【株式会社圓窓 代表取締役 澤円氏 インタビュー】日本企業はDXを推進できるか!?〜マインドセットと具体的なアクション〜 #2 「自社に合った施策」こそが選択のポイントになる

DX(デジタルトランスフォーメーション)の定義は「IT技術を活用した変革」。つまり、デジタルによる変換でなく、「変革」というところに重要なカギがあります。さらに言えば、既存の価値観や枠組みを覆すような革新的なイノベーションをもたらすものであり、それゆえ経営者の意志や想いを抜きにして語ることができない変革と言えます。激動する経済状況にある今、その意味での日本のDXの現在地はどこにあるのか。日本マイクロソフト時代に多くのDX支援を手掛け、自ら代表を務める株式会社圓窓で数々の事業変革に携わる澤円氏に、DXを進める上で必要な経営者のマインド等について話を聞きました。

企業はDX推進による自社の商品やサービスの値上げを恐れるな

ここまではDXとは文字通り、デジタル化によるトランスフォーム、つまり業務のあり方自体を大きく変えていくことだと話しました。それを踏まえて言いたいのは、企業は自社の商品やサービスの値上げを恐れるな、ということです。
もちろん、ある程度は競争のなかで成り立つ価格づけをしないといけないのは商売の原則でしょう。けれども、そのために運用でカバーすることを過度に行う必要はないのです。運用に負荷をかけて無理をすることは、マーケットを不健全にしてしまいます。

この30年、日本はデフレのスパイラルにはまり続け、安くしないとモノが売れず、そのため企業の利益が増えずに、従業員の給料が上がらないという悪循環の中にありました。つねに安さを求め続けてモノの値段が上がらず、経済が活性化しない負のスパイラルです。
ですから日本の経営者は、臆せず値上げをしてほしいのです。ノンコア領域の効率化で時間とコスト減を生み出し、DXを進めてコア領域の変革を実現する。たとえ値段が高くても売れる価値を、自社の商材やサービスに新たに加えていくことが必要なのです。

日本マイクロソフト時代に経験した2つのDX事例

私が日本マイクロソフト時代に携わった、中小企業の印象的なDXの成功例を2つ紹介しましょう。
ひとつは、三重県の伊勢神宮の参道にある「ゑびや大食堂」で、土産物店や和食堂等の商業施設を営む創業100年の老舗です。売上が苦しく事業撤退も検討していたなか、デジタル化とDXを推進。店頭に定点カメラを据え、商店街の通行客数や来店客数を、画像解析カメラ・来客予測AI等で予測するシステムを構築し、あらゆる事業構造の変革に繋げて売上を4倍にしました。

また、新潟県三条市の小柳建設という会社は、建設や製造の作業を遠隔化できるアプリ「HoloLens」を共同開発する等、社員の働きやすさに繋がる環境構築を実現。従業員のエンゲージメントを高め、建設業の未来を変えていくプロダクトで全国的な注目を集める存在になりました。その結果受注増のほか、有能な人材が広く集まる成果を得ることに繋がったのです。

こうした企業に共通するのは、変えられないものはそのままに、逆に変えられるところは前例等にとらわれず、デジタライゼーションとDXで大胆に変革していったことです。
そこには、失敗を恐れない経営者の存在がありました。このマインドはとても大事で、失敗を失敗と捉えないチャレンジが事業変革の推進力となってきたわけです。

「できない方法」を数多く知ることで、成功への道は拓ける

発明王・エジソンの言葉に、「私は1万回失敗したのではない。1万通りのできない方法を見つけたのだ」がありますが、まさにこの考え方です。
正解と異なる結果を得ることはむしろ大事で、その過程に学びがあります。その経験があるからこそ、やがて成功が見つかる。そんなマインドをもつ経営者が増えたら、世の中は相当に面白くなると私は思います。

こうした変革によって得られる成果の一つに、先の2つの企業にも共通した「優秀な人材の獲得」があります。これから少子高齢化で労働力が減っていくなかで、質の高い採用はいっそう難しくなります。とくに中小企業はその波をまともにくらうために大変でしょう。
その反面、新しいテクノロジーをどんどん使う会社であれば、比例してふさわしい人材が来るようになるわけです。そして優秀な人が目の前に来たのなら、企業は後先考えずにまずは採用すること。これもまた、DXに向かう中での大事な第一歩と言えるかもしれませんね。

DXを推進する中でどのITツールを選択すればいいのか分からない

DXを推進する企業がつまずくポイントは何でしょうか。ひとつには、情報量が多過ぎることが挙げられます。とくに日本はITに関する商材が多く、たくさんのマーケティングメッセージが氾濫しています。そのため、どのITツールを選択すればいいのか分からないという状況が多々あるわけです。

導入対象となり得るITツールを比較するとき、スペックで比べても実は意味がありません。大事なのは自分に合っているか否かという視点であり、自分が良いと思うツールを選べばいいのです。
一般的な評価がそれほど高くなくても、自社には合うものならそれを選ぶのが正しいアクションでしょう。大事なのはスペックの比較ではなく、自社の環境や実現したいことにマッチしているかどうかだと言えます。

ただ、その際に問題なのが、自分へのフィット感を判断する基準がユーザー側にないことです。ではどうするかというと、最終的に「人」で選べばいい。このツールを入れたときに同時についてくる人は誰か?という視点で考えてみることです。
困った時に、「ある程度分かります」というのが一緒に組みたい人であれば、それを導入すれば良いし、親しい人がたまたま見合ったソリューション持っていたなら、それを導入してみれば良いのです。そして、そのテクノロジー領域を中心にDXを考えていくわけです。

DX推進におけるITツールの運用フェーズが軌道に乗れば、人的リソースはもはや必要ない

しかしそういった選定基準でツールを導入したときには “人依存”が懸念されますが、運用フェーズになると人的リソースは必要性が低くなるものです。そうして「人」も他のポジションに移っていくのです。

逆に日本企業はこの発想が薄く、人材流動性が低いためにDXの効果が最大化されていませんでした。
繰り返しますが、時間は有限であり、代替の効かない重要なリソースなのです。デジタルでできることはさっさと任せて手を離し、人が本来注力した方がいいコア領域で新たな価値を創造していく。このサイクルを回さなければ、ビジネスは決してスケールしないことを知ってほしいと思います。

経営者の皆さんには、何のITツールでもいいので、まずはさわってみてほしい。そして、得られた成功体験をどんどん人に教えて共有することが大事です。
体験を言葉にして、同じ中小企業の仲間でも、SNSでの繋がりでもいいのでとにかくアウトプットすると良い。自ら積極的に言語化することで知見をシェアし、DXのサイクルを軌道に乗せていってほしいですね。

■ 澤 円(さわ・まどか)
株式会社圓窓 代表取締役/元・日本マイクロソフト株式会社業務執行役員/武蔵野大学専任教員

立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年大手外資系IT企業に転職。情報共有系コンサルタントを経てプリセールスSEとなり、最新のITテクノロジーに関する情報発信の役割を担う。2006年よりマネジメントに職掌を転換し、ピープルマネジメントの実践も。直属の部下のマネジメントだけではなく、多くの社内外の人たちのメンタリングも幅広く手掛けている。数多くのイベントに登壇し、プレゼンテーションに関して毎回高い評価を獲得。2015年より、サイバー犯罪に関する対応チームにも参加し、2019年10月に、(株)圓窓 代表取締役に就任、企業に属しながら個人でも活動を行う「複業」のロールモデルとなるべく活動し、2020年8月に独立。また、美容業界やファッション業界の第一人者たちとのコラボも業界を超えて積極的に行っている。

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oneplus編集部

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