シェアードサービスとは?BPOとの違いや導入するメリットを紹介

働き方改革等労働に対する考え方への変化が進む現代において、企業も業務改善等、求められることは増え続けています。

また、近年の新型コロナウイルスの蔓延等、企業の存続をも脅かしかねない未曾有の事態も発生する状況下では、企業はコスト削減等を強いられる状況です。

そこで今回は、業務改善の面でも注目される「シェアードサービス」についてご紹介いたします。

目次

経営手段のひとつ「シェアードサービス」とは何か?

まずは、そもそもシェアードサービスとは何なのか、という点からご説明いたします。

「シェアードサービス」とは?

シェアードサービスとは、経営方法のひとつです。

企業内の間接部門をひとまとめにしたり、部門をまるごと本社とは分離させ、グループ会社として新たに法人を設立させたりする手法です。

間接部門は、総務・人事・経理・労務・情報システム等が該当します。

シェアードサービスとBPOの違いとは

シェアードサービスと混同されやすいものに「BPO(Business Process Outsourcing)」があります。

下表は、シェアードサービスとBPOの違いと共通点です。

業務内容(共通点)目的(共通点)特徴(違い)
シェアードサービス間接業務
総務・人事・経理・労務・情報システム・調達 等
・従業員の負担軽減
・業務改善
・業務の効率化
・経費(人件費等)の削減
◎企業内の組織
(間接業務をひとつの部門に集約させる。間接業務専門のグループ企業を設立する。)
BPOシェアードサービスと同じシェアードサービスと同じ◎外部委託
(自社とは関係のない外部の企業へ間接業務を委託する。)

シェアードサービスを導入する4つのメリット

それでは、シェアードサービスの導入にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

シェアードサービスのメリット1:業務の効率を強化できる

シェアードサービスのメリットのひとつめは、業務を効率化できることです。

従来、各事業所ごとに行っていた業務をひとつに集約するために、作業内容の洗い出しや業務フローの見直し、新しいマニュアル作成等を行う必要があります。

その際に、不必要な業務内容をなくしたり、手順を改める等して見直すことで、無駄をなくし、業務効率の改善を図ることができます。

シェアードサービス導入は、これまでの業務内容を見直すタイミングとしても最適です。

シェアードサービスのメリット2:社会的信頼性が高まる

シェアードサービス導入による業務フローの見直しは、会社の社会的信頼度を高めることにも繋がります。

なぜなら、業務のスマート化でガバナンスが強化されるからです。

業務の洗い出しや整理で業務フローはスマート化され、管理・統制しやすくなります。

その結果、不正がおこりづらくなるといえるでしょう。

それによって、取引先や顧客からの印象もよくなり、企業としての信頼感もアップすると言えます。

 シェアードサービスのメリット3:人件費削減に繋がる

シェアードサービスは人件費の削減も実現可能です。

複数の事業所ごとに間接部門を設置し、それぞれ従業員を配置するよりも、部門をひとつに集約したほうが、人員は削減することができます。それにより、人件費の削減にも繋がります。

シェアードサービスのメリット4:生産性が高まる

業務内容を整備し、業務フローのスリム化、効率化を実現することで生産性も向上します。

無駄な工程、作業が省かれる分、生産能力は必然的に高まるからです。

また、業務フローのスリム化は従業員間の円滑なやり取りを可能にします。これによりスタッフ同士の連携が高まり、業務のスピードアップや、生産性の向上に繋がるでしょう。

シェアードサービスを導入する3つのデメリット

メリットがある一方でデメリットと捉えられる面もあります。

ここからは、シェアードサービス導入におけるデメリットをお伝えします。

新規

シェアードサービスのデメリット1:導入時には手間とコストが生じる

デメリットのひとつ目は、導入にかかる手間とコストです。

まず、導入にあたっては、下記のような作業が必要になります。

  • 業務フローやルールの見直し、新たな業務フローの作成
  • 社内および社外の関係各所への事前周知
  • 新しいシステム導入の作業
  • 新しいルールの周知
  • 新ルールへ適応していく      等

これらの作業には、多くの手間と労力がかかる上、新たなシステムに適応していくための従業員の精神的な負担もあるでしょう。

そのため、各部署の関係者を集め、準備への協力を仰ぐことも必要です。

そして、社内への十分な周知・理解を求めるための方針検討も綿密に進めていくことが重要でしょう。

コスト面では下記の費用がかかることが考えられます。

  • 新しいシステムの導入費用
  • システムの開発費
  • 設備や備品の整備費用   等

このように、シェアードサービスの導入には、事前の手間や労力、そしてコストがかかることは避けられない問題です。

これまで述べたデメリットを乗り越えるために重要なことは、最終的な目標と目指す姿、従業員が得られるメリットを明らかにし、社内で共有することです。

この手間やコストをかけてまで行うことの意味を理解してもらいましょう。

そうすることで、社内でも理解や協力を得られ、よりスムーズに進めていくことができるでしょう。

シェアードサービスのデメリット2:一部社員のモチベーション低下の懸念

シェアードサービスにより、従業員のモチベーションを維持させることはひとつの課題です。

シェアードサービスで、作業が標準化されることによって、作業は単純化され、モチベーションを保つことが難しい従業員が出てくることも考えられます。

さらに懸念されるのが処遇面での問題です。

シェアードサービスにより、間接部門が本社から分離された場合は、本社処遇とは別の給与形態が取られることがあります。

それにより、給与等に対しての不満が生まれ、モチベーションに悪影響をおよぼすことも考えられます。

したがって、各社員への事前フォローや十分な説明、キャリア形成に対する体制を構築し従業員の不安を解消していく必要があるでしょう。

シェアードサービスのデメリット3:問題発生時の対応遅れの可能性

シェアードサービスによるデメリット3つ目は、問題発生時の対応スピードが従来と比べて落ちてしまう可能性です。

これまで各部門直下に置かれていた間接部門がなくなるため、担当部門への連絡が手間になることも考えられます。

また、部門の集約により人員が限られていることから、シェアードサービス導入前と比べると、スピード感が損なわれることも否めません。

したがって、シェアードサービスを取り入れる際は、問題が起こった場合の担当部署への連絡方法や対応方法についても予め整備し、ほかの部門の従業員へ向けて周知しておく必要があります。

シェアードサービス導入に適した業務は大きく2通り

シェアードサービスの導入対象となる業務は大きく分けると2種類あります。

ひとつ目は「ルーティン業務」2つ目は「専門性が高い業務」です。

ルーティン業務には例として下記のような業務が該当します。

  • 一般会計処理
  • 給与、賞与の計算
  • 社会保険関係の手続き
  • 入社、退職に関する対応   等

公的手続き等、手順が既に標準化されているものや、事務的に進めやすい業務はシェアードサービスに、より適していると言えます。

一方、専門性の高い業務に対してもシェアードサービスが適用されるケースもあります。

  • 管理会計部門
  • IT・システム関係(セキュリティ、サポート、保守、管理等)
  • 内部監査    等

シェアードサービスの組織体制は主に2種類

シェアードサービスと一言に言っても、大きく2つの種類に分かれます。

ここでは2種類のシェアードサービスについてご説明します。

一部門として本社に配置して運用する体制

ひとつ目は、これまで各事業所やグループ企業ごとにそれぞれ配置してあった間接部門をひとつに集約して、本社内に一部門として設置する方法です。

本社内に間接部門を設置することのメリットは、移行のスムーズさです。

この場合は、既に環境が整っている場所への移転となるため、作業的な面での負担が少なくすみます。さらに、本社に配属ということで従業員の心証がよく、移行がスムーズに進むことが想定できます。

一方で、シェアードサービスをきっかけとした業務の見直しは、やや行いにくいというデメリットがあります。

新しい組織を作るというよりも、バラバラだった機能を既にある組織内で一纏めにするイメージですので、抜本から業務改善を行うには困難が多いと言えるでしょう。

子会社化し運用する体制

もうひとつのシェアードサービスの手法は、間接業務を行うための新たな会社を設立する方法です。

グループ企業という形をとり、本社とは別法人で運営していくことになります。

実は、前者よりもこの子会社化の方法をとる企業が多く、シェアードサービス全体の約7割がこの子会社化を選択しています。

子会社化の一番のメリットは、人件費の削減です。

本社と別会社となることで、本社とは異なった独自の給与体系を設定することができます。

この点は、既存社員にとってはデメリットに感じ、モチベーション低下に繋がる恐れがあるかもしれません。

ですが、新たなスタッフの雇い入れの際に、正社員ではなく派遣社員・契約社員・パート等で運営することで人件費の削減が可能となります。

【注意】シェアードサービスを「単純なコスト削減策」と考えてはいけない理由

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シェアードサービスは、異なった業務フローや運用システムを扱う複数のグループ企業がひとつに集約される一種の改革です。

そのため、単純に組織を集約させただけでは従業員同士の連携不足、新システムへの不慣れ等を招き、結果として業務効率や品質の悪化に繋がりかねません。

また、労働環境、処遇の変化に関する従業員への事前説明が不十分であった場合は、不満を生み、従業員のモチベーションの低下に繋がることもあります。

十分な準備や既存従業員へのフォロー、周知を徹底的に行うことが、シェアードサービスの成功には欠かせません。

シェアードサービスの導入を検討する3つの手順

シェアードサービスの導入を判断するポイントと導入時の進め方を解説します。

1.社内課題を洗い出し導入が必要かどうか判断する

まずは、社内で抱えている課題を洗い出し、その課題の解決にはシェアードサービスの導入が有効かどうかを考えましょう。

課題の内容や社内の状況によっては、シェアードサービス導入のメリットが見出せず、BPOの方が適しているという見解に至るかもしれません。

まずは、シェアードサービス導入が自社にとってメリットになるかどうかを検証しましょう。

2.導入する部署を選定し間接業務を集約する

自社の課題が明らかになったら、次は導入する部署の選定を行います。

シェアードサービスの導入が適している部署は例えば下記のものがあります。

  • 経理:債務管理、一般会計
  • 労務:給与、賞与計算、社会保険手続き
  • 総務:社内備品管理、福利厚生業務
  • 情報システム:社内システムの管理、保守  等

どの部署が業務フロー等を標準化しやすいか、業務を集約できるかを検討しましょう。

3.現行のシステムの見直しをシステム担当者と調整する

シェアードサービス導入にあたっては、システムの一本化が必要になるため、まずは現在各部署で使用しているシステムを確認しましょう。

そして、シェアードサービス導入後は、どのようなシステムを使用していくのか検討や見直しを行う必要があります。

見直しの際には、各システムの担当者と綿密な打ち合わせを行い、今後の方針を決定、導入や新システムの研修等も含めた調整を行いましょう。

システムにいち早く慣れるためのスムーズな導入へ導くことがシェアードサービス成功の鍵となります。

シェアードサービス導入で成功した事例から学ぼう

ここからは、実際にシェアードサービスを導入した企業の実例を3点ご紹介いたします。

【株式会社LIXIL】

大手住設機器・建材メーカーのLIXILは2011年4月の経営統合をきっかけに、全105社にのぼる子会社の会計業務システムを統合するシェアードサービスを進めました。

会計システムを根本から見直し、新たなシステムを制作、各部門、子会社の販売管理等に関わる情報をひとつの会計システムに集約させることが可能となりました。

その結果、経理業務の標準化を成功させたのです。

グループ内の経理システムを共通化し、業務フローを標準化させたことにより、業務の効率化だけでなく、企業間の経理部門の異動も容易になり、人材の有効活用も可能となりました。

【大和ハウス工業株式会社】

大和ハウス工業でも経理に関わる業務のシェアードサービスを実現しています。

毎月、各取引先へと配布される支払内容の通知書類や決算時の残高確認書等、経理関係書類の印刷業務を行うためのシステムを構築し、大量の書類発行にかかる手間を削減することに成功しました。

印刷業務への労力を減らすことで、作業品質は向上し、結果として業務効率化に繋がりシェアードサービスを成功させています。

【日本電気株式会社】

グループ全体で10万人以上の従業員を有するNECグループは、出張の多さから出張手配にかかる業務負担が課題となっていました。

交通手段、宿泊場所の検討、予約、帰任後の精算に関する業務をいちから見直し、新たなシステムを導入、グループ内で共通システムの運用を進めていきました。

システムには各手配や精算に関するサポート機能があります。

その効果もあり、グループ全体で出張に関する業務の負担や精算ミスの削減を実現しました。

また緊急時の安否確認もスムーズになり、確かに実感できる業務改善を実現しています。

まとめ

シェアードサービスについての理解は深まりましたでしょうか。

導入時、労力やコストが掛かることは確かにあります。

しかし、課題の洗い出しをしっかりと行い、どのようなシェアードサービスを導入するのかを検討し着実に進めていくと、導入後は効果を実感できるほど業務改善が期待できます。

どれくらいの規模で改革していくかは、それぞれの企業規模等にもよりますが、自社にあった形、規模でできるシェアードサービスを少しずつでも進めてみてはいかがでしょうか。

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oneplus編集部

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