企業経営に透明性が求められる中、「アカウンタビリティ」という言葉も一般的になってきたのではないでしょうか。
今回の記事では、下記について紹介します。
- アカウンタビリティは、どのように使えば良いのか
- 「重要視される3つの理由」と「果たさない時のリスク」
- 社内に浸透・実現させていく方法
本記事を参考に、アカウンタビリティについての知識を深めましょう。
アカウンタビリティとは?
利害関係者に説明する義務を指している
アカウンタビリティとは、日本語では「説明責任」や「説明義務」と訳されることが多いです。つまり自社で行っている業務の詳細や現状について、取引先など外部の利害関係者に対して説明する義務があることを意味します。
元は会計用語で、経営者が経営状況や財務内容を株主に対して報告する義務を意味する言葉でした。現在ではそこから派生して、抱えている課題に対する改善策の提示、今後の事業方針等を含める場合もあります。利害関係者に会社の現状や進むべき方向性について理解してもらう、経営活動の大切な一部です。
説明責任の他にも使われるアカウンタビリティの意味
実は、企業の現状等を説明する「説明責任」の意味だけで使われるわけではありません。何か問題や課題が発覚した時には、単にその詳細を説明するだけではなく、例えば「再発を防ぐために行うべきこと」「課題を克服するための具体的なアクション」等の未来の対策を示す言葉としても使われます。
「説明責任を果たすのは当たり前であり、今後どう対応していくかまでを利害関係者に話して納得してもらうことまでを意味する」と、認識しておいたほうがいいかもしれません。
アカウンタビリティの使い方は?例文で解説
ここまで意味について紹介してきましたが、実際にどのような場面で使われるのか、例文で確認していきましょう。
- 今回の企業の対応では、アカウンタビリティが果たされているとは到底言えない。
- 経営者の重要な仕事のひとつに、アカウンタビリティがある。
- アカウンタビリティを積極的に行ってこそ、消費者からの信頼を得られるのではないか。
「説明責任」の意味だけではなく、会社としての経営姿勢、そして今後の対応策等も含めた使い方をするのが一般的になっています。
言葉の似ている「レスポンシビリティ」では責任の対象に違いがある
アカウンタビリティと似た言葉として、レスポンシビリティがあります。どちらも「責任」という意味で使われますが、その対象に違いがあるのです。
- アカウンタビリティ
実行を約束したことを達成できたか、その成果に対する責任 - レスポンシビリティ
実施を決めたことを実際に実行に移せているかという「実行」に対する責任
責任の対象を考えると、「成果に対する責任」は「実行に対する責任」の後に生じることになります。
アカウンタビリティが重要視されるのはなぜ?3つの理由を解説
企業経営の透明性が求められているため
大手企業による利益操作等の不祥事が度重なって発覚したことにより、企業には透明性のある経営が求められるようになってきています。株主等の社外の利害関係者に適切な情報開示を行うことで企業への理解も深まり、長期間に渡る株式保有へと繋げることも可能になるかもしれません。
外部関係者との信頼関係を構築することは、企業の成長へと繋がるでしょう。経営の透明性を高めることは、企業にとっても利害関係者にとってもメリットとなるのです。
健全な企業組織の構築ができるため
アカウンタビリティは法人(会社)だけのものではなく、個人(従業員)も行うべきものです。例えば、社内での上司・部下の関係性の中でもしっかり行われるような組織を構築していくことが、企業風土として培われていきます。
社内の体制が整っているからこそ、企業のトップである経営者は社外の利害関係者に向けて、堂々と説明責任を果たすことができるようになるでしょう。
人事評価が成果主義に変わってきたため
人事評価の仕方が、これまでの「年功序列型」から「成果主義」へと変わりつつあります。成果主義では個人の仕事での成果を元に評価が下されるので、社員一人ひとりの業務上の役割や責任が今まで以上に明確にされるようになってきました。
このことはつまり、社員一人ひとりが、会社や同僚たちに対してアカウンタビリティを負うようになってきたことを意味します。成果主義においては、個人が会社のような存在として行動することが重要になるでしょう。
アカウンタビリティを果たさない企業に起きうるリスク
法律違反の可能性
株式会社であるならば、非上場会社であっても決算公告を行うことは会社法によって義務付けられています。つまり情報開示を行っていない企業は、法律違反を犯している可能性があるのです。
加えて、上場企業であれば金融商品取引法により、有価証券報告書等の提出も行わなければなりません。
会社の規模等によってどこまで情報開示を行う義務があるかは異なってきますが、自社の開示義務の範囲を把握しておくことはとても重要です。
資金調達が難航する
上場企業はもちろん、資金調達を行いたいベンチャー企業にとって資金調達が難航してしまうかもしれません。
なぜなら、投資家は企業から開示されるさまざまな情報を元にして、投資するべきかどうかを判断しているからです。アカウンタビリティを果たしていない企業に対して、積極的に投資を行うことはないでしょう。
また単に情報を開示すれば良いというスタンスではなく、投資家が出資を判断するために必要な情報を提供していくことが重要です。それが投資家から信頼を得ることになり、企業のさらなる成長へと繋がっていくでしょう。
ネガティブな形で報道される
情報を開示しないと、投資家をはじめとした外部関係者とのコミュニケーションの機会が減ります。企業から直接の提供がなければ、情報を必要とする方々は憶測で判断したり、話をしなければいけなくなってしまうでしょう。
もしそれがネガティブな形で報道された場合は、本来であれば行う必要のない火消しや、追加で正しい情報の開示を行わなくてはいけません。またネガティブな話は広まりやすいため、最悪な場合は倒産へと繋がってしまう可能性も出てきてしまいます。
アカウンタビリティを社内に浸透・実現させる方法
ステークホルダーを明確にする
情報の開示を行う場合は、必ず相手(=ステークホルダー)が存在します。株主、従業員、お客様等、状況によって変わってくるはずです。まずステークホルダーを明確にすることによって、開示するべき情報が何であるかも定まってくるでしょう。
どのような情報が必要なのかを考えることは、アカウンタビリティを社内に浸透させるために役立ちます。また一歩進んで「なぜ情報開示が必要なのか」を明文化して周知させることで、情報の見せ方の幅が広がっていくかもしれません。
社員にもアカウンタビリティの重要性を説明する
会社全体に浸透させるためには、まずは社員一人ひとりに重要性を説明していかなくてはなりません。理解してもらえた社員が少しずつ増えていくことで、会社全体に広めていくことができます。特定の社員だけ、経営層だけに求められているわけではないことを、何度も伝えていくことが重要です。
目標・行動計画・リスク対策を決める
目標と行動計画を定め、実際にアクションを起こしてみるのも手です。
どのように進めていけば良いか、ステップを紹介します。
- 目標の設定
「アカウンタビリティが社内に浸透した」と言える、客観的に判断できる数値目標を定めましょう。 - 目標達成のための行動計画を考える
行動計画を練る際に、「担当者または責任者」「最終期限」「各担当者(責任者)が行うべきこと」の3つを決めましょう。 - リスクを想定し、対策を考える
何か起きてから対策を考えるようでは、後手になってしまうかもしれません。ある程度は事前にリスクを想定し、素早く対応できるように準備しておきましょう。 - 1〜3を繰り返す
3まで決まったら、実際にアクションを起こしてみましょう。マイルストーンを設定し、都度それまでの振り返りを行い、気付いたことをまた計画に盛り込んでいきます。改善を繰り返していくことで、より実現可能性の高い計画になっていくはずです。
社員一人ひとりに実行の確認と適正な評価をする
社員一人ひとりが自らの業務の中で、適切にアカウンタビリティを果たせているかどうか、確認と適正な評価ができる体制を整えることが重要です。社員によって業務は異なるので、まずはその中で行える内容を考え、実行してもらいます。
実際に行動することで理解も深まるでしょうし、適正な評価を続けることで意識せずとも行えるようになっていくでしょう。
もし自社で評価をするのが難しい場合は、人事評価システムの導入を考えてみても良いかもしれません。
計画を定期的に見直す
計画は一度立てたら終わりではありません。実際に行動してみて気付くことも出てくるでしょうし、定期的に見直すことが大切です。改善点が見つかったら都度計画に盛り込むことで、より良い計画になっていくでしょう。
アカウンタビリティを果たす
上場企業であればCSR報告書等の定期的に公開していく資料や、株主総会、必要に応じて記者会見等があります。義務付けられているものはもちろんですが、望まれていると感じる手段があれば、規模の大小にかかわらず行ってみるのが良いでしょう。そこからまた新しい発見があるはずです。
何から行っていいかわからない場合は、まずはホームページでの情報発信から始めてみるのも良いかもしれません。
ステークホルダーからフィードバックをもらう
アカウンタビリティを果たせているかどうかは、情報の受け手であるステークホルダーが決めることです。一方的に伝えれば良いものではありません。フィードバックを受ける機会を持ち、そこで聞いた意見を参考に改善を繰り返していきましょう。
業種別のアカウンタビリティ
医療・看護におけるアカウンタビリティ
医療・看護においては、例えば「なぜ治療や検査が必要であるのか」「どのような治療が行われるのか」「治療結果が出たら、どう改善されたのか」等を、分かりやすく伝えることが該当します。その際は患者の立場に立って、専門用語を使わない等の配慮も必要になってくるでしょう。
またインフォームドコンセントと混同してしまいがちですが、こちらは治療方針等について「同意してもらう」ことを目的としているので別物です。
教育・福祉におけるアカウンタビリティ
教育・福祉においては、あらゆる相手に対しての説明責任が求められるでしょう。
教育分野でいえば、学校に通う子供たちはもちろん、子供を育てているご両親や家族、子供たちを見守る地域社会等が当てはまります。
また福祉分野では、介護等を行っている施設だけではなく、それを支える地域社会への説明責任も果たすべきです。
透明性の高い企業経営を財務・経理の面から進めるならoneplat
外部に対して透明性の高い説明責任を果たすため、まずは社内で行われる財務や経理面の仕事に透明性が求められるのではないでしょうか。
スムーズに実行していくためにシステムを導入することはひとつの手ですが、中でもオススメなのがoneplatです。
oneplatを活用すると、日々の費用が日次で把握することができるようになるのに加えて以下のようなことが可能になります。
- 納品書や請求書の承認履歴が残る
- 納品書や請求書の削除・変更履歴が残る
- ログイン履歴が残る
こうした改ざんされやすい箇所からまず着手し、できるところから透明性の向上に努めてみるのはいかがでしょうか。
まとめ
自社への信頼感を高め、安心して取引や投資をしてもらえる企業になるため、アカウンタビリティは欠かせないでしょう。
- 「現在は企業経営に透明性が求められる」「終身雇用から成果主義への変遷」等によって、アカウンタビリティは重要視されるようになってきた。
- アカウンタビリティを果たさずにいると、資金調達が難しくなったり、企業イメージを損なう報道がされてしまうリスクが生じる。
- 目標と行動計画を策定したら実行し、適宜見直しながら改善を繰り返していく。
- 納品書や請求書を改ざんできない環境にするなど、システム導入でできるところから始めていくのがオススメである。
しっかりと理解し、透明性の高い企業経営を目指していきましょう。