コーポレートガバナンスの目的とは? 強化の方法をわかりやすく解説

コーポレートガバナンスの意味を問われると、なんとなくイメージは掴めていてもしっかりと説明できる方は少ないのではないでしょうか。
今回の記事では、下記内容についてお伝えしていきます。

  • コーポレートガバナンスの「意味」と「必要性が高まっている理由」
  • 強化をする3つの目的とは?
  • 非上場企業も強化したほうが良い理由
  • 強化するための4つの方法

本記事を参考にコーポレートガバナンスについての理解を深めましょう。

目次

コーポレートガバナンスとは簡単に言うと「経営の公正さを監視する仕組み」のこと

過去に企業が組織ぐるみで不祥事を働いてしまうニュースを、見聞きしたことがあるのではないでしょうか。コーポレートガバナンスとは、そうした事態を招かないように、経営の公正さを監視する仕組みを意味します。監視する役目を担うのは、社外の取締役や監査役等です。

株主をはじめとした利害関係者の利益を保っていくためにも、不祥事を起こさずに企業価値を維持または向上していかなくてはいけません。日本だけではなく、国際的にもその重要性が高まってきています。

今、コーポレートガバナンスの必要性が高まっている理由

1990年代以降増加した不祥事等の対策として

1990年代にバブルが崩壊してから、企業ぐるみでの不正や不祥事が増加してしまったことが挙げられます。粉飾決算等の適切でない会計処理、品質を満たしていない商品の流通、暗黙上の時間外労働等が行われました。業績不振や成果主義が取り入れられるようになったことが要因として考えられています。不正を起こさない企業にするため、自社で経営を監視する仕組み作りを行う必要性が出てきたのです。

世界を視野に入れた競争力を高める必要性が生じたため

外国人投資家による日本株式の購入が増え、経済のグローバル化が叫ばれることになったのも理由のひとつです。より資金調達をスムーズに行うためにも、日本企業の競争力を国際的に高める必要性が出てきました。外国人投資家の特徴として、モノ言う株主であることが挙げられます。今まで以上に公正で、そして透明性のある経営を行う必要性が出てきたのです。

こうした時代の流れもあり、2004年には東京証券取引所が「上場企業コーポレートガバナンス原則」を公表する等、国内でも一気に重要性を認識されるようになりました。

コーポレートガバナンス強化の3つの目的

目的①不祥事等の予防として経営の透明性を高める

ひとつ目として、経営の透明性を高めることが挙げられます。
企業として今後取っていく戦略や抱えているリスク、経営成績や財務状況等の情報を適切に管理していくことが不祥事の予防としても重要です。経営状況を正確に把握することで、情報開示を求められても透明性をしっかりと示すことができるでしょう。こうした経営を継続していくことで、もし不正が行われてもすぐに気付くことができ、リスク防止にも繋がっていきます。

目的②ステークホルダーとの信頼関係を保つべく立場や権利を尊重する

株主等のステークホルダーの権利を尊重し、信頼関係を保っていくことも企業としての大切な責務です。また株式の保有数で判断するのではなく、すべての株主に対して権利を尊重していかなくてはなりません。

企業とステークホルダーの双方にとって利益を生むための経営戦略を示すことで信頼関係の構築ができるのはもちろん、組織として不正が行われるのを防ぐことにも繋がるでしょう。もしステークホルダーから意見がなされた場合は、真摯に対応し、わかりやすい説明を心がけることも重要です。

目的③企業価値を高める

3つ目の目的は、企業価値の向上です。ここまでお伝えしてきたことを企業としてしっかり取り組むことで、投資家からの資金調達や金融機関からの融資等を受けやすくなります。

経営活動にとって重要なお金が集まることは財務状況の安定に繋がりますし、事業への投資や優秀な人材の獲得等に使うことができるでしょう。こうした積み重ねが企業の成長を促し、ひいては企業価値を高めることになります。

コーポレートガバナンスと混同しやすい用語

「内部統制」とは対外的な取り組みか、対内的な取り組みかの違いがある

内部統制というのは、その名の通り法令を遵守するために「企業内部を統制する仕組み」を意味します。一方、コーポレートガバナンスとは「株主等の社外ステークホルダーの権利を保護すること」「社外の取締役や監査役により、企業の不正防止を防ぐ仕組み」といった対外的な取り組みのことです。

ただし、全く異なるものではありません。正確な財務諸表の作成を行い、情報開示を求められた場合は透明性を示す等、共通する部分も多いです。不正を防止し真っ当な経営を行っていくためには、どちらも欠かせないでしょう。

「コンプライアンス」とは法令等の遵守|コーポレートガバナンスは守る仕組み

コンプライアンスは、日本語では「法令遵守」と訳されることが多いです。企業が法律で定められたことや、倫理観を持って経営を行うことを求めています。そして、この法令を遵守するために企業として行うべき社内の体制作りが、コーポレートガバナンスです。

よって、もし企業が不正な行為や不祥事を起こしてしまった場合は、コンプライアンス違反を犯していて、かつコーポレートガバナンスが欠けている状態だと言えるでしょう。

コーポレートガバナンスコードとは簡単に言うと「指針・ガイドライン」のこと

コーポレートガバナンスコードとは、金融庁と東京証券取引所が公表している、上場企業が参考にするべきガイドラインのことです。つまり、企業外部のステークホルダーを尊重した上で、真っ当な経営を行っていくために必要な仕組み作りの指針となります。
下記、5つの基本原則が定められています。

  1. 株主の権利・平等性の確保
  2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  3. 適切な情報開示と透明性の確保
  4. 取締役会等の責務
  5. 株主との対話

これで終わりではなく、基本原則を実現するために定められた31個の原則、一部の企業に適用される42の補充原則もあり、全部で「3層構造」となっているのが特徴と言えるでしょう。

現在は「プライム市場」と「スタンダード市場」では、3層すべての原則を適用しなければいけません。それに加え、プライム市場では諮問委員会の設置義務等も定められる等、より厳しい企業運営を求められています。

コーポレートガバナンスコードが示す5つの基本原則

前章で紹介した5つの基本原則について、ひとつずつ詳しく確認していきましょう。

①株主の権利・平等性の確保全株主に対して権利の平等性を確保することを定めています。その中でも特に少数株主と外国人株主について、十分な配慮を行うように記載されている点をチェックしておきましょう。
②株主以外のステークホルダーとの適切な協働企業経営は株主だけのためではなく、社員や金融機関、地域社会にも貢献があるべきです。共に成長していけるように適切な協働を行うことが求められています。
③適切な情報開示と透明性の確保上場企業は法律によって、企業情報を適切に開示しなければいけません。また、ステークホルダーには、必要があれば企業へ情報開示を積極的に求めることを推奨しています。
④取締役会等の責務取締役会は株主の権利を主張したり説明を行う重要な機関です。よって、企業とは独立した立場から経営のチェックを行い、監視していかなくてはいけません。
⑤株主との対話株主との接点として株主総会がありますが、それ以外にも積極的な対話を行うことを求めています。株主の考えを聞くことはもちろん、自社の経営について理解してもらうことも重要だからです。

非上場企業もコーポレートガバナンスを強化した方が良い理由

理由①上場を見据えた準備ができる

将来的に上場を目指しているのであれば、上場前から「上場していると仮定して」取り組んでいくことが重要です。なぜならば、上場後に「上場前の経営体制」が評価対象となる可能性もあるからです。上場後に何かマイナス要素が発覚すると、株価に影響が出てしまうでしょう。上場する前から、上場を意識した組織体制作りが大切になってきます。

理由②ステークホルダーとの信頼関係は非上場でも必須である

株主、金融機関、取引先、社員、地域社会等のステークホルダーとの関係性が重要な点では、上場企業だけではなく非上場企業も同じです。コーポレートガバナンスを徹底して行い、信頼関係を構築していくことで、適切な協働を行うことができます。それが、企業としてのさらなる成長・発展に繋がっていくでしょう。

理由③不祥事の予防は非上場企業でも重要

現在のようなインターネット隆盛の時代では、例え非上場企業であっても何か不祥事が発覚した場合は、SNSを通じて一気に社会に広がっていく可能性が高いでしょう。それが影響して自社に対する批判を受け、企業イメージや売上の低下に繋がってしまうかもしれません。このような事態を避けるため、非上場企業であってもコーポレートガバナンスを充実させることは重要です。

コーポレートガバナンスをどう強化するのか|4つの方法

方法①内部統制の仕組みを構築して機能させる

先述の通り、コーポレートガバナンスと内部統制は別物ではなく、共通していることが多い関係性です。内部統制の仕組みをしっかり構築して機能させることが、コーポレートガバナンスの強化には欠かせません。
内部統制を構築していくため、社内で下記内容を行っていきましょう。

  • 現在行っているワークフローの見直し
  • 「抱えている課題」「起こりうるリスク」の洗い出しと、その対策方法の選定

方法②社外取締役や社外監査役による第三者からの監視体制を形成する

一部の経営陣による独裁的な経営判断や不正行為を防ぐためには、社内ではない第三者からの監視体制を整える必要があります。社外取締役や社外監査役を設置し、客観的な立場から意見を言えるチェック体制を構築しましょう。

第三者から構成される委員会を組織することで、普段は経営に対して意見することのできないステークホルダーの代わりに経営を監視する役目を担うことができます。

方法③執行役員制度による権限の分離を行う

執行役員制度を取り入れることも、コーポレートガバナンスの強化に有効な方法です。経営に関する意思決定を行う役割を担う取締役、そして決定された業務を行う責任や権限を持っている執行役の分離を行います。そうすることで権限の一極集中を防ぐことができ、特定の経営層による偏った経営判断や不正行為を防ぐことが可能になるでしょう。

方法④社内規則等での判断基準の明確化と周知徹底を行う

コーポレートガバナンスの強化には、社員の意識改革と協力が欠かせません。企業として社員に望む行動のあり方や仕事を行う上での倫理観等、社内への周知徹底を図りましょう。
社内規則等を作成することで、業務上での判断基準の明確化を行います。企業としてあるべき考え方が社内に浸透していくことで、次第に強化されていくはずです。

まとめ

コーポレートガバナンスの基本から強化する方法まで紹介してきましたが、理解は深まりましたでしょうか。

  • 健全な経営を行うために監視する仕組みを意味している
  • バブル崩壊後に増加した企業の不祥事を防ぐため、そして企業の国際競争力を高めるために必要性が高まっている
  • 金融庁と東京証券取引所が、上場企業に対して守るべきガイドラインを公表している
  • インターネット全盛の現代では、非上場企業にもコーポレートガバナンスの強化が求められている
  • 強化する4つの方法を参考に、できるところから進めていくのが近道である

特に経営者や役員の方は、コーポレートガバナンスについてしっかり理解しておきましょう。

「コーポレート・ガバナンスの強化が企業成長に重要な理由」については、下記の記事で詳しく解説されています。あわせてご確認ください。

参考:コーポレート・ガバナンスの強化が企業成長にとって重要な理由とは?事例で解説します | 株式会社パラダイムシフト

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