【電子印鑑で手間とコストをカット】導入メリットや注意点を詳しく解説

長年ビジネスシーンと、切っても切り離せない日本の印鑑文化。

皆さんの職場では、承認作業や契約書等に必要な押印作業をどのように行っていますか?

まだ印刷した書類に直接印鑑を押印している企業が多くある一方、近年耳にする機会が増えてきているのが「電子印鑑」です。

従来の印鑑押印や、手書きサインという承認方法があるにも関わらず、電子印鑑が急速に普及してきているのはどうしてなのでしょうか。

理由として、平成17年4月1日より「e文章法」が施行され、印鑑を取り巻く環境が大きく変化したことが挙げられます。

「e文章法」では書類の電子化が推奨され、条件付きではありますが、電子印鑑が従来の印鑑と同じように通用することが法的に認められるようになりました。

これにより書類の電子化が進み、承認方法も従来の印鑑から電子印鑑にシフトしていくことが予想されます。

まだ電子印鑑に馴染みのない場合は

「電子印鑑ってセキュリティ面は大丈夫なの?」
「電子印鑑を導入するメリットは?」

等、疑問を感じる方もいるのではないでしょうか。

この記事では「そもそも電子印鑑とはどんなものなのか」また、「電子印鑑の使用方法やメリット、注意点」を詳しく解説します。

今後、仕事やプライベートでも電子印鑑が必須になってくると考えられますので、事前に正しい認識を持っておくといいでしょう。

電子印鑑とは

電子印鑑とは、文字通り電子化された印鑑のことで、作成した書類に直接押印する事を可能としたシステムです。

近年、インターネットが普及したこともありFAX、郵便等に代わり、PCを使った電子メールやWEB上でのやりとりが頻繁に行われるようになりました。

電子メールやWEB上でのやりとりは、PCやタブレット等の端末とインターネット環境さえあれば、どこにいても行えるという利点があります。

また、郵便のように届くまでに時間がかからないという理由から、見積書や請求書等の重要書類を、電子メールやWEB上で相手先に送付する企業が増えてきています。

このように、インターネットを利用した取引に影響を受け注目されはじめたのが「電子印鑑」です。

例えば、電子印鑑を使用しない場合は一度印刷した書類に押印し、書類をスキャンしてPDFファイルに電子化してから封入発送という幾つもの工程を踏まなくてはいけません。

このような書類を紙媒体にして印鑑を押す作業を、面倒だと感じている方も多いのではないでしょうか。

そんな時、電子印鑑を使用すれば、作成した書類に直接電子印鑑のデータを貼り付けることですべてが完結してしまうのです。

印刷をして押印、スキャンして封入発送するという工程が一気に省略できるので、業務効率が格段に上がり企業にとって大きなメリットとなります。

また、印鑑の紛失や破損の心配もいらないというのも電子印鑑の良い点です。

電子印鑑の種類

電子印鑑は大きく分けて

  • 印影を画像化したもの
  • 印影に識別情報が登録されたもの

上記の2種類があります。

どちらの電子印鑑であるかによって、「セキュリティ」「法的効力」が異なりますので、導入する場合は用途に合わせて使い分ける必要があります。

それでは、それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。

【種類1:印影を画像化したもの】

印影を画像化した電子印鑑は、簡単に作ることができコストもかからないというメリットがあります。

作成するには、実際に印鑑を押印したものをスキャナで取り込み書類に貼り付ける、無料ソフトのテンプレートを使って作成する等、幾つかの方法があります。

ただし、単に印影を画像化しただけの電子印鑑は誰にでも簡単に偽造することができ、セキュリティ面において問題があります。

そのため本人が押印したと証明する効力も低く、「電子署名法」の条件も満たしていないことから法的な電子印鑑として使うには向いていないと言えるでしょう。

認印としての使用や、社内でのデータ書類閲覧確認用等の用途で使う場合は手軽に導入でき便利です。

【種類2:印影に識別情報が保存されたもの】

もう一つは、印影に識別情報が保存されている電子印鑑です。

識別情報が保存されている場合は、「いつ」「どこで」「誰が」押印したものか証明することができます。

このタイプの電子印鑑であれば「電子署名法」の要件を満たしており、契約書や請求書といった重要書類、社外文書に使用することが可能です。

デメリットとしては、主に有料ソフト等で作成するので、導入にコストがかかるということが挙げられます。

電子印鑑についてデジタル署名 デジタルサインとの違い

電子印鑑のほかに「デジタル署名」、「デジタルサイン(電子サイン)」といった用語も存在します。

この両者はいずれも明確に意味を定義された言葉ではないため、人によって使い方が微妙に違う場合もあり、見極めが難しいところです。

一般的にデジタル署名は、公開鍵暗号方式を応用したセキュリティ機能の高い電子署名のことを指します。

一方デジタルサイン(電子サイン)は、同意や本人証明を電子上で行うという広い意味を持った総称で、前述のデジタル署名もその一部です。

また、荷物の受け取りやクレジットカード決済時にタッチペン等で署名することをデジタルサインと呼んでいる場合もあります。

電子印鑑の作成方法

電子印鑑を作る方法は幾つかありますが、主なものはこちらです。

  • スキャンして作る
  • 無料ソフトを使って作る
  • Excel、Wordを使って作る
  • 有料ソフトやWEBサービスを使って作る

順に説明します。

方法1:スキャンして作る

まずは、実際に押印した印影をスキャンして取り込み電子印鑑を作る方法です。

手順は以下の通りです。

1.白い紙に押印する

普段使っている印鑑や、会社オリジナルの角印の印影をそのまま再現して使うことができます。

加工しやすいように、白い紙に印影がはっきり写るように押すことがポイントです。

2.スキャナーで取り込む

紙に押印した印影をスキャナーを使って取り込みます。

3.Excelで加工

スキャンした画像をExcelに取り込みます。

挿入タブの「画像」内から「画像をファイルから挿入」をクリックし、印鑑の印影を選択する。

4.余白のトリミングと背景の透過

「図の書式設定」内の「トリミング」をクリックし、画像の不要な余白を切り取ります。

次に画像を選択し、ツールバーの「図形の書式設定」から「背景の削除」をクリックしてください。

透過される箇所は紫色に表示されますので調整して「変更を保持」をクリックすれば完成です。

方法2:無料ソフトを使って作る

手軽に電子印鑑を作成したい場合は無料ソフトがおすすめです。

無料と聞くと簡素な印鑑を想像しますが、

  • 代理印
  • 日付印
  • 丸印
  • 角印

等、様々な種類の電子印鑑を作成することが可能です。

また、無料ソフトの中にはスキャナで読み込んだ印影を画像透過したり、日付等を挿入する機能が備わっているものもあります。

Excel、Wordを使って作る

 ExcelやWordでも電子印鑑を作成することができます。

手順は以下の通りです。

1.円の図を挿入する

挿入タブの「図」をクリックして円を挿入する。

この時、赤色の枠線を選択しましょう。

2.円の塗りつぶしを枠線だけに変更する

「塗りつぶしなし」をクリックして、円の枠線だけ残す。

これが印鑑の外枠になります。

3.名字を挿入

印鑑に入れたい名字等を赤色のテキストで挿入する。

通常横書き設定になっているので、「レイアウト」タブの「テキストの方向」をクリックして縦書きに変更しましょう。

4.図として保存

「図として保存」をクリックして保存します。

保存が完了すれば、押印したい書類に簡単に貼り付けることができます。

有料ソフトやWEBサービスを使って作る

識別情報やタイムスタンプが保存されているタイプの電子印鑑は、WEB上のサービスまたは有料ソフトを利用して作ります。

コストはかかりますが真正性が高く、セキュリティ面で安心な電子印鑑が作成できますので、重要な書類にも使用したい場合はこちらのタイプの電子印鑑を作成しましょう。

電子印鑑の有効性

従来の印鑑に法的効力がある理由

まず、印鑑の基本的な知識をおさらいしておきます。

一般的に印鑑は

  • 認印
  • 実印

の2種類に分けられます。

認印は届出をしていない個人の印鑑のことで、実印は市町村や法務局に印影を届け出し、印鑑登録が済んでいる印鑑のことをいいます。

従来の印鑑は、民事訴訟法第228条4項によってその法的な効力が認められています。

この項目では、「私文書は、本人またはその代理人の署名または押印があるときは、真正に成立したものと推定する」とされており、文書に印鑑を押印すると法的な効力を持つということが明示されています。

印鑑登録を済ませている実印は公的に本人である証明をしてくれますが、認印ではそのような証明の仕組みがなく、実印よりも法的な効力は低くなります。

電子印鑑の法的効力

平成17年4月1日から「e文章法」が施行され、

  • 見積書
  • 納品書
  • 請求書
  • 注文書
  • 領収書
  • 振込伝
  • 契約書

等のビジネス書類が電子化可能となりました。

それに伴い電子印鑑を登録し、電子証明書を発行することで電子印鑑も法的な効力を認められるようになったのです。

電子証明書とは、指定された認証局で発行することができ「本人が作成したものである」と立証することができる、いわば電子版の印鑑登録証明書のようなものです。

ここで注意したいのは、従来の実印と比べ同じような法的効力は持つが、「全く同等」ではないということです。

例えば不動産登記等実印が必要とされる場合は、電子印鑑を使用することはできません。

また、引っ越しの賃貸契約や不動産売買、遺産相続、保険金の受領や放棄といった際に、印鑑登録証明書の提出が必須な場合があり、電子証明書を取得していたとしても電子印鑑で代用することはできないのです。

「目の前で印鑑を押す」という行為が重要視されてきた日本の文化は根強く、現段階では印鑑証明のある実印より、電子証明のある電子印鑑の方が法的効力はやや劣ると言っていいのではないでしょうか。

ただ、電子印鑑が普及していく中で、現在使用ができない用途にも徐々に対応していくのではないかと予想されます。

電子印鑑を使用する際の注意点

電子印鑑を使用する上での主な注意点は以下の通りです。

  • 取引先が電子印鑑に対応していない場合がある
  • 用途によって使い分ける必要がある
  • セキュリティ面

順に解説します。

注意点1:取引先が電子印鑑に対応していない場合がある

まず、書類を電子化し電子印鑑を使用する上で1番先に確認しなくてはいけないのは、取引先の受け入れ体制です。

「e文章法」が施行により書類を電子化する流れになってきてはいますが、依然としてビジネスシーンでは、紙媒体の書類を利用するスタイルが主流でしょう。

確認が不十分だった場合は、取引先が電子化した書類を受け取ることができないといったトラブルも起こり得ます。

このことから、書類の電子化とそれに伴う電子印鑑の使用には事前に取引先の許可を得なければなりません。

用途によって使い分ける必要がある

電子印鑑には、「印影を画像化した電子印鑑」と「印影に識別情報が保存された電子印鑑」の2種類があり、それぞれの用途を理解して使い分けることが必要です。

「印影を画像化した電子印鑑」は、あくまで印鑑の印影をスキャン等簡単な手法を用いて画像化したものです。

不特定多数の人が同じ電子印鑑を複製することができるため、社内資料のサインや認印等の役割として使用しましょう。

一方、「印影に識別情報が保存された電子印鑑」は印影データに印鑑の持ち主やタイムスタンプ情報が組み込まれて作成されています。そのため安全性の高い電子印鑑に位置づけられており、実印として電子印鑑証明を発行することが可能な電子印鑑です。

セキュリティ面

企業が電子印鑑を導入する場合は、重要になってくるのがセキュリティ面ですよね。

セキュリティの安全性を重視するのであれば、印影に識別情報が保存されたタイプの電子印鑑を導入する必要があります。

印影に識別情報が保存されたタイプの電子印鑑は、認証局が本人である証明を担保してくれる「電子証明書」という書類を発行することができ、高いセキュリティを持っていると言えるからです。

また、一度押印をすると後から書類の操作ができなくなる機能が備わったものもあります。

契約書や請求書等の重要書類が不正操作されるリスクを回避するためには導入に多少コストはかかりますが、有料の印影に識別情報が保存されたタイプの電子印鑑を採用するよう注意してください。

企業が電子印鑑を導入するメリット

電子印鑑を導入する主なメリットは以下の通りです。

  • 書類のペーパーレス化で大幅なコスト削減
  • 書類管理のスマート化
  • 書類の承認時間短縮
  • リモートワークの最適化

順に解説します。

書類のペーパーレス化で大幅なコスト削減

従来の印鑑を使った書類管理では、プリントアウトした書類に押印し、スキャンして電子化していました。

電子印鑑を採用すれば、そのまま電子化した書類に印鑑画像を貼り付けることができ、業務効率はもちろん大幅なコスト削減が可能です。

具体的には、書類の印刷をする必要がなくなることにより、紙とインク代の削減、書類を送付するコストが不要になります。

また、領収書等の印紙税も書類の電子化をすれば不要になり、コスト管理を見直したい企業にはメリットだらけと言えるのではないでしょうか。

書類管理のスマート化

電子印鑑を使って書類を電子化するメリットはコストだけではありません。

紙の書類を利用した時、一番問題になってくるのが保管スペースを確保しなくてはならないということです。

実は、紙の書類保管期間は経理・税務関係は7年、総務・庶務関係は10年というように法律で長期保管が義務付けられているのをご存じでしょうか。

保存義務のある書類は、請求書や契約書等にはじまりその種類は多岐に渡ります。

書類を電子化し従来の印鑑ではなく電子印鑑を採用すれば、保管場所に困る必要はありません。

それに加え、必要な書類を探すときは検索機能で誰でも簡単にアクセスできるというメリットもあります。

書類の承認時間短縮

紙に押印する従来の印鑑では、書類送付や回覧書類等に時間がかかっていました。

電子印鑑を使えば、それらにかかっていた時間を短縮することができます。

例えば、会社にいない出張先の社員に押印をもらったり、取引先との急ぎ書類をスピーディに確認認証することが可能になります。

リモートワークの快適化

新型コロナウイルスの流行で注目されたリモートワークですが、その普及と比例して、書類にハンコを押すためだけに出社するいわゆる「ハンコ出社」が問題となっていることはご存じでしょうか?

リモートワークは仕事場が自宅になりますので、出社勤務に比べ直接書類のやり取りをするのが非常に困難です。

会社以外での押印作業に困った時は電子印鑑が活躍してくれます。

物理的な印鑑が手元に必要ないので、リモートワークの現場で電子印鑑は合理的と言えます。

ほかにも、複数の上司から印鑑が必要な場面でも、パソコン上から書類を確認してもらい、同時に押印をしてもらえるので業務効率がアップします。

電子印鑑を利用することで出社する必要はなくなり、リモートワークが推進できるというわけです。

リモートワークが定着すれば、感染対策だけではなく通勤時間の短縮や交通費の削減等にも繋がり働き方が多様化します。

電子印鑑についてまとめ

いかがでしたか?

日本では長年、目の前で印鑑を押す方法が根強く重要視されてきました。

ですが「e文章法」の施行とリモートワークという新しい生活スタイルに後押しされ、電子印鑑がビジネスシーンになくてはならない存在になりつつあります。

今後ビジネスにおいて電子印鑑の普及がさらに進んでくると予想されます。

コスト削減や、作業効率の面から見ても電子印鑑の導入は企業にとって大きなメリットです。

今後電子印鑑がスタンダードになる社会に備え、作成方法や法的効力を正しく理解しておきましょう。

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oneplus編集部

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