「仕入れと商品はどう違うのか?」
「仕入れの勘定科目は何になるの?」
「仕入れの仕訳の書き方は?」
経理業務に携わる中で、このようなお悩みをもったことはありませんか? この記事では、仕入の意味や基本的な仕訳の方法と流れ等、具体例を交えながらわかりやすく解説していきます。
また、経理業務の効率化を図る方法として、「oneplat」というオススメの会計システムをご紹介します。是非最後までお読みいただき、明日からの業務にご活用ください。
「仕入」とは売上のために材料や商品を買い上げる費用を指す
仕入とは、「売上のために材料や商品等を購入すること」です。
では、勘定科目は何に該当するのでしょうか? 経理の仕事をしたことがない方は、勘定科目という言葉をはじめて耳にするかもしれませんね。勘定科目とは、「日々のお金のやり取りを記録するときに使う、タイトルのようなもの」です。
勘定科目は、大きく5つのグループに分類されます。
- 費用
- 収益
- 資産
- 負債
- 純資産
仕入はこの中の「費用」に該当します。
仕入を仕訳するタイミングの基準は主に4種類ある
では、仕入は「いつの時点で」仕訳(※)をしたら良いのでしょうか? 取引先が商品を出荷したときでしょうか、それとも、商品が自社に納品されたときでしょうか?
実を言うと、企業の考え方によってそのタイミングは変わってきます。仕入を仕訳するタイミングの基準は、主に4種類あります。以下の表で確認しましょう。
(※)取引の内容を「借方(かりかた)」と「貸方(かしかた)」の左右に分けて、帳簿に記入することです。
名称 | 意味 |
---|---|
出荷基準 | 取引先が商品を出荷した日を基準に仕入を計上する |
引渡基準(入荷基準) | 自社に商品が入荷した日を基準に仕入を計上する |
検収基準 | 入荷した商品を検品して、検収した日を基準に仕入計上する |
回収基準 | 商品の決済が完了した日を基準に仕入計上する |
仕入の基準を毎年変えたりむやみに変更したりしてしまうと、適正な会計処理が継続できなくなってしまいます。そのため、一度決めた計上の基準は、変えることのないよう注意しましょう。これを「継続性の原則」と言います。
仕入を仕訳する4種類の方法と使用する勘定科目
先ほどは「仕入をいつの時点で仕訳するか」について見てきました。今度は「仕入を仕訳する方法」について見ていきましょう。
仕入を仕訳する方法は、4種類あります。
種類 | 使用する勘定科目 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
三分法 | 3つの勘定科目 ・「仕入」 ・「売上」 ・「繰越商品」 | 取引ごとに利益を計算する必要がないため、仕訳がシンプル | ・ひとつの取引でいくら利益が出ているかがわかりにくい ・決算整理が必要 |
五分法 | 5つの勘定科目 ・「仕入」 ・「売上」 ・「仕入値引・戻し」 ・「売上値引・戻り」 ・「繰越商品」 | 値引きや返品の金額が大きい企業にとって、取引が把握しやすい | 勘定科目が増えるため、仕訳がシンプルではない |
分記法 | 2つの勘定科目 ・「商品」 ・「商品売買益」 | ・商品売買の利益と在庫残高を随時把握できる ・決算整理が不要 | 売上の度に原価と利益を分けて反映するので、仕訳の手間がかかる |
総記法 | ひとつの勘定科目 ・「商品」 | 使用する勘定科目が少ないため、仕訳がシンプル | 決算整理が必要 |
①数多くの企業に採用されている「三分法」
三分法(さんぶんぽう)は商品の売買を、「仕入」「売上」「繰越商品」という3つの勘定科目を使って仕訳する方法です。
「繰越商品」とは、前期から当期に繰り越された商品(在庫)、または当期から次期へ繰り越される商品(在庫)のことです。会社の「資産」にあたります。
三分法は実務上の処理が容易でわかりやすいため、多くの企業で用いられています。また、日商簿記3級の試験でもほとんどの問題で三分法による回答が求められるので、是非この機会に覚えておきましょう。
実際の仕訳の方法は、具体例を使って後ほど解説します。
②商品の返品・値引きの金額が大きい会社が適する「五分法」
五分法(ごぶんぽう)は商品の売買を、「仕入」「売上」「仕入値引・戻し」「売上値引・戻り」「繰越商品」という5つの勘定科目を使って仕訳する方法です。
「仕入値引・戻し」「売上値引・戻り」とは……
- 「仕入値引」→仕入れた商品の品質不良、数量不足、破損等による値引き
- 「仕入戻し」→仕入れた商品の品質不良や破損等による返品
- 「売上値引」→売った商品の品質不良、量目不足、破損等による値引き
- 「売上戻り」→売った商品の品質不良や破損等による返品
三分法との違いは何かというと、三分法は「値引」「返品」があればすべて逆仕訳で対応するのに対し、五分法では逆仕訳ではなく「仕入値引・戻し」「売上値引・戻り」という勘定科目を使って対応するという点です。
五分法は、仕入控除取引や売上控除取引を仕入・売上勘定とは別の科目として記帳するため、返品や値引きの金額が大きい会社が利用するのに適しています。
③金額の高い商品を少数扱う会社が適する「分記法」
分記法は、商品の売買を「商品」と「商品売買益」という2つの勘定科目を使って仕訳する方法です。三分法と違い、仕入や売上の勘定科目を使いません。
- 「商品」→ 加工せずにそのままの状態で販売することを前提として、仕入れたもの
- 「商品売買益」→ 売上から売上原価を引いた儲け。売上総利益(粗利)のこと。
また分記法は、商品の金額が高く、扱う商品の種類が少ない会社が利用するのに適しています。実際の仕訳の方法は、具体例を使って後ほど解説します。
④1勘定科目のみ使用する最もシンプルな記帳方法「総記法」
総記法は、商品の売買を「商品」という勘定科目のみを使って仕訳する方法です。商品を仕入れたときは仕入原価を記帳し、商品を販売したときは売価を記帳すれば良いだけなので、記帳方法がシンプルです。
その反面、期中の商品勘定は仕入原価と売価が混ざってしまうため、その残高は特に意味をもっていません。したがって、総記法を採用する企業はほとんどないというのが実情です。
商品・サービスを仕入れてから仕訳するまでの2STEP
ここでは、「仕入」を仕訳するときの流れを確認していきます。以下の2つのステップで進めていくと良いでしょう。
STEP1. 商品やサービスの取引内容によって勘定科目を選定する
まずは取引の内容を確認します。次に取引内容を原因と結果という2つの側面から見て、それぞれの勘定科目を選定していきましょう。
勘定科目は先述した「費用」「収益」「資産」「負債」「資本」の5つから該当するものを選んできます。
例えば、「ある商品を現金500円で仕入れた」場合で考えてみましょう。
【原因】商品を仕入れた→勘定科目は「費用」
【結果】500円現金が減った→勘定科目は「負債」
STEP2. 費用の発生は「借方」に、負債の発生は「貸方」に記入する
次に勘定科目を振り分けていきます。複式簿記では、取引内容を左右に分けて記帳します。左側が「借方(かりかた)」、右側が「貸方(かしかた)」です。
費用の増加は「借方」にあたり、資産の減少は「貸方」にあたるので、さきほどの商品を仕入れた場合の例を実際に記帳すると、以下のようになります。
借方 | 貸方 |
---|---|
仕入 500円 | 現金 500円 |
仕入の仕訳例|使用率が高い三分法と分記法による書き方
それでは実際に、三分法と分記法での仕訳方法を具体例を使って学んでいきましょう。
仕入でよくある仕訳例|三分法による書き方
三分法は、取引を「仕入」「売上」「繰越商品」の3つの勘定科目を使って処理する方法です。
三分法は企業で使われるもっとも一般的な仕訳方法なので、しっかりとここで理解するようにしましょう。
1. 商品を仕入れた「仕入」を用いた仕訳例
(例)10,000円で商品を仕入れて、代金を後日支払う場合
【仕入】
借方 | 貸方 |
---|---|
仕入 10,000円 | 買掛金 10,000円 |
「商品」ではなく、「仕入」となることに注意しましょう。仕入は「費用」、買掛金は「負債」となります。
2. 商品を売却した「売上」を用いた仕訳例
(例)15,000円で商品を売り、現金を手にした場合
【売上】
借方 | 貸方 |
---|---|
現金 15,000円 | 売上 15,000円 |
現金は「資産」、売上は「収益」です。
この時点では、どのくらいの利益が出ているかはわかりません。利益は決算整理時にわかるようになります。
3. 決算整理時の「繰越商品」を用いた仕訳例
(例)期首の商品棚卸高が5万円、期末の商品棚卸高が7万円だった場合
【決算整理】
借方 | 貸方 |
---|---|
仕入 50,000円 | 繰越商品 50,000円 |
繰越商品 70,000円 | 仕入 70,000円 |
三分法では、決算整理時に繰越商品の仕訳が必要となることを覚えておきましょう。
仕入でよくある仕訳例|分記法による書き方
分記法は、取引を「商品」と「商品売買益」の2つの勘定科目を使って処理する方法です。商品を仕入れたら、借方に仕入原価で金額を記入します。そして商品を売上げたら、売価と仕入原価との差額を「商品売買益」として記入します。
1. 商品を仕入れた「商品」を用いた仕訳例
(例)10,000円で商品を仕入れて、代金を後日支払う場合
【仕入】
借方 | 貸方 |
---|---|
商品 10,000円 | 買掛金 10,000円 |
「仕入」ではなく、「商品」となることに注意しましょう。商品は「資産」、買掛金は「負債」となります。
買掛金についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>買掛金とはどのような勘定科目? 売掛金との違いや仕訳例も紹介
2. 商品を売却した「商品売買益」を用いた仕訳例
(例)10,000円で仕入れた商品を、15,000円で売った場合
【売上】
借方 | 貸方 |
---|---|
現金 15,000円 | 商品 10,000円 |
商品売買益 5,000円 |
現金は「資産」、商品売買益は「収益」です。
商品はなくなってしまったので、「資産の減少」→貸方となります。
3. 分記法は決算整理時に仕訳しなくてよい
分記法では上記の具体例からわかるように、商品の勘定科目に仕入原価の金額を記入して、売上の度に商品売買益の金額を記入することになります。
そのため三分法と違い、利益を計算するための決算整理仕訳は必要ありません。
仕入の仕訳に関するQ&A
仕訳における「仕入」と「商品」の違いは?
「仕入」と「商品」は一見すると同じように思いますが、仕入をした際に、どの種類の記帳方法を選択したかによって仕訳で使う勘定科目が変わってきます。
4種類の記帳方法を覚えていますか? ここでは、以下の2つの記帳方法と使用される勘定科目についておさらいしましょう。
- 三分法→「仕入」「売上」「繰越商品」
- 分記法→「商品」「商品売買益」
お気づきのように、「仕入」は三分法で使用され、「商品」は分記法で使用されることになります。
なぜ「仕入」の勘定科目が資産の区分ではないのか
「仕入」をすると会社に商品が増えるので、「資産」となるような気がするかもしれません。
しかし結論から言うと、「仕入」は「費用」となります。
商品が売れると、売上原価という「費用」になります。仕入れた商品は、基本的に売られて売上原価となるわけですから、それならば最初から「費用」としてしまいましょうというわけです。
納品書・請求書をデータで受け取り! 会計システムとの連携で面倒な入力がなくなる「oneplat」
ここまで読んで、仕入の仕訳方法について、だいぶ理解が深まったはずです。しかし、経理の仕事に馴染みのない方にとっては、どの勘定科目を使ったらいいのか、どう仕訳をしたらいいのかがわからず、悩んでしまう場面が多々あるのではないでしょうか。
解決方法のひとつとして挙げられるのが、会計システムの利用です。会計システムを使えば、経理初心者の方や会計や簿記の知識がない方でも、勘定科目が自動で表示されたり、直感的な操作で仕訳ができるので、負担なく経理業務を行うことができるようになります。
そこでオススメしたいのが、「oneplat」というサービスです。
「oneplat」には主に4つの特徴があります。
- 複数の納品書や請求書をひとつに取りまとめるので、納品書・請求書のペーパーレス化が可能
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- 総合振込データの作成や仕訳の消込も自動入力
- すべての機能がパソコンやスマートホンで簡単に操作できるので、リモートワーク化を実現
「oneplat」を導入することにより、仕訳で発生する人為的ミスの軽減や業務の効率化が図れることとなります。
まとめ
仕入の流れや仕入の仕訳をするタイミングの基準、仕訳方法等、具体例を交えながら詳しく解説してきました。仕訳は経理業務の基本となるものなので、ここでしっかりと学んでおきましょう。
経理の仕事をしていると、つい目の前の数字にとらわれてしまったり、やらなければならない日々の業務に追われてしまいがちです。その結果、業務効率を大幅に改善できるかもしれないシステムの導入等については、ついつい後回しになってしまいます。
先ほど紹介した「oneplat」であれば、業務効率化を図れるだけでなく、インボイス制度や改正電子帳簿保存法にも対応しているため、スムーズに会計処理を進めることができるようになるはずです。
是非この機会に、経理業務改善のための会計システムやソフトの導入を検討してみてはいかがでしょうか。