コストリダクションとは何か? 意味と手順、コツを押さえよう

会社が多くの利益を得るには、無駄なコストを減らすことが必要です。特に製造業では現場の作業の効率化に目を向けがちです。しかし、製造に関わる活動全体から無駄を洗い出し実践する「コストリダクション」という方法をご存じでしょうか。

この記事では、コスト削減の方法のひとつ「コストリダクション」について解説します。具体的な作業だけでなく、前提となる仕組みにもメスを入れることになるため、大がかりな取り組みにはなりますが、その効果は大きなものです。概要を知って是非取り入れてみてください。

コスト削減方法のひとつ|コストリダクションとは?

製品等の企画の時点から取り組むコスト削減方法

コストリダクションは、「Cost(費用)」と「Reduction(削減)」を組み合わせた言葉で、コストを削減することを意味します。製品を造るには、工場の人件費や機械稼働のための光熱費等、生産過程のコストがかかります。

しかし、その前に製品のコンセプト作りや設計、材料の選定・仕入等を経なくてはなりません。コストリダクションは、このような生産以前の企画段階を含めた、製品ができるまでの全体の流れの中で、無駄なコストをなくしていく方法です。

コストリダクションを推進する主な場面「原価企画」とは?

製品ができるまでの全体を通して無駄なコストを減らすためには、「原価企画」を行うことが大切です。費やせるコストに基づいて製品設計や仕入、製造方法を考える方法で、コストリダクションを行うには不可欠な取り組みです。詳しく見ていきましょう。

「原価企画」とは企画の時点で原価の目標を定め、達成するための活動

コンセプトやターゲット、材料や設計、製造方法等、製造に取り掛かる前に決めておくことは多くあります。これらを考える段階、すなわち企画の時点で、目標となる原価を定めることが「原価企画」です。

製品の利益を考えるとき、原価に利益を上乗せして売価を設定するという方法があります。原価企画はこの逆で、まず売価と確保したい利益の金額を決め、これらの差から目標となる原価を割り出します。目標の原価での製造を達成するために、仕入や生産方法等を調整していくという方法です。

現代において原価企画が注目される理由とは?

原価企画が注目される背景には、消費者行動の変化があります。戦後の物資不足の後に迎えた高度経済成長期によって、日本は大量生産・大量消費の時代へ突入しました。しかし、バブル崩壊以降の家計の引き締めや、インターネットの発達、消費者ニーズの多様化等から、「作れば売れる」時代は終わりを迎えます。

現代では、インターネットによって消費者自身が製品を比較検討できるようになりました。品質や性能だけでなく、オリジナリティや付加価値も購入の決め手となります。製品を総合的に評価し、「価格に見合っているか?」という観点で購入を決めるため、ただ商品を作っても売れなくなったのです。

そのため、製品を作る前に「価格はいくらなら売れるか?」ということを考えておく必要性が生じました。そこで、原価企画による原価の管理が注目されているのです。利益を確保するためには、少ない原価で製品を作ることが大切です。そのためには、製品ができるまでの全体の無駄をなくすコストリダクションもまた重要となっています。

コストリダクションに取り組む手順・3ステップ

step1.どんなコストがあるのかを洗い出す

コストリダクションを行うには、まずコストの種類を把握しておく必要があります。「どのプロセスにどれだけのコストがかかっているのか」を細かく洗い出すことで、関連する部署や担当者がわかり、スムーズに連携して取り組むことができます。また、プロセス間の関係性を把握しておくことで、負担のバランスを考慮した実施計画が立てられるでしょう。

step2.削減対象とするコストを見定める

洗い出したコストの中から、削減すべきコストを決めていきます。無駄なコスト、省きやすいコストを見定めましょう。コストが多いものや、膨らんでいるものを中心に検討すると効果的です。

ただし、やみくもにコストを減らすことだけを考えるのではなく、「削減は実現可能か?」「本当に無駄なのか?」といった視点を持ちましょう。コストリダクションを数値の面だけで考えると、本当に必要なコストを削ってしまうことにもなりかねません。負担をひとつの部署に集中させてしまう可能性もあります。プロセスを細かく分解し、現実的に削減できるコストを対象にしましょう。

step3.「期限」と「量」の削減目標を設定する

対象を決めたら、削減の目標を設定します。「いつまでに」「どれだけ」削減を行うかを明確にし、関係者全員で共有しておきましょう。目標が曖昧だと具体的なゴールが見えづらく、関係者が自分のこととして捉えにくいものです。コストリダクションへの士気にも関わるため、できる限り簡単で具体的な形で、誰にでもわかりやすい目標を立てましょう。

コストリダクションを上手に進める2つのコツとは?

1.コスト意識を共有できる機会を持ち、企業全体に浸透させる

コストリダクションは、企業全体の協力や連携が不可欠です。まずは「コストリダクションとは何か?」という基本的な概要について、全員の理解を深めましょう。その上で、コストリダクションの必要性や対象となるコスト、具体的な目標を共有することが大切です。

これらの点が弱いと、数字上の目標を達成することに躍起になり、本来の目的が置き去りになってしまうことがあります。コストに対して、各々が当事者意識を持つための機会を設け、企業全体に浸透させることから取り組みましょう。

2.負担にならないよう従業員の意見を取り入れる

あるプロセスに多くのコストがかかっている場合でも、一概に無駄であるとは言い切れません。現場の従業員でないと、プロセスの重要度は正確に把握できないものです。また、コストを削減することで従業員の負担が増え、かえって効率が悪くなるといったことも考えられます。

そのため、削減対象とするコストや目標は、経営者や管理職の視点から一方的に決めるのではなく、従業員の意見も聞いた上で多角的に決めるようにしましょう。全員が納得してコストリダクションを行うことができれば、ひとりひとりがコストや目標への意識を高く持つことができ、大きな効果に繋がります。

コストリダクションとコストコントロール|2つの方法の違いと関係

コストコントロールは製造の流れの中でできるコスト削減方法

コストリダクションに似た言葉に「コストコントロール」がありますが、これらは「どのプロセスでコストを削減するか」が異なります。コストリダクションを行うのは製品の企画段階からの一連のプロセスです。一方、コストコントロールを行うのは製造のプロセスに限られ、製造方法や原料等が決定した後に行われます。

まず製品ができるまでの全体を見て、仕組みの無駄をなくすのがコストリダクション。実際に製造を行う中で、無駄な手間や工程を省いていくのがコストコントロールと言えます。

2つの方法のメリット・デメリットの違い

それではコストリダクション、コストコントロールのメリット・デメリットをそれぞれ見ていきましょう。

コストリダクションのメリット・デメリット

コストリダクションのメリットは、製品ができるまでの全範囲が削減の対象であるため、多くの手段や方法を検討できる点です。原料の仕入先や種類、人件費、設備等、あらゆるコストが対象となるため、内容によっては大幅な効果が期待できます。

デメリットは、大幅な現状変更があった場合は、製品の品質が従来のものから変わったり、従業員のモチベーションが下がったりする恐れがある点です。根本的な事項を変更すれば、原料や製造方法が一新することもあるでしょう。製品の品質や従業員のモチベーションを維持するためには、各ステップでしっかりと検討して実現可能な計画を立てることが大切です。

また、対象範囲が広いだけに、どのプロセスのコストを削減すれば良いか判断が難しくなることもデメリットのひとつです。

コストコントロールのメリット・デメリット

コストコントロールのメリットは、現場で実際に行われるプロセスの中でコスト削減に向けて具体的に取り組むため、従業員のモチベーションを高めやすい点です。「具体的に何をすれば良いか」がより明確であるため、従業員の当事者意識も強くなります。また、一度コスト削減のためのプロセスや意識を従業員が身に付けると、継続的な効果が見込めることもメリットのひとつです。

デメリットは、対象範囲が製造の工程に限られるため、より細かい現場レベルの対応となり、方法や手段が限られる点も挙げられます。このため、コストリダクションに比べると、効果はどうしても低くなってしまいます。

2つの方法の企業におけるコスト削減効果の違い

効果の割合は、コストリダクションでは8割、コストコントロールでは2割と言われており、大きな差があります。大幅なコスト削減を目指すなら、対象範囲の広いコストリダクションが効果的です。

コストリダクションは製造の根幹となる仕組みを見直すため、効果が大きいことは必然的と言えます。加えて、従来の仕組みの効率を問うものであるため、コストのみならず、従業員の手間や動線を見直すきっかけともなるでしょう。時代の流れによって非効率となっているにもかかわらず継続しているような仕組みを改善するチャンスとなります。

コストコントロールの効果は比較的小さなものになりますが、従業員の意識は高めやすいものです。ひとりひとりが意識を持つことで、コスト削減を意識した企業体質の醸成にも繋がるでしょう。

2つの方法の関係性をおさえよう

2つの方法は、ともにコスト削減を目指すものですが、規模や方法が異なります。より大きな効果を得るには、両者を組み合わせて行うと良いでしょう。まずは全体を見てコストリダクションを行い、さらに製造工程にスポットを当ててコストコントロールを行うという流れが効果的です。

広い視点で企画段階から製品のコストを考えるコストリダクションと、細かい作業レベルで製造コストを考えるコストコントロールは、どちらもコスト削減には不可欠な方法です。

このほか、会社のコスト削減については以下でも詳しく紹介しています。是非参考にしてください。
>>会社のコスト削減に取り組む方法とアイデア12選

自社に合った方法をうまく組み合わせて、少ない負担で無理のないコスト削減を目指していきましょう。

まとめ

コストリダクションでは、会社全体が納得して目標や意識を共有すること、なるべく負担の少ない方法で行うことが大切です。コストを削減することだけに目を向けるのではなく、より効率的でシンプルな方法を取り入れることで、会社を良くしていこうという視点を持てると良いでしょう。製造現場にスポットを当てたコストコントロールを組み合わせることも不可欠です。

あらゆる無駄をなくして全体の負担を軽くすることで、効率の良いコスト削減に繋がるでしょう。

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oneplus編集部

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