【何事も「ちょうど良い」と受け止める】泉卓真が社長になるまで──株式会社いずみホールディングス代表取締役社長・泉卓真にインタビュー

泉卓真氏へのインタビュー第5回。前回までは、いずみホールディングスがたどった歴史を振り返り、立ち向かってきた困難について伺いました。

今回からは会社ではなく「泉卓真」その人に焦点を当て、いずみホールディングス代表取締役社長になるまでにどのような経験を積んできたのか、その秘密に迫って参ります。

社長は俳優業?

──少し話題は変わりまして、ここからはどうしたら泉社長のように明るいお人柄になれるのか、そのヒントを探っていきたいと思います。まず、ご自身ではどんな性格だと自覚しておられますか?

泉 性格の話と言えるかはわからないのですが、逆にたくさんの経営者さんにお会いしている皆さんに、お伺いしたいことがあります。そもそも経営者って、俳優業みたいなところがありませんか?

私は俳優をやったことはありませんけど、なんとなくそう感じることがあって。つまり「演じている」ところがあるのかなと。私が大事にしていることのひとつに、「この会社の社長のあるべき姿」や、「この会社が向かう先にたどり着かせてくれる人とはどういう人か」といったもの、つまり、皆が期待している「経営者」の人物像を想像することがあります。

私がどういう経営者になりたいか、それをはじめのうちは演じるところからであっても、いずれ本当に身に付けばと良いという気持ちでやっています。ですが多分、演じるということにもそれなりにスキルが必要だと思うので、それなりの「知恵・知識・情報・経験」は大事だと思います。

深く観察して捉える

──そのためには普段、どういうことを気にされているのでしょうか。

泉 いくつか軸があるとは思いますが……例えば「経営者としてどう成長していくか」ですとか、「ビジネスを進める上での戦略や手順」ですとか、それぞれに気にすることがあり、情報収集の仕方も違うと思います。ですがそれよりも、私はすべてにおいて、取り組む内容の「度合い」が大事だと思っています。

今、社会には同じようなサービスがたくさんあります。でも、実は同じではないわけですよね。たとえばAという商品とBという商品では、機能はほぼ同じだけれども、使い心地や使っている時の楽しさが違ったりしますよね。飲食店でも、たとえば「お蕎麦屋さん」でしたらやはりみんな同じではなくて、同じ蕎麦をあつかっているのだけどメニューも価格も違うし、そこが一緒だとしても美味しい方や楽しい方を選択すると思います。

つまり私は、「やれること」よりも「やっているレベル」「度合い」が気になるし大事だと思っているので、情報収集であっても同じように考えています。

おそらく社会人になると、「伝えるよりも伝わるように」ですとか、「聞くのではなく理解するように」など、この「度合い」の話にも通ずるようなことってたくさん耳にすると思います。私自身は特別なことにそんなに興味はなくて、誰にでもできることで良いので、高いレベル・度合いでやりたいし、チームにも同じように特別なことは求めずに、やはり誰にでもできることでよいので、高いレベルでやって欲しいと思っています。

──泉社長のその豊かな観察眼はどのようにして身につけられたのでしょうか。

泉 観察眼があるとは思っていませんが、誰よりも危機感あると思います。

例えば、COVID-19 や BSE、鶏インフルエンザ、北海道でいえば赤潮等のさまざまな「まさか」が起きるということもそうですし、過去にも社会環境の変化による「まさか」は何度も体験してきました。まったく想定もしていませんでしたし、とても大きなダメージがありました。

また、前回のお話にも通じるものがありますが、ライバル企業の存在もそうです。私の会社を大きくしてくれたのはライバル企業です。いつも、私たちのシェアを狙っている企業、私たちを倒そうと思っている企業や人がいると考えるようにしているので、このような危機感によって、私たちの会社はセキュリティレベルが上がり、情報収集力が上がり、その実用的な運用力が上がりました。その結果、企業としても経営者としてもより良くなっていったのだと思います。

こうして考えてみると、昔から言われていることではありますが、逆境は企業も経営者も成長できるチャンスだと思います。社会環境の変化もそうですが、ライバル企業からの攻撃も、自分達を強くしてくれるチャンス。弱いポイントを教えてくれたり、考え直すきっかけを与えてくれたりしているに他ならないので。今となっては、そういうさまざまな出来事すべてに感謝をしています。

どんなことでも「ちょうど良い」で上り調子に

泉 当社は社内用語が多いほうだと思うのですが、その中のひとつに「ちょうど」というものがあります。例えば直近の COVID-19 の影響で売り上げが下がったとしても、我々の会社では「マズイ」「困った」とは言わないです。「ちょうど良い」と考えます。「ちょうど良いから、売り上げが半分でも利益が出る体質にしてしまいましょう」という方向になるのです。

例えば、成長期には社員が1人辞めるたびに、やはり「ちょうど良い」と考えて対応にあたりました。もちろん、本当はうれしい事でも「ちょうど良い」事でもないのですが、そうしないと改善に対してやり切る気持ちが維持できなかったのかもしれません。「ちょうど良い」から、会社の給料・労働環境、働きがいを全部見直してしまいましょう、として取り組んだ記憶があります。

「万物すべて己の師、万事すべて己の責任」として前に進むため、より良くするためには、問題や課題は「ちょうど良い」に変えて取り組むようにしています。

──会社にとってマイナスなイベントが起こっても、「ちょうど良い」がプラスに変換してくれるんですね。

泉 そうですね。前回のお話に、コンプライアンスやガバナンスをかなり強化したというのがあったと思いますが、それが良い例で、何かしらのトラブルが起きたとしても、きっと「ちょうど良い」となると思います。「ちょうど良い」から、今後は必ず契約書を締結する仕組みを構築しようとか。それが思いのほか裁判に発展したとしても、「ちょうど良い」から訴訟に対応するコンプライアンスやガバナンス、情報開示の仕組みを一気に整備・強化してしまおう、等です。

前に理想としている経営者をイメージするという話もありましたが、その経営者なら多分、そう考えると思ったんです。「ちょうど良い」の文化が生まれたのは、そのイメージした理想の経営者のおかげです。

社長である泉卓真の「苦手なもの」とは?

──「ちょうど良い」はとても前向きな言葉ですが、一方でやはり常に危機感をお持ちになっているというお話が気になりました。社長をされていて、気が休まることはありますか?

泉 うーん、休まらないです。スピードが遅いので焦ってますからね(笑)

──泉社長には休日はあるのでしょうか。

泉 あります。暦よりも仕事のスケジュールに合わせて、休日を取っています。

──では、なにかご趣味は。

泉 旅行です。ここ数年は全然いけていないのですが、以前は国内であれば毎月、海外であれば3か月に一度くらいのペースで行ってましまた。特に海外旅行が好きで、できるだけたくさんの世界遺産を見に行きたいと思っています。こう考えると、昔からリモートワークが多かった気がしますね。でも、ほとんどはぼーっとして無駄に空白の時間を過ごすことが多いのですが。

──それは散歩や瞑想をするという事でもなく、筋トレ等を行う訳でもなく、本当にただ空白の時間なのでしょうか?

泉 そうですね。海外に行く時は最初の数日、体を鍛えるどころか、散歩に行く気力も特に出ないんです(笑)。しばらくぼーっとしてしまいます。日数とともに元気になって、そのうち事業計画を見直したりとか、アイディアを整理して事業に結び付けたりとか、せかせかと動き出すので、徐々にテンションが高くなってそのまま日本に戻ってくる、みたいなことを繰り返していました。

──なんとも人間らしい一面を教えていただきました。泉社長は、苦手なものはあるのでしょうか?

泉 そうですね……。仕事では情緒的なものや、仕組みに出来ないものは苦手というか、すごく嫌だなと思います。「頑張ろう」といった意気込みのようなものや、属人的な売上とか個人の感覚とか。他方で、そういうことを仕組みやシステムにするために考えるのは好きですね。

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oneplus編集部

この記事の執筆者

  • 【万物が己の師 万事が己の責任】泉卓真といずみホールディングスに迫る──株式会社いずみホールディングス代表取締役社長・泉卓真にインタビュー

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