【株式会社デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長 鈴木康弘氏 インタビュー】DX推進における人材活用〜経営を合理化するDXの可能性とは〜 #3 DXの推進チームをどのように組み、変革をどう定着させるのか

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が頻繁に聞かれるようになった一方で、中小企業ではなかなかDXの導入が進まないと言われています。その理由のひとつに、推進する人材が不足していることが挙げられます。けれども、多くの経営者が「ITに長けたエンジニアがいない」「DXのスキルを持つ人材がいない」と嘆くなかで、真の理由には、DXに必要な人材の本質を見誤っていることがあるのかもしれません。そこで今回、ITと経営に精通し、デジタルシフトを目指す企業の支援で高い成果を導く鈴木康弘氏に、企業が理解すべきDX人材の育成や活用法について聞きました。

トップがDXに対して本気であるかどうかが重要

次に、DXを推進するなかで大事にすべき、社内における人材の登用や活用について考えてみましょう。
ただその前に、DXを行う上での絶対条件がひとつあります。それはひとえに、トップがDXに対して本気であるかどうかということ。DXは企業における変革ですから、トップが先頭に立って旗を振らないかぎり、絶対にうまくいきません。
手段であるテクノロジーについては、若い人のほうが感性も豊かであり、任せていくほうが良いでしょう。でもその前に、まずはトップの意識が本気であるかどうかが極めて重要なのです。

自分が本当に信頼できる人をDX推進のリーダーに据えるべき

その次が、組織体制の話です。DXの推進役には、本当の意味での変革のリーダーを任命しなくてはなりません。だからこそ社長は、自分が本当に信頼できる人をリーダーに据えるべき。もっと言えば、次の世代を任せられる人をリーダーにすることが肝要といえます。
そしてデジタルのことも分かっていて、DXが意味する変革について腹落ちしている人に任せることも重要です。もしもデジタルに長けた人材が社内にいなければ、外部の専門家をサポーターとして付けていくことを考えても良いと思います。

次に、DXを推進していくメンバーを選ぶ際には、私自身の実体験からも、絶対に立候補制で選任していくことをおすすめします。
よく、単に仕事のできる優秀な社員を社長命令で集めて行おうとするケースがありますが、多くの場合でうまくいきません。そうではなく、DXの戦略や具体的なアクションを説明し、それを聞いて「やってみたい」と手を挙げる人間を集めること。それが大事な極意だろうと思います。

加えて、複数の部署の中からバランス良く人材をチョイスすることも大切です。さらに、できれば自社内で固まらず、外部の人材を活用することも一案です。取引先の協力を得たり、ITに長けている会社の支援を受けることも考えて良いでしょう。
こうした多彩な人材の参画によって、多くの刺激を受け合い、前に進む。このように経営者が本気になり、こうした体制を作るところまで来れば、私はもうDXはもう半分終わっているようなものだと思います。

DX推進チームのメンバーを固定化せずローテーションして、定着を促す

体制を整えたあとは実行するのみですが、大事なことは、業務の変革を考えてからITの活用を考えるということ。そして実行フェーズのあとは、変革されたものをどう定着させるかが重要です。
この定着という部分が、大企業等ではうまくいかないことが少なくありません。とくに外部のコンサル会社にDXを丸投げしてしまった時等、仕組みをいざ社内に持ち込んでも定着しないことが多くあるわけです。

ここで留意すべきは、DX推進チームを組織したあとは、メンバーを固定化せずローテーションしていくことです。つまり1年ごとを目安にマイルストーンを設定し、そこに到達するごとに、1人か2人のメンバーをチームから外し、現場に戻します。そして、2次のメンバーとなる人たちをチームに入れていきます。
その結果、DXチームのメンバーだった人が元の所属部署に戻り、チームで学んだことが現場で浸透します。この循環が進むことでDXの定着が進んでいくわけです。

DX推進チームは、人材の教育機関になり得るもの

つまり、固定化したDXの推進チームにするのではなく、メンバーは段階ごとに数名を入れ替えていきます。そう考えると、DXの推進チームというのは、いわば短期的な教育機関なのかもしれません。各々がDXのノウハウやスキルを習得し、その伝道師となって現場に戻り、定着を促していくわけです。

このとき、経営者のスタンスとして大事にすべきなのが、「失敗しても構わない」というメッセージングと環境づくりです。
その結果社員一人ひとりが、「失敗がOKならやってみたい」と思ってくれたらしめたもの。社員に前向きなビジネスマインドを植え付けることができれば、それだけでもDXを推進する意味があったと言えるのではないかと思います。

■ 鈴木康弘(すずき・やすひろ)
株式会社デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長/一般社団法人日本オムニチャネル協会 会長/SBIホールディングス株式会社 社外取締役
大学卒業後、1987年にシステムエンジニアとして富士通に入社。1996年にソフトバンクに転職、営業・新規事業企画、ネット書店イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を起業。その後、会社ごとセブン&アイHLDGS.に移り、取締役CIOとしてオムニチャネル戦略を推進。2017年にITコンサル会社デジタルシフトウェーブを起業した。現在はデジタルシフトを目指す企業の支援等を中心に幅広く活躍中。

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oneplus編集部

この記事の執筆者

  • 【株式会社圓窓 代表取締役 澤円氏 インタビュー】日本企業はDXを推進できるか!?〜マインドセットと具体的なアクション〜 #1 経営者が自ら意志と覚悟をもって変革に乗り出すのが吉

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