キャッシュフロー計算書とは? 見方・読み方や経営分析について

キャッシュフロー計算書という言葉を聞いたことはありますか?

上場企業の決算書で、目にしたことがある方は少なからずいらっしゃると思います。後述にサンプルを載せていますが、沢山の言葉が羅列している上に見慣れない言葉で、初見ではどう見るのか迷ってしまう書類です。

ではなぜ、その書類が作成されるのか。それは、損益計算書や貸借対照表では「手元にどれだけの経営に必要な資金があるのか」を把握できないからです。

資金がショートしてしまえば、企業経営は立ち行きません。だからこそ、作成が必要となります。

この記事ではキャッシュフロー計算書の見方・読み方について解説します。経営分析への活用方法についても触れますので、是非最後までお読みください。

財務3表のひとつ・キャッシュフロー計算書とは?何がわかる?

会社の経営状況を知るための書類を財務諸表(決算書)と呼ぶことは、皆さんご存知かと思います。では、財務3表にキャッシュフロー計算書(C/F)が含まれていることをご存知でしょうか。

財務3表とは、「損益計算書(B/S)」「貸借対照表(P/L)」「キャッシュフロー計算書(C/F)」のことを指します。

すぐ動かせるお金の増減と残高がわかる会計書類

キャッシュフロー計算書(C/F)は、会計期間中の現金等(現金および現金同等物)の流れを数値化した書類です。これを見れば、一定期間内の現金等の増加・減少と、作成時点で経営に必要な資金がどの程度あるかを知ることができます。

キャッシュとは、以下のようなものを指します。

  • 手元現金および要求払預金:
    当座預金・普通預金・通知預金等
  • 容易に換金可能で換金金額の変動可能性の低い、3か月以内の短期金融資産:
    定期預金・譲渡性預金・コマーシャルペーパー等

企業は現金等が不足すれば黒字だとしても倒産してしまいます。現金等が足りずに資金がショートして債務返済等ができなければ、企業は存続できません。

東京商工リサーチの2020年の調査によると、倒産件数7,773件のうち46.8%が黒字倒産です。資金がショートしてしまうリスクは、企業にとって看過できない問題だとおわかりいただけるでしょう。

とは言え、損益計算書(B/S)・貸借対照表(P/L)では「すぐ動かせる現金等」を知ることができません。だからこそ作成されるのが、キャッシュフロー計算書(C/F)です。

キャッシュフロー計算書は上場企業での作成が義務

作成が義務付けられているのは、上場企業等です。非上場企業は、作成する義務はありません。

「公益法人会計基準の運用指針」にて、会計監査人を設置する公益社団・財団法人以外の法人は、作成しなくてもよいことになっています。

しかし前述したように、企業のお金回りの状況をきちんと把握できていなければ、資金がショートして黒字倒産する可能性があります。ですから、非上場企業であってもキャッシュフロー計算書をつくってもよいでしょう。

4つの構造から成り立っている

キャッシュフロー計算書では会計期間におけるキャッシュでの収入・支出を、主要な活動である「営業・投資・財務」の3つに区分して記載します。

【キャッシュフロー計算書】

Ⅰ 営業活動によるキャッシュ・フロー(営業CF)

税引前当期純利益
減価償却費
貸倒引当金の増減額
受取利息および受取配当金
支払利息
有形固定資産売却損益
売上債権の増減額
たな卸資産の増減額
仕入債務の増減額
小計          利息および配当金の受取額
利息の支払額
法人税等の支払額
営業活動によるキャッシュ・フロー 

Ⅱ 投資活動によるキャッシュ・フロー(投資CF)

有価証券の取得による支出
有価証券の売却による収入
有形固定資産の取得による支出
有形固定資産の売却による収入
投資有価証券の取得による支出
投資有価証券の売却による収入
貸付けによる支出
貸付金の回収による収入
投資活動によるキャッシュ・フロー 

Ⅲ 財務活動によるキャッシュ・フロー(財務CF)

短期借入れによる収入
短期借入金の返済による支出
長期借入れによる収入
長期借入金の返済による支出
社債の発行による収入
社債の償還による支出
株式の発行による収入
自己株式の取得による支出
親会社による配当金の支払額
財務活動によるキャッシュ・フロー 

Ⅳ 現金および現金同等物の増減額Ⅴ 現金および現金同等物の期首残高Ⅵ 現金および現金同等物の期末残高

3つの区分に分けて表示することにより、以下のことがわかります。

  • 営業CF(キャッシュフロー):
    営業活動(主たる業務)からどれくらいの資金を獲得しているのか
  • 投資CF(キャッシュフロー):
    資金をどれくらい将来の利益獲得のために投資しているのか
  • 財務CF(キャッシュフロー):
    営業活動・投資活動のために、どれくらいの資金が調達されているのか

これに加えて、フリーキャッシュフロー(フリーCF)というものがあります。

フリーCFとは、企業が事業活動で得たお金のうち、自由に使える現金等がいかばかりあるかを表すものです。営業CFと投資CF、このふたつを合算します。

つまり、キャッシュフロー計算書は「営業CF・投資CF・財務CF・フリーCF」の4構造です。個々のキャッシュフロー(現金等の流れ)について、事細かに見ていきましょう。

キャッシュフロー計算書の見方・読み方のポイント

1.営業活動によるキャッシュフローの見方・読み方  

営業CF(キャッシュフロー)とは、言ってしまえば「営業取引による収支」です。具体的には、以下のようなものが該当します。

  • 売上のうち、現金売上等の収入
  • 売掛金や受取手形のうち、現金等で回収したもの
  • 売上に関連した前受金等
  • 仕入のうち、現金仕入等の支出
  • 買掛金や支払手形のうち現金等で支払ったもの
  • 仕入に関わる前渡金等

営業CF(キャッシュフロー)からは、「営業活動から資金を獲得できたか」が読み取れます。

そのため、営業CFがプラスであれば、資金が獲得できていて資金繰りに問題のない状態であり、営業活動が快調であると言えます。逆に、営業CFがマイナスであれば、営業活動または資金繰りに何か問題を抱えている状況です。

2.投資活動によるキャッシュフローの見方・読み方 

投資CF(キャッシュフロー)とは、投資活動によって生み出された収支です。具体的には、現金等で取引された以下のようなものが該当します。

  • 有形固定資産の取得・売却
  • 有価証券の取得・売却
  • 貸付け・貸付けの回収
  • 現金同等物にあたらない定期預金の預入や払戻

先に述べたように、投資CF(キャッシュフロー)からは「資金を将来の利益獲得のために投資しているのか」がわかります。

設備投資をした場合にはマイナスになり、設備投資を売却したり貸付けを回収した場合にはプラスになります。ですので、単に「プラスだからよい」「マイナスだから悪い」というものではありません。

ベンチャー企業や事業拡大に勤しむ企業は、投資CFがマイナスになるのが一般的です。つまり、経常的に設備投資をしている企業はマイナスになる傾向があります。

3.財務活動によるキャッシュフローの見方・読み方

財務取引から生み出された収支が、財務CF(キャッシュフロー)です。具体的には、現金等で取引された以下のようなものが該当します。

  • 借入金の借入れ・借り換え・返済
  • 社債の発行による収入・社債の償還による支出
  • 配当金の支払い

財務CF(キャッシュフロー)からは、「資金が調達されているのか」が読み取れます。借入れや社債の発行をすればプラスになりますし、借入金返済や社債償還をすればマイナスです。こちらも、単に「プラスだからよい」「マイナスだから悪い」というものではありません。

成長過程にある企業が、大規模な投資をするために資金調達として借入れを増やすような場合はプラスになります。

4.フリーキャッシュフローの見方・読み方

前述したとおり、フリーキャッシュフローは自由に使える現金等がどのくらいあるのかを示します。それは言い換えれば、営業活動で得た資金により事業維持のための設備投資が賄えているかと言って差し支えないでしょう。

一般的には、フリーキャッシュフローがプラスで金額が多ければ経営状態が良好。フリーキャッシュフローがマイナスであれば、資金調達の必要があると判断されます。

フリーキャッシュフローがかなりプラスであることは、手元資金がしっかりあるということと同義です。安全度の高い企業だと見なされるでしょう。

ですが、単に「プラスだからよい」とは言い切れません。内容を確認し、以下のような場合には注意をしましょう。

  • 営業CFがマイナス・投資CFがプラスで、フリーCFはプラス:
    営業収入だけで営業活動の支出が賄われておらず、有形固定資産を売却した可能性があります。
  • 営業キCFがプラス・投資CFがマイナスで、フリーCFはマイナス:
    営業活動で得た資金以上の投資をしています。投資CFのマイナスが大きいのであれば、分不相応の投資をしていないか検討が必要です。

これに加えて、財務CFが大幅にプラスになっているのなら、巨額の投資をするにあたって融資を受けている可能性があります。

また、このような場合にも気を付けたいところです。

  • フリーCF(+)<財務CF(-)

    借入金返済や社債償還にあてる資金が多く、営業や投資で得た資金ではそれが追い付いていない可能性があります。

フリーキャッシュフローの簡単な計算方法

フリーキャッシュフロー(CF)は、以下の計算式で算出します。

フリーCFー=営業CF+投資CF

キャッシュフロー計算書から見る経営分析

企業経営がうまくいっているケース

企業の状態成熟期
営業キャッシュフロー(CF)
投資キャッシュフロー(CF)
財務キャッシュフロー(CF)

理想的な状況です。営業活動で得た現金等を投資に回し(投資CF-)、借入金返済・配当金の支払い等を行う(財務CF-)ことができるでしょう。

企業が成長段階にあるケース 

企業の状態成長期
営業キャッシュフロー(CF)
投資キャッシュフロー(CF)
財務キャッシュフロー(CF)

営業活動で得た現金等以上に投資が必要(投資CF-)になるため、借入れが発生して財務CFがプラスになります。

企業経営がうまくいっていないケース

企業の状態低迷期
営業キャッシュフロー(CF)
投資キャッシュフロー(CF)
財務キャッシュフロー(CF)

営業活動による収支がマイナスで、そのマイナス分を新規借入れ(財務CF+)や設備投資の売却(投資CF+)によって補っています。

企業経営が窮地に立たされているケース

企業の状態衰退期
営業キャッシュフロー(CF)
投資キャッシュフロー(CF)
財務キャッシュフロー(CF)

営業活動から資金を得ることがが見込めなくなり、低迷期等に拵えた借入れの返済(財務CF-)に追われていることが予想されます。事業撤退をも検討し、設備投資の売却を行うことから投資CFはプラスです。

キャッシュフロー計算書と連結キャッシュフロー計算書との違い

連結キャッシュフロー計算書とは、キャッシュフロー計算書のグループ会社ver.です。グループ企業の一会計期間のキャッシュフロー(CF)を表します。

「原則法」「簡便法」のいずれかによって作成し、キャッシュフロー計算書と同じく「営業CF・投資CF・財務CF」からなります。

一企業単位でも、グループ会社単位でも、経営に必要な資金を把握しておくのは重要と言うことですね。

キャッシュフロー経営で経営状況の安定をめざそう

キャッシュフロー経営とは、現金等を増やすことに力点をおいた経営方法です。これを利用することにより、安定した企業経営を目指すことができます。なぜなら、手元資金が十分にあれば、経営に必要な支出が滞ることがないからです。

また、資金力があるということは、設備投資や人材確保、研究開発等に予算を配分しやすくなります。

加えて、資金がショートする可能性が低いということは、黒字倒産の可能性も低いです。取引先やステークホルダーからの信頼を得ることができます。

【まとめ】キャッシュフロー計算書の基本を押さえよう

いかがでしたでしょうか。キャッシュフロー計算書は、経営に必要な資金が充足しているか把握するのに役立ちます。非上場企業に作成の義務はありませんが、黒字倒産を避けるためにも作成する意義は大きい書類です。

経営分析にも活用できますので、自社の状況を把握しどのような経営方針を取るかの判断材料にもなります。

こちらの記事ではキャッシュフロー計算書の作成についてご紹介しています。是非、こちらの記事を参考にキャッシュフロー計算書を作成して企業の現金等の状況を把握していただき、皆様の企業経営に活かしていただければ幸いです。

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oneplus編集部

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