の段階にある材料費や労務費、製造経費は原価計算を利用して仕掛品に振り替えます。
ここでは、具体的に仕掛品として仕訳される項目を二つご紹介します。
①製造のための原材料、労務費、製造経費
例えば、「製造のため原材料費を30万円出庫した」となるとその原材料費の金額を仕掛品の金額に変更します。
その後、「製品製造のため労務費100万と製造費50万を消費した」となるとその労務費と製造費を仕掛品の原価計算に含めます。
②納期が2年後のソフトウェアの受注製作
例えば、納期が2年後のソフトウェアの受注制作の場合になると「製品としてソフトウェアは販売されていないが、労務費、製造費として10万円かかっている」状態であれば、仕掛品として棚卸資産に計上します。
まとめ:経理は仕掛品を正しく理解して計上しよう
経理業務のなかでも仕掛品の扱いは理解が難しく、正しく理解していないと税務調査の際に指摘を受ける原因となってしまいます。
そのため、仕掛品を正しく計算し、ルールに沿った運用をしていくことが重要になります。
そのため、自社に合った計上方法で税務調査に指摘を受けないようにしっかりと対策を行いましょう。