【基本から日本の現状まで】会計処理のPPAをわかりやすく解説!

上場会社が他社を子会社化する際に欠かせないPPA。専門的な処理のため、業務に携わる機会は少ないですが、企業において会計処理を担当する方であれば、耳にする機会もあるでしょう。

しかし「具体的にPPAの処理内容や意味については把握していない」という方もいますよね。そのため、本記事ではPPAについて用語の基本的な解説から、日本国内におけるPPAの現状までを紹介します。

専門性の高さから、外部に委託することが多い会計処理ですが、今後ますます重要性が高まるPPAについて把握しましょう。

そもそも「PPA」とは?

ここではまず、PPAの基本的な情報について解説します。

PPAは「Purchase Price Allocation(パーチェス・プライス・アロケーション)」の略で「取得原価配分」を意味します。続いて具体的な内容を見ていきましょう。

日本語では「取得原価の配分」を指す会計用語

「取得原価の配分」を指すPPAですが、内容を掘り下げていきましょう。
言葉の大枠で見る「取得原価」は、資産を購入する際にかかった費用を指します。この費用は資産本体の価格だけでなく、引き取りが完了するまでにかかった費用(付随費用)も含まれます。付随費用は具体的に、荷役費や関税、登記費用等があります。

今回のテーマである、企業の会計処理においての取得原価は「買収される企業の資産や負債」が該当します。この取得原価を買収する企業に配分する作業をPPAと言います。

M&Aには欠かせない要素

PPAは企業がM&Aを行う際に必要な会計処理です。そのため、実際にM&Aが行われない場合は経験し得ない作業です。しかし、近年は企業を存続させながら、さらに発展させるためにM&Aは盛んに行われています。

【補足】M&Aとは?

ここでM&Aについて解説を加えます。
M&Aは「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略称です。名前の通り、複数の会社がひとつになったり、ある会社がほかの会社を買収することを言います。

M&Aは買い手と売り手の双方にメリットが多く、売上規模の拡大や人材不足の解消のほか、事業継承者がいない企業にも効果的です。

PPAに関連する2つの用語を解説

PPAの基本を解説したことで、PPA処理の概要がつかめました。ここからはPPAに関連する重要な用語を2つ解説します。PPA処理を行うためには欠かせない「のれん」「無形資産」について理解を深めましょう。

①のれん

会計処理用語での「のれん」は買収される企業の「数値では見えない資産」を指します。
企業の資産状況を確認するためには貸借対照表が有効です。貸借対照表では企業活動に欠かせない、機械や建物等、数値化できる資産を把握できる利点があります。
しかし、社内に売上アップに貢献する優秀な社員がいたり、企業自体のネームバリューに価値があるケースがあります。これらのように、数値化できないけれど価値がある資産をのれんと言います。

②無形資産

上記で解説した「のれん」を貸借対照表に記載する際に使用する項目が「無形資産」です。
のれんには優秀な社員やネームバリュー等の分配できない項目が該当します。

しかし、そのように数値化が難しい項目の中でも、分離して譲渡できるものを無形資産として計上します。また、参考までに、有形資産は土地や建物、有価証券等を指します。

無形資産には何がある?

無形資産の具体的な事例は下記の通りです。
特許
商標
著作権
企業の経営管理ノウハウ
技術者のスキル

これら以外にも、物質的には実態を伴っていなくとも、譲渡できるものは無形資産に該当します。特に買収される企業が持つ文化や、職人の蓄積されたスキルは買収後の継続および発展には必要不可欠です。

PPAの3ステップを解説

PPAにおける用語や意味合いを確認したことで、理解が深まりました。ここからは、実際にPPA処理を行う際の流れを3つのステップにわけて解説します。
「情報収集」「算定」「監査」の手順を踏んで進みます。

①情報収集および買収先への確認

PPAに取り組む際、まず行うものが「情報収集」です。
買収する企業がどのような資産を持っているかを細かく調査し、企業の財政状況を把握します。この情報収集において、必要となる代表的な資料は下記の通りです。
被買収企業の事業内容および財務内容がわかる資料
税務・財務・法務の調査資料
譲渡に関連する契約書
株式価値の算定書

これら以外にも提出を求められる書類があるため、担当者は事前に確認・準備が必要です。また、双方で情報の整合性が取れなかった場合は、この段階ですり合わせをします。

②無形資産の価値を算定する

必要な資料が揃い、被買収企業の確認が済んだら、無形資産の価値算定に入ります。
一般的に、無形資産の価値算定には以下の手法を採用します。
マーケットアプローチ
インカムアプローチ
コストアプローチ
しかし、国内では主にインカムアプローチとコストアプローチを採用する傾向にあります。
いずれの手法を採用するとしても、算定には高い専門性と経験が必要になります。そのため専門家に依頼するケースがほとんどです。

また、算定後は会計監査に必要な資料の作成も行います。しかし、この資料は専門家が作成するケースが多いため、買取側の企業は「自社にとって適切な内容か」を確認し、監査に臨みます。自社と専門家との間で齟齬が生じないよう綿密な打ち合わせが必要です。

③会計監査

最後のステップが会計監査です。監査人は「無形資産の選定が妥当か」「数値は適正か」等を細かくチェックしていきます。

日本国内におけるPPAの重要性と現状

これまでPPAについて詳細を解説しましたが、PPAの基準は日本国内と海外とで違いがあります。

元々のPPAは、アメリカの会計基準や国際会計基準(IFRS)において適用が求められたルールに則って実施されていました。しかし、日本国内でもPPAの重要性を指摘する声が増え、日本独自のルールを元に広がりを見せています。

2010年4月以降からは適用が求められるように

日本国内でPPAを重視する流れを受けて、2008年12月26日に「企業結合に関する会計基準」が公表されました。この基準により、2010年4月1日以後実施される企業結合からPPAの適用が求められるようになりました。

ここ数年でPPAの重要性が高まっている

2010年4月以降、PPAの適用が推奨されていることから、近年は国内でPPAの重要性が高まり続けています。明確な罰則こそないものの、M&Aに際してPPAを行わなかった場合は成立が疑わしいと判断されてしまいます。

まとめ:PPAは会計処理において重要

本記事では、企業の買収において重要なPPAについて解説しました。PPAは専門的な知識を要するため、企業の会計担当者が経験することは稀でしょう。しかし、会計や経理部門に携わる以上は必ず知っておきたいことです。

今回は基本的な情報から、実際にPPA処理を行う流れまで解説しました。そのため、PPAについて網羅できました。近年では国内のPPAについてもルールが設けられたり、重要視される流れになっています。そのため、常に情報収集をし、知見を広げておきましょう。

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