中間申告の消費税の計算方法は? 実施目的や申告回数・仕訳を紹介

消費税には、中間申告制度というものがあります。「税金の前払制度」とも言えるもので、事業年度の途中で税金の一部を納付する制度です。分納により、一括で支払うよりも企業の納税負担を軽減することができます。

今回は、中間申告の全体像や税額の算出の仕方、仕訳の方法についてご紹介します。
消費税は、事業をする上で避けては通れない税金です。是非、本記事を通して理解を深めましょう。

「消費税の中間申告」とは? 実施の目的とメリット

「消費税の中間申告」とは前もって期中に消費税を支払うこと

消費税の中間申告とは、前年の確定消費税額が一定以上ある企業が、その年の消費税の何割かを期中で前払いすることを言います。

消費税の課税期間は、原則として1年です。しかし、1年分の消費税を一括して支払うことは、企業にとって大きい負担となります。よって、それを考慮して設けられたのが、「中間申告制度」という分納制度です。

中間申告の際に納付した税額(中間納付税額)は、消費税の確定申告によって調整されます。中間納付税額は確定申告の税額から差し引かれ、差し引きしきれなかった場合は還付されます。

この制度は、企業だけではなく国にとってもメリットのあるものです。それは、どのような点でしょうか。

「消費税の中間申告」は国・納税者の双方にメリットがある

中間申告制度は、前述した通り企業の納税負担を分散するものです。しかし、企業側だけにメリットのあるものではありません。国としても、早い段階で税金を確保できることはメリットです。

この制度は、消費税のほかに法人税にもあるものです。法人税の中間申告についても詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>中間申告における法人税の仕訳や計算方法|申告義務がある企業とは?

中間申告は、すべての企業が行うものではありません。では、義務となっているのはどのような企業なのでしょうか。

消費税の中間申告が義務となる企業の定義

前期の消費税額が48万円を超過した企業

消費税の中間申告を行って中間申告書を提出する必要があるのは、前課税期間における消費税の年税額が48 万円を超える法人です。

消費税には、国税となる部分(消費税)と地方税となる部分(地方消費税)があります。ここで言う年税額は、消費税のみを指し、地方消費税を含みません。

なお、税率ごとの消費税と地方消費税の内訳は以下の通りです。

税率消費税地方消費税
標準税率(10%)7.8%2.2%
軽減税率(8%)6.24%1.76%
旧税率(8%)6.3%1.7%

定義について確認したところで、次は税金の多寡によりどのような違いがあるのかを見ていきましょう。

税額によって異なる申告回数

中間申告は直前の課税期間の確定消費税額によって、申告の回数が異なります。

確定消費税額は、中間申告対象期間の末日までに確定した消費税の年税額です。前述した通り、地方消費税は年税額に含まれません。

中間申告が必要な企業には、税務署から前期の実績に基づいた中間申告書と納付書が届きます。それを用いて前期実績より中間申告を行う(予定申告)か、仮決算による中間申告が必要です。

前課税期間の確定消費税額による中間申告の回数と納付額は以下のようになります。

直前の課税期間の確定消費税額48万円以下48万円超・400万円以下400万円超・4,800万円以下4,800万円超
中間申告の回数原則不要。ただし、任意の中間申告制度があります。年に1回年に3回年に11回
中間申告提出・納付期限それぞれの中間申告の対象となる課税期間の末日の翌日から2か月以内別表
中間納付税額※直前の課税期間の確定消費税額の6/12直前の課税期間の確定消費税額の3/12直前の課税期間の確定消費税額の1/12

(※)中間納付税額と併せて地方消費税の中間納付税額を納付します。

(別表)

  • 課税期間開始後の1か月分 :
    課税期間開始日から2か月を経過した日から2か月以内
  • 上記1か月分以後の10か月分 :
    中間申告対象期間の末日の翌日から2か月以内

一度に多額の税金を支払うということは、企業の資金繰りを悪化させることがあるものです。ですから、次の項では中間納付の対象外の企業に対する救済措置と言える制度について説明します。

【消費税の中間申告制度】対象外でも任意で申告可能

前課税期間の確定消費税額が48万円以下であれば、中間申告をする必要は原則としてありません。しかしながら、任意で中間申告をすることができる制度があります。

中間申告義務のない企業でも、納税地を所轄する税務署長に「任意の中間申告書を提出する旨の届出書」を提出することで中間申告が可能です。これを「任意の中間申告制度」と言います。中間申告の回数は年に1回です。

中間納付がない企業は、年に1回、確定消費税を全納しなければなりません。全納が難しい企業は、この制度を活用して納付額を分散すると良いでしょう。

届出書を提出した場合は、事業年度開始から6か月を対象期間として、期首から6か月経過した末日から2か月以内に、消費税と地方消費税の中間申告と納付を行います。

中間申告で納める金額は、どのような方法で算出するのでしょうか。2つの方式を見ていきましょう。

【自由に選べる】中間申告の消費税を計算する2つの方式

①簡便な「予定申告方式」

前年の確定消費税額を、月割計算により算出する方法です。この方式を利用する場合は、わざわざ納税額を計算する必要はありません。なぜなら、納税の少し前のタイミングで税務署から送付されてくる中間申告書と納付書に、中間納付税額が印字されているからです。

通知された金額を納付する場合は、消費税法44条により中間申告書の提出が不要となります。そのため、手間がかからないのが特徴です。消費税法44条について、詳しい内容は後述します。

納付額を計算する場合は、以下の方法により消費税・地方消費税の双方を算出することが必要です。

【消費税の算出】
中間納付が1回の事業者の場合は、前年の確定消費税額に6/12を乗じます(このとき、円未満を切り捨てます)。中間納付が3回の場合は3/12を、11回の場合は1/12をそれぞれ前年の確定消費税額に掛ければ納税額を算出することが可能です(このとき、100円未満を切り捨てます)。

【地方消費税の算出】
消費税の税額に、22/78を乗じます(このとき、100円未満を切り捨てます)。

直前の課税期間の確定消費税額中間納付の回数中間納付税額
48万円超・400万円以下年に1回直前の課税期間の確定消費税額の6/12+その78分の22の地方消費税額
400万円超4,800万円以下年に3回直前の課税期間の確定消費税額の3/12+その78分の22の地方消費税額
4,800万円超年に11回直前の課税期間の確定消費税額の1/12+その78分の22の地方消費税額

手間がかからない方式がある一方で、手間のかかる方式もあります。それが、次にご紹介するものです。

②より適正な金額を算出できる「仮決算方式」

中間申告対象期間を1課税期間と見なして仮決算を実施し、納税額を算出する方法です。なお、仮決算でも簡易課税制度を適用できます。

決算申告書と同じように中間申告書を作成して納付額を算出する必要があるため、予定申告方式に比べて手間がかかる方式です。また、この方式を利用するときは、算出した納税額がマイナスになっても、中間申告の時点では還付は受けられません。

業務負担が大きい方式であるものの、当期の業績を基に納税額の算出が可能です。ですから、実態に即した税額を納付することになります。

前期より業績が顕著に悪化していたり前期の確定消費税額が極めて大きかったりした場合等には、この方式を利用する方が中間納付税額を抑えられるでしょう。

次は、消費税に関する取引の仕訳について確認します。

中間申告で納めた消費税の仕訳例 |2つの経理方式(税込・税抜)

消費税の中間申告の際の仕訳は、税抜経理と税込経理で違います。それぞれの仕訳を確認しましょう。

①税抜経理|納めた時・決算仕訳

税抜経理をしている事業者が中間消費税を支払ったときには、「仮払金」もしくは「仮払消費税等」の勘定科目を使用して仕訳します。

例)中間消費税30万円を当座預金から支払った。

借方金額貸方金額
仮払金30万円当座預金30万円

決算時には、預かった消費税である「仮受消費税等」と支払った消費税である「仮払消費税等」を相殺して清算します。このとき、中間消費税も清算します。

例)【決算】消費税を清算した。(仮受消費税等の残高:100万円・仮払消費税等の残高:40万円・確定納付額:29万9,800円)

借方金額貸方金額摘要
仮受消費税等100万円仮払消費税等40万円消費税清算
仮払金30万円中間消費税
未払消費税等29万9,800円確定納付額
雑収入200円消費税清算差額

仮払消費税等と未払消費税等の合計は、仮受消費税と必ずしも一致しません。差額は、「雑収入」あるいは「雑損失」で仕訳します。

【補足】
仮払消費税等:
消費税の会計処理方式に税抜経理を採用している場合に、期中に仕入等で支払った消費税を処理する資産勘定です。税込経理方式を採用している場合には使用しません。

仮受消費税等:
消費税の会計処理方式に税抜経理を採用している場合に、期中に売上等で預かった消費税を処理する負債勘定です。税込経理方式を採用している場合には使用しません。

②税込経理|納めた時・決算仕訳

税込経理をしている事業者が中間消費税を支払ったときには、「租税公課」で仕訳します。

例)中間消費税30万円を当座預金から支払った。

借方金額貸方金額
租税公課30万円当座預金30万円

例)【決算】確定納付額額を未払処理した。

借方金額貸方金額
租税公課30万円未払消費税等30万円

納付が翌期になる場合は、未払処理が必要ということです。そうなると、中間申告が11回目の納付も未払処理が必要となります。その仕訳を確認しておきましょう。

【注意】11回目に納めた消費税の扱い

11回目の中間納付期限は、決算月の翌月です。ですから、決算日以降に11回目の中間納付を支払う場合は、消費税納付予定額について未払処理をすることが必要となります。

【税抜経理】

借方金額貸方金額
仮払金30万円未払消費税等30万円

【税込経理】

借方金額貸方金額
租税公課30万円未払消費税等30万円

次に、未払処理以外にも気を付けておきたいことについてご紹介します。

消費税の中間申告時に気を付けるべきこと

中間申告書を提出しないと特例が適用される

中間申告書を期限までに提出しなかったときは、予定申告方式により申告書の提出があったものと見なします。このことは、消費税法第44条で定められています。

消費税法 第44条 中間申告書の提出がない場合の特例

中間申告書を提出すべき事業者がその中間申告書をその提出期限までに提出しなかつた場合(第四十二条第十一項の規定の適用を受ける場合を除く。)には、その事業者については、その提出期限において、税務署長に同条第一項各号、第四項各号又は第六項各号に掲げる事項を記載した中間申告書の提出があつたものとみなす。

引用元:消費税法(e-Gov法令検索)

消費税を期限内に支払わないと「延滞税」が課せられる

税金が期限までに納付されない場合は、原則として期限の翌日から納付する日までの期間に対して延滞税が課せられます。消費税も延滞税の対象です。消費税・地方消費税の双方にかかります。

【延滞税の率】

  • 期限の翌日~2か月を経過する日まで:
    原則として、7.3%
  • 2か月を経過した日以降:
    原則として、14.6%

余計な支払いが増えないよう、期限はしっかりと守りましょう。

消費税の中間申告に関するQ&A

Q1.確定申告時の消費税額の求め方は?

消費税額(国税)は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて求めます。地方消費税は、消費税額に22/78を乗じた金額です。

消費税額=課税売上にかかる消費税額-課税仕入にかかる消費税額

簡易課税の場合は、事業区分によって異なる「みなし仕入率」を使って計算しましょう。

Q2.電子申告は可能?

中間申告・確定申告共に、電子申告が可能です。ダイレクト納付もできます。

Q3.納付書はいつ届く?

中間納付の対象となる企業であれば、納付期日前に届きます。

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中間申告の消費税の計算方法などについてまとめ

消費税には、確定申告時の納付以外に「中間納付」と呼ばれる税金を前払いする制度があります。

この中間納付は、すべての企業が必ずしも行うものではありません。前年の確定消費税額が48万円超となった企業のみが行い、その金額によって納付回数や納付時期が異なります。なお、中間納付の対象外でも任意で中間申告することも可能です。

中間申告には、予定申告方式と仮決算方式があります。通常は手間の少ない予定申告方式を利用することが多いですが、実態に即した税額を納付したいのであれば仮決算方式を検討しましょう。

税込経理と税抜経理で中間消費税・確定消費税の仕訳は異なりますので、注意してください。

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oneplus編集部

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