近年、社内の書類を電子化するペーパーレス化が進んでいます。コスト削減や業務の効率化等様々なメリットがあるため、導入を検討している会社も多いことでしょう。
しかし、「自社でも導入したいが、どのように進めたらよいか分からない」と頭を抱えている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、実際にペーパーレス化をして成功した事例を参照し、推進のポイントや注意点を解説します。
ペーパーレス化の導入を検討している方は、是非最後までご覧ください。
前提:ペーパーレス化とは
ペーパーレス化とは紙の書類を減らす取り組みのことで、「ペーパーレス」「ペーパーレス化」と呼ばれることもあります。ここでは、ペーパーレス化の概要や導入のメリット・デメリットについて解説します。
ペーパーレス化の概要
ペーパーレス化とは、書類を紙ベースでの保管からデータでの保管に移行することです。1998年に施行された電子帳簿保存法を始めとして政府主導で推進されており、2019年に施行された働き方改革の重要施策の一つにも掲げられています。
現在はワークフローや電子契約、勤怠管理等のペーパーレス化を支援するシステムが提供されており、会社だけでなく自治体や学校でも導入が進んでいます。
ペーパーレス化のメリット・デメリットについて
ペーパーレス化のメリットとして、以下の5点が挙げられます。
業務の効率化
柔軟な働き方へのアプローチ
情報漏洩のリスク低減
コストカット
企業のイメージアップ
書類の電子化により回覧や稟議申請等がスムーズになることで、業務がより効率よく進められます。また、データでいつでもどこでも書類確認ができることで、出社せずとも業務を進めることが可能です。ペーパーレス化はアクセスや閲覧に権限を付与することで、不正な持ち出しや文書の改ざんを防止することもできます。紙を減らすことで用紙代や郵送費等がカットできるうえ、環境保護に努めている企業としてイメージアップにも繋がるでしょう。
一方、ペーパーレス化のデメリットとして、以下の3点が挙げられます。
導入までの初期投資が必要(時間・費用)
業務効率悪化や情報漏洩に繋がる誤ったシステムの選択
ITに不慣れな写真が多いと、浸透しづらい可能性も
これらのデメリットをよく理解し対策を立てることで、ペーパーレス化を成功につなげられます。
ペーパーレス化の成功事例
ペーパーレス化を導入すると、どのような課題を解決できるのでしょうか。ここでは、参考になる4つの成功事例をご紹介します。
事例①:株式会社大和総研の成功事例
株式会社大和総研は、大和証券グループにおいて企業戦略策定のために情報分析等を行っている企業です。導入以前は独自のワークフローシステムを利用して400種類もの申請書を紙ベースで処理していました。ペーパーレス化を実行した現在は、約900種類の申請書を管理、月間約2万5千件のペースで処理できるように。累計処理券数は100万件を超え、業務の効率化に成功しました。
事例②:三菱UFJファクター株式会社の事例
三菱UFJファクター株式会社は、三菱UFJファイナンシャル・グループの一員として顧客のモノやサービスの動き、資金の流れをサポートする企業です。導入以前は既存システムを使用して1週間かけて書類を回していました。ペーパーレス化を実行した現在は申請した翌日には完了するようになり、業務の効率化に成功しました。
事例③:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社の成功事例
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社は、コンピュータ・ネットワークシステムの販売や保守等を行う伊藤忠商事グループの子会社です。経営統合に伴う承認申請業務の煩雑化解消や内部統制の強化を目的として、ペーパーレス化を導入しました。
その結果、導入7ヵ月で約4万3千時間の業務時間や約5万6千枚の用紙を削減することに成功。申請書がほぼペーパーレス化でき、コロナ禍におけるリモートワークにも迅速に対応できました。
事例④:株式会社T-TOPの事例
株式会社T-TOPは、住宅のリフォームや省エネ設備の導入等の営業代行を行っている大阪の中小企業です。情報共有の停滞、ノウハウの属人化等の課題を解決するために、ペーパーレス化を導入しました。
その結果、チーム内の情報共有が密になり、メンバーの動きが視覚的な把握に成功。顧客情報や対応状況が1箇所に集まったことで、業務効率も上がりました。稟議書の電子化も行い、コロナ禍によるリモートワークにも対応できました。
成功事例に学ぶ推進時のポイントとは
先ほどご紹介した4つの成功事例に共通しているのは、自社に合ったシステムの導入です。課題を把握したうえで導入しているため、結果として業務の効率化につながっています。しかし、いくらよいシステムを導入しても使われなければ意味がありません。
ここからは、成功事例を踏まえたペーパーレス化推進のポイントを解説します。
<経営者層向け>コストや生産性向上等のメリットを伝える
ペーパーレス化の導入には、経営者や役員への説明の中でメリットや期待できる効果を伝え、理解してもらうことが重要です。「コストを削減できる」「業務の効率化により生産性が上がる」「リモートワークにも対応できる」等のメリットを説明しましょう。
より説得力を高めるためには、削減できるコストを数字で示したり、他者の成功事例を提示したりすることが効果的です。
<従業員向け>利便性や効率等のメリットを伝える
従業員も経営陣同様、ペーパーレス化を導入する理由やメリット等を説明しましょう。なぜなら、ペーパーレス化に伴って最も影響を受けるのが従業員だからです。
新しいシステムを導入すると、慣れるまでに時間がかかり逆に効率が下がる場合もあります。フォローアップ体制の整備等を含め、従業員が使いやすい環境を作るとよいでしょう。
段階的に電子化を進める
ペーパーレス化は一度に進めず、段階的に進めましょう。取引先の状況によっては、電子化することで取引に影響する場合があります。すべて電子化してからだと対応が大変になるため、書類を電子化しても問題ないかを確認しながら少しずつ進めていくことが重要です。
ITリテラシーの低い従業員にも浸透するよう環境を整備する
ITリテラシーの低い従業員も安全に効率よく使えるよう、環境を整えることが重要です。すべての従業員がITに詳しいとは限りません。適切な環境を整えなければ、端末の紛失や盗難のリスク、情報漏洩にもつながってしまいます。画像を使ったマニュアルの整備やサポート担当の管理者設置等の環境を整えましょう。
ペーパーレス化の注意点とは
ペーパーレス化を進めるうえで注意したいことが3つあります。スムーズな施行に繋げるためにも、以下の注意点を意識しておきましょう。
従業員の理解を得る
先ほどもお伝えしたように、従業員の理解を得ることが大切です。新たなシステムを導入することで最も影響が出るのは従業員です。理解を得ないままペーパーレス化を進めると、不満を集めてしまう可能性もあります。
ペーパーレス化を推進する目的を説明したうえで導入し、現場の声を取り入れながら改良していくことが重要です。
すべての業務がペーパーレス化できるわけでない
業務内容によってはペーパーレス化できないものもあるということを理解しておきましょう。例えば公的な書類は、紙媒体でなければ提出できない場合があります。
ペーパーレス化を進める中で社内の書類を把握し、電子化しても問題ないものと紙でなければならないものを分けることが必要です。
システム障害等のリスクに備える
システム障害により閲覧できない状況が起こり得るというペーパーレス化のデメリットを理解し、対策しておくことが大切です。例えばバックアップを取っておく、クラウドサーバーを利用する等、システム障害が起こっても業務に支障が出ないように準備しておきましょう。
まとめ:他社事例を参考にペーパーレス化を進めよう
本記事では、ペーパーレス化の成功事例を参照しながら、導入のメリットや推進のポイントを解説しました。ペーパーレス化を進めたことで業務効率や生産性を上げたり、多様な働き方を実現したりした事例が多くあります。煩雑な事務作業を改善するためにも、自社に合ったペーパーレス化を検討してみてください。