わかりやすい棚卸資産の解説|意味から評価方法、利益との関係まで

企業会計において重要な役割を持つものに「棚卸資産」があります。
企業の利益とも結びついており、現在保有している商品の在庫等、保有する資産を適切に管理することで健全な経営を行うことが可能です。

今回はそんな棚卸資産の意味や貸借対照表での位置づけ、評価方法について分かりやすく説明していきますので是非最後までご覧ください。

棚卸資産とは?意味と貸借対照表での位置づけを解説

意味|棚卸資産とは「在庫」ととらえるとわかりやすい

棚卸資産とは、企業が販売するために保有している商品等をさします。
商品等とは、他社から仕入れた物や自社で製造した製品や仕掛品、原材料、貯蔵品等様々です。

また、後述しますが棚卸資産は商品等の種類によってそれぞれ違う基準と方法で評価されます。
複雑かもしれませんが、わかりやすく説明すると企業が持っている在庫というイメージです。

棚卸資産は仕入(費用)を減算しながら計上する|仕訳の例

棚卸資産はまだ販売されておらず、会社の中にとどまっている状態です。
簿記上では仕入れたものはいったん費用に計上しますが、この様なまだ収益を上げずに保有したままの棚卸資産については決算時に在庫として残った分について、仕入を減らし資産として計上することが求められます。

以下が仕訳の例です。

100万円分仕入れた商品の内、10万円分が会社に残っている場合

■仕入時
 仕入 1,000,000  /  現金 1,000,000

■棚卸資産計上時
 棚卸資産 100,000 / 仕入 100,000

棚卸資産は貸借対照表の「流動資産」に位置付けられる

貸借対照表は左側が資産、右側が負債・純資産というように分かれており棚卸資産は資産に分類され、さらにその資産の中の流動資産という位置付けがされています。
流動資産とは、現金預金、売掛金、 棚卸資産、前渡し金、前払い金等、一年以内に現金化することが可能な流動性の高い資産です。

逆に建物や土地等、通常一年以内に現金化しない流動性が低いものを固定資産といいます。  

棚卸資産に該当する勘定科目・5つ

1.商品・製品|販売できる状態のもの

商品と製品は同じ意味の様に聞こえますが明確に違いがあります。
以下が商品と製品の違いです。

  • 商品・・・加工せずにそのまま販売することを目的として持っているもの
  • 製品・・・自社で加工したもの等、製造された品物

例を用いて説明すると、例えばスーパーに並んでいる野菜は商品に分類されますが、それを自社で加工したサラダや総菜等は製品になります。
ちなみに、商品はソフトウエア(プログラム)等、無形のものも含まれます。

2.半製品|ほぼ完成品だが販売には至っていないもの

半製品は製品が生産されるまでの工程が完全には完了していない中間的製品の事です。
同じ意味で使われる用語に仕掛品がありますが、半製品は加工が一定まで終了しており外部に販売もしているものを表します。

例えば、ペットボトルに飲み物は入っているがラベルは貼っていない状態としても販売しているものが半製品にあたります。

3.仕掛品|原材料を加工し始めて完成まで途中になっているもの

仕掛品は販売目的で製造している製品の内、製造途中で未完成の製品をいいます。
先ほど紹介した半製品との違いは、外部に販売できるかどうかです。
仕掛品はまだ加工を加えなければならず、そのままの状態では製品として外部に販売することができないものがこれにあたります。

例えば、パンの生地やモニターが組み込まれていないパソコン等が仕掛品です。
また、形のある物だけでなくテストが完了していないPCソフトの様な無形の製品も仕掛品に含まれます。
仕掛品は工場で製造途中のものだけを意味するのではなく、販売できる状態になっていないものすべてが対象です。

4.原材料|仕入れて加工していないもの

原材料は製品を製造するのを目的として消費されるもので、まだ消費されてないものです。
また、原材料は原料と材料に分類されます。原料は素材の原形を留めていないもので、材料は素材の原形を留めているものです。

また、以下の基準に則り、直接材料費と間接材料費に分ける必要があります。

  • 直接材料費・・・何の商品に使うか明確で、主要な材料になるもの
  • 間接材料費・・・何に使用するか明確に区別できない補助的に使用される材料

5.貯蔵品|事務用品等の消耗品のうち使いきれなかったもの

貯蔵品は消耗品が残ったときや未使用の固定資産を除却する際に使用する勘定科目です。
使いきれなかった消耗品には、ボールペンや消しゴムの様な文房具、プリンターのインク等の事務用品から収入印紙や切手、新幹線の回数券等の金銭的価値があるもの、封筒や段ボール、ガムテープ等荷物を送るときに使うものも含まれます。
さらに、会社のパンフレットのような販促品も貯蔵品に該当します。

棚卸資産は取得時に取得原価を決める

棚卸資産は取得時に購入した金額に副費(付随費用)を足します。
なお、副費には「外部副費」と「内部副費」の2種類あり以下のように分類できます。

  • 外部副費・・・引取運賃や手数料等、購入してから受け取るまでに掛かる費用
  • 内部副費・・・購入事務費や検証費等、商品を受け取った後にかかる費用

この内、取得原価にみなせる副費は費用収益対応の原則に基づき定められています。
また、自社で生産した製品を棚卸資産として保有する場合は、取得原価は適正な原価計算に基づいて出された金額としましょう。

棚卸資産は決算時に期末評価と実地棚卸を行う

棚卸資産は在庫の数が帳簿の数と一致しているか確認するために、決算時に実地棚卸を行います。
実地棚卸を行う目的は大きく3つあり、ひとつ目は利益を確定するためです。
決算時に実地棚卸を行うことで、在庫の数を把握して正しい利益を確定することができます。

2つ目は在庫の状態を確認するためです。
実地棚卸では在庫を実際に数える事で状態も確認することができ、管理状態が悪いものを把握できます。

3つ目は内部統制です。
理論値の在庫と実際の在庫を照らし合わせることで不正を発見し、発生を抑制する効果があります。
また、棚卸資産は売上原価を算出するために 期末評価を行う必要があります。

実地棚卸ついてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。

>>実地棚卸とは? 実施時期や目的・やり方を流れに沿って紹介!





棚卸資産の評価方法を理解しよう

棚卸資産の評価方法は大まかに「低価法」「原価法」の2種類がある

棚卸資産は期末に売上原価を算出するための評価を行います。
その評価方法は「低価法」、「原価法」の2種類に分類されますが、どちらを選択するかは企業によって変わってきます。

それぞれ評価の方法が異なり算出される金額も異なりますので、正しく理解しない場合は納める税金が高くなることにもつながりかねません。それぞれの違いやメリットを知り自社にとって最適な方法を把握しましょう。

「低価法」:取得時と決算時の原価を比較して低い額を用いる方法

「低価法」は資産の取得原価と時価を比較し、どちらか低い方の価額を棚卸資産の評価額とする評価方法です。資産の価格が下がった場合は評価損として費用計上することができるので、利益が圧縮されて法人税の金額を減らす事ができます。

また、低価法には「切放法」と「洗替法」の2種類が存在しています。

「原価法」:取得時の原価を用いる方法|取得原価の求め方6種類

「原価法」は仕入の取得原価を基準にして評価を行う方法です。
低価法よりも原価法のほうが棚卸資産の評価方法として一般的であり、取得原価の計算は「売価還元法」、「個別法」、「先入先出法」、「総平均法」、「移動平均法」、「最終仕入原価法」の合計6つの評価方法がありこの中から自社にとって最適なものを選択します。

後述しますが、上場企業等を除き税務署で何も手続きを行わなければ棚卸資産の評価方法は原価法になり確定申告も原価法で行わなければならないので、低価法を選択したい場合は注意が必要です。

様々な計算の方法がありますが、以下で各計算方法の解説をしていきます。

1.売価還元法

「売価還元法」とは棚卸資産の中で種類が近いものをグループに分け、期末時点の販売合計金額に原価率を掛けた金額で評価する方法です。

この計算方法は、商品毎の原価を調べるのが困難であり取り扱い商品の数が膨大なスーパーやコンビニ等で便利に使用することができます。
しかしデメリットとして、棚卸資産を種類毎にグループ分けする作業が負担になるということが挙げられます。

2.個別法

「個別法」は棚卸資産を個別に評価する計算方法です。個別性が強い貴金属や宝石、自動車や不動産等、高価なものや棚卸資産の評価に適している評価方法です。

しかし、ひとつひとつ個別に在庫を管理するため、手間がかかります。
この評価方法は受入と払出を対応させるので一番正確な評価方法とも言われています。

3.先入先出法

「先入先出法」は仕入れたものを古い順から販売するということを前提として考え評価する計算方法です。先に仕入れたものから販売するため、新しく仕入れた資産の単価が期末の棚卸資産に反映されます。
そのため、物価が下がっている時期には、先入先出法を用いると利益が低くなります。

この方法は、古いものから順に売るという考え方がベースです。そのため、実際の商品の流れに最も近い方法となり、合理的な計算方法と言えるでしょう。ちなみにこの評価方法は消費期限や賞味期限が設定されている食品を扱う事業の在庫管理の方法として利用されていることが多いです。

4.総平均法

総平均法は期首に保有している資産の金額・個数と期中に取得した資産の金額・個数を加算し、資産の合計金額を合計の個数で割った金額を在庫の単価とする方法で、その単価に在庫数をかけた金額を取得原価にする評価方法です。

計算が分かりやすいことがメリットですが、期中における全ての仕入れが終わるまで計算ができないというデメリットがあります。

5.移動平均法

移動平均法は在庫が増減する度にその時の資産の平均単価を計算し、出された金額を取得原価とする評価方法です。

在庫の数が変わるたびに計算するので常時、棚卸資産の評価額を把握できるメリットがありますが、毎回計算を行うので回数が増えると計算が大変になり、担当者の業務量が増えるというデメリットもあります。

6.最終仕入原価法

最終仕入原価法は評価方法の中でも一番簡単でわかりやすい方法で、取得原価は最も期末に近い状況で行った仕入の単価に数量をかけたものが取得原価になります。

計算が簡単である一方、期末まで評価額を出すことはできません。またこの評価方法は税法上では認められていますが、企業会計上は評価方法として認められておらず、有価証券報告書の提出が義務の上場企業等では選択することができない方法です。

棚卸資産の評価方法を決めたら税務署への届け出が必要

企業は棚卸資産の評価方法をどれにしたか所轄の税務署に持参・郵送で提出しなければなりません。
なお、提出には期限があり、企業を設立した第一期目の確定申告書の提出期限と同じ日が期限になります。

届け出を行わなかった場合は、棚卸資産の評価方法は最終仕入原価法が選ばれてしまい他の評価方法の選択が一切容認されなくなります。
企業の利益と棚卸資産の評価方法は結びついているので、届け出が必要な場合は期限内の提出が必須になります。

棚卸資産は利益に関係する重要なもの

実地棚卸は企業が取り扱っている商品が多くなれば多くなるほど、時間も労力も掛かる大がかりで地道な作業になります。
そんなにも手間がかかる作業を何のために行うのかというと、それは企業の利益を正しく確定させるためです。

棚卸資産は評価方法により価額が変動するので、企業の利益に大きな影響を及ぼします。
実地棚卸を間違えると企業は利益を正しく求めることができなくなり、納税額を間違えてしまうことにつながりかねません。
税務調査で納税額の間違いが発覚した場合は、不納付加算税、延滞税を追加で納めることになるので最大限に注意しましょう。

まとめ

今回は棚卸資産の意味とその評価方法について解説しました。
棚卸資産は企業にとって利益に大きく影響を及ぼす要素のひとつです。
様々な評価方法がありますが、その中でどの評価方法が自社にとって最適なのかを把握し、運用していくことが経営においても重要になります。

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oneplus編集部

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