【中小企業必見!】働き方改革において中小企業が取り組むべき内容とは

2019年4月から順次施行がはじまっている「働き方改革」。2020年4月からは大企業において、2021年4月からは中小企業においても取り組みが開始されています。

中小企業では、人員不足や業務量等の兼ね合いで、なかなか大企業のようには働き方改革を推進する施策を実施しにくい現状もあります。

そこで、どんな課題に対してどう手を付けて良いのか、分からない担当者の方も多いのではないでしょうか。

今回は、「働き方改革」実施に向けて中小企業が取り組むべき内容について具体的に紹介していきます。

前提:働き方改革とは

働き方改革とは、2019年4月より順次取り組まれている「1億総活躍社会」を実現するための施策です。

この改革は、一人ひとりがより多様で柔軟に働けるようになることを目的としています。

例えば、常態化している長時間労働の是正や正規・非正規雇用における待遇の格差の是正、時間外労働の上限時間の設定等への取り組みを行ってます。

働き方改革とは一億総活躍社会実現のための取り組み

安倍政権によって、2015年に掲げられた「一億総活躍社会」の実現。

これは、日本の構造的な問題となっている少子高齢化へ歯止めをかけ、一人ひとりが年齢や性別・障害の有無等に関係なく、より一層活躍することのできる社会を作り上げることを目的としています。

働き方改革は、その一億総活躍社会実現のための取組みの一つとして始まりました。

中小企業が取り組むべき課題

大手企業から順次取り組みが始まった働き方改革ですが、同じ施策を中小企業で実施するのはそう簡単なことではありません。

事実、多くの中小企業が慢性的な人材不足問題を抱えています。働き手が不足すると、どうしても業務過多になりがちです。そのような状況で無理に働き方改革を押し進めると業務に支障をきたす可能性があります。

また、中小企業では大企業とは異なり欠員した場合に直ぐに人員を補充できるとは限りません。中小企業は、知名度がないことが多い上に、採用にかけられる予算も限られています。

中小企業向けの働き方改革とは

中小企業向けの働き方改革には、どのようなものがあるのでしょうか。

中小企業においては、規模が大きく人材数も豊富な大企業と同じように施策を実施することは難しいため、労使ともにしっかりと協議した上で働き方改革を実現するための工夫が必要です。

ここからは、具体的な働き方改革の内容を見ていきましょう。

働き方改革1:有給休暇の時季指定が義務化

有給休暇とは、労働者に与えられる権利です。しかし、職場によっては、休暇の取得希望を申し出にくい雰囲気となっていることも少なくなかったと思われます。

労働者からの有給休暇取得希望の申し出がなくとも、使用者は労働者に対し、希望聴取の上で時期を指定して最低5日の休暇を取得させることが必要となりました。

働き方改革2:最低5日の有給取得が義務化

有給休暇を取得しないまま2年間の有効期限が来た場合は、残った有給休暇は消滅してしまいます。

そのため、日々の業務が忙しいあまり、休暇をほとんど取得できないまま有給休暇を消化してしまったというケースも多いです。

法改正により、法定の年次有給休暇付与日数が10日以上ある労働者に対しては、年間で最低5日以上の休暇取得を確実に取得させることが義務付けられました。

働き方改革3:勤務間インターバル制度

勤務間インターバルとは、勤務終了時間と翌日の勤務開始時の間に一定時間以上を確保することで、労働者が十分な休息を取れるようにするための制度です。

例えば前日に時間外労働を行ったことで勤務終了が遅くなった場合は、翌日の勤務開始時間を後ろ倒しにする、等の調整を行います。

これまでは、どれだけ遅くまで業務を行ったとしても、翌日は始業時までには出社することが当たり前だったため、この制度の導入により労働者のワークライフバランスの実現を目指しています。

働き方改革4:労働時間の面接指導が義務化

長時間労働により、過度な疲労・ストレスを抱えている労働者の健康・メンタルヘルスを向上させるため、産業医等による面接指導が義務化されました。本施策の対象となるのは、月の時間外労働が80時間を超え、疲労の蓄積が見られる労働者です。

適切なケアが行われないまま長時間労働が常態化すると、うつ病等の精神病や最悪の場合は過労死や過労自殺等の事態に繋がる可能性があります。

働き方改革5:同一労働・同一賃金の導入

同一労働・同一賃金は、2021年4月からすべての企業に導入された制度です。

この制度の目的は、正社員等の正規雇用者とパートタイム・契約社員等の非正規雇用者との間における、待遇格差をなくすことが目的です。

これは「同じ労働内容であれば賃金も同一であるべき」という考えに基づいており、格差をなくすことで非正規雇用者を守り、より平等な社会の実現を目指します。

働き方改革6:時間外労働に罰則付きの上限

36協定で定められる時間外労働の上限は、月45時間、年360時間までとなっており特別な事情がない限り、この制限時間を超えることはできません。

なお、特別条項を利用した場合でも、上限は月100時間以内、年720時間以内に収めなければなりません。

使用者がこれらの上限を超えて従業員に労働させた場合は、「半年以下の懲役もしくは60万円以下の罰金」が科せられる可能性があります。

働き方改革7:産業医関連の強化

産業医とは、専門的な立場から従業員のメンタルヘルスや労働環境等についてアドバイスを行う医師のことです。

従業員のストレスや健康状態に対して適切なケアが行えるよう、企業と産業医がより一層連携を強化しています。

また、産業医の権限を強化し、労働者に対してより踏み込んだサポートが行えるようになりました。

働き方改革8:フレックスタイム制の労働時間の上限が3か月に

従業員のより多様な働き方を支援するために、フレックスタイム制の労働時間の上限が従来の1か月から3か月へと延長されました。

これにより、必要な総労働時間を3か月間で配分できるため、より柔軟で自分のライフスタイルに合わせた働き方が可能となりました。

必ず勤務しなければならないコアタイムを除き、フレックスタイムでは始業と終業の時間は従業員が希望に応じて調整することができます。

働き方改革9:月60時間以上の残業は割り増し賃金率引き上げ

働き方改革関連法の制定により、月60時間を超える時間外労働に対しては、賃金の割増を25%から50%まで引き上げとなりました。

賃金率の引き上げは、まずは大企業に対して適用し、中小企業に対しては猶予が与えられていますが、2023年4月からは中小企業も50%まで引き上げとなります。

働き方改革10:高度プロフェッショナル制度

高度な専門知識を有し、一定の年収要件(年収1075万円以上)を満たす労働者に対して、労働基準法において定められた労働時間や時間外労働の割増賃金を適用しない制度です。

金融商品の開発やディーラー・コンサルタント、研究職等労働時間と成果が必ずしも結びつかない職種において適用されます。

高度な専門知識や技術を有すること、業務内容が明確で労使間に合意があること、等の条件が定められています。

働き方改革を導入する際の注意点とは

これまで見てきたとおり、働き方改革では多くの制度が導入され、これまでとは大きく変更されます。

中小企業においては、業務でこれまでと同等以上の成果を出しつつ、使用者と労働者双方にとってメリットがあるように導入を進めなければいけません。

導入の際の具体的な注意点について見ていきましょう。

注意点1:賃金を最適化する

働き方改革における「同一賃金同一労働」等賃金に関する改定により、労働者間の不平等の是正等が行われます。

一方で、従業員のモチベーションを保つためにも、成果を出している社員に対してしっかりと還元する評価制度や賃金制度の導入が必要です。

結果を出している社員に対してしっかりと報いる環境を整えることで、社員の自主的な努力や頑張りを支援することができます。

注意点2:業務効率を上げる

時間外労働の上限設定や有給取得の義務化等、以前のような無理な働き方はできなくなりました。

限られた時間でより一層の成果を出すためにも、業務効率を上げることは不可欠です。これを期に、非生産的な業務や非効率なやり方がないかどうか業務内容を見直してみましょう。

注意点3:従業員への教育を強化する

働き方改革をスムーズに導入するためには、従業員の十分な理解を得ることが不可欠です。

トラブル等を防ぐためにも、使用者と労働者の間でしっかりと認識をすり合わせ、合意のもと進めていきましょう。

変更点や会社の導入方針等について事前に説明会を開く等、適切に従業員に対して周知させることがおすすめです。

注意点4:人材を適材適所に割り当てる

企業側は、働き方改革を導入するに当たり、従業員のより多様で柔軟な働き方改革を支援しつつも、企業としての労働力やパフォーマンスは維持向上していく必要があります。

そのためにも、従業員一人ひとりの適性に応じた業務や人材配置を行うことが重要です。

適材適所の人材配置を実現できるよう、従業員の職務能力や経験・希望等をヒアリング・管理できる体制を整えておきましょう。

まとめ:企業と従業員双方にとって良い働き方を

ここまで中小企業における働き方改革についてご紹介しました。

制度の改定により、従業員のとってメリットのある改革内容が多く含まれますが、重要なのは企業と従業員双方にとって良い働き方を実現していくことです。

そのためには、労使間でしっかりと話し合いを行い、お互いに満足できるやり方を模索していく努力が必要です。

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