業者間の取引において、取り扱う回数が納品書や請求書と同じくらい多いのが「領収書」の存在ではないでしょうか。
特に帳票類を日々扱う経理担当者にとって領収書の管理は欠かせない業務です。
この記事では、領収書の基礎的な知識や、保管期間、電子化のメリットについて詳しく解説していきます。後半には無料の領収書テンプレートや、経理業務を効率化させるクラウドサービスについても紹介しているので是非チェックしてみてください。
領収書とは
領収書とは、業者から提供された商品やサービスに対し、金銭が支払われたことを証明するための書類を指します。
また、領収書は、所得税法や法人税法において経費申告の際に必要となるため一定期間の保存が義務付けられています。
ただ、金銭が支払われた事実が確認できる書類であれば、レシートや納品書・請求書といった書類を領収書として取り扱うこともできるため、業者側が別途「領収書」を発行することは必須ではありません。
しかし慣例として経費の申告に領収書を必要とする企業も少なくないため、「領収書」の取り扱い方について、経理担当者はしっかりと把握しておく必要があるでしょう。
領収書が発行されるまでの流れ
領収書が発行される一般的な流れとしては以下の通りです。
- (発行する側)商品・サービスを提供する
- (発行される側)代金を支払う
- (発行する側)金額に応じた収入印紙を貼り、領収書を発行
- (発行される側)領収書を保管
- (発行する側)領収書の控えを保管
通例的に発行されることが当たり前とも言える領収書ですが、そもそも領収書の発行は義務なのでしょうか?
領収書の発行は義務?
領収書を発行しなければならない、とする法律はありませんが、民法468条において「受領者に対して受取証書の交付を請求することができる」とする規定があるため、請求が合った場合は拒否することができないと考えて良いでしょう。
ただし、領収書は前述の通り金銭の支払を証明するための書類であるため、代金支払の前に領収書の発行を請求された場合は、その請求を拒否することができます。
領収書は再発行できる?
領収書は、金銭のやり取りが完了したことを証明するための証憑書類であるため、基本的に一回の取引に対して1枚しか発行することができません。
もし領収書を複数発行してしまうと、経費の架空計上等の不適切な使い方をされてしまうというリスクがあります。再発行した領収書が不正利用された場合は、発行した側も「有印私文書偽造罪」といった罪に問われる可能性があります。
もちろん、作成した領収書に不備があった際には再発行する必要がありますが、それ以外の「紛失」等の理由では再発行は認められないため、発行する側も発行される側も領収書のルールを認識し、しっかりと管理することが重要です。
領収書の必須項目は?
基本的に、法人税法と所得税法では、領収書の保管期間について定められているものの、記載事項については定めがありません。
一方で、消費税法では仕入の控除を受ける要件として領収書の保存が必要であり、必要となる記載項目として以下の5点を挙げています。
- 書類の作成者名:領収書の発行者・社名
- 課税資産の譲渡等の年月日:受領日
- 課税資産の譲渡等の内容:提供した商品・サービスの内容
- 課税資産の譲渡等の対価額:金額
- 書類の交付を受ける事業者名:あて名
以上のような記載があれば、「いつ、誰が、何を、いくらで、誰に支払ったのか」ということが、領収書から明確になります。
記載漏れがある場合は、経費の申告書類として認められない可能性もあるため、受け取る側も発行する側も、必ず把握しておきましょう。
ここからは、領収書で必要とされる項目について注意したい点をまとめてみました。
発行者を記入する
領収書には、領収書の発行者を記入します。
発行者とは、その商品・サービスを提供した社名または人名を指します。発行者欄には、社名や人名だけでなく、住所や電話番号等の連絡先も合わせて記入しておきましょう。
受領日を記入する
領収書には、代金を受け取った日付を年月日で記入しましょう。
この場合は、「西暦の下二桁のみにする」、「平成をH、令和をRにする」というように年の部分を省略表記することは避け、和暦であれば令和〇年、西暦であれば20〇〇年、と正確に記入します。
提供した商品・サービスの内容(但し書き)を記入する
領収書には、「飲食代として」、「書籍代として」というように、提供した商品やサービスの内容を具体的に記入します。
但し書きの一例
- 文房具代(ペン、ホッチキス、ノート等)
- 消耗品費(机、オフィスの備品等)
- 通信費(郵送代、インターネット料金等)
- 旅費交通費(電車代、タクシー代等)
- 書籍代(参考書、雑誌等)
但し書きに、「お品代として」という曖昧な表現が用いられるケースがよくあるかと思いますが、それではその支払が経費として認められるかどうか判断が難しくなり、場合によっては税務調査の際に不正を指摘される可能性があります。発行する側もされる側も、但し書きはできるだけ具体的に記載するよう意識しておきましょう。
金額を記入する
領収書には、その商品・サービスに対して支払われた金額を記入します。この際、記入する金額は『税込み』での金額となる点に注意しましょう。ただ、領収書に貼り付ける収入印紙は税抜きの金額を基に算出されるため、内訳として税抜き価格や消費税額を合わせて記入することをおすすめします。
そして、領収証の金額を記入する際にもっとも重要なポイントは、「改ざんされないこと」です。
領収書の金額が変更できてしまうと、経費の不正計上等の犯罪に利用される可能性があります。
ここからは、領収書の改ざんを防ぐためのポイントを紹介します。
金額の冒頭に「¥」または「金」を記入する
領収書に金額を記入する際は、まず数字の冒頭に「¥(円マーク)」または「金」を記入します。
冒頭に「¥」や「金」が書かれていなければ、金額を書き足せば簡単に金額を改ざんすることができてしまいます。
そのため、「¥」や「金」を記入する際には、間に数字が記入できないよう、なるべく隙間を空けずにすぐ後ろから数字を記入するようにしましょう。
金額の末尾に「-」や「※」、「也」を記入する
領収書に記入する金額の末尾には、「-(ハイフン)」や「※(こめじるし)」、「也」を記入してください。
これは、上でも説明した冒頭に「¥」や「金」を記入する理由と同様で、後ろに数字を付け加えて金額を改ざんされることを防ぐ意味があります。
金額3桁ごとに「,」を打つ
領収書に金額を記入する際に気を付けるべき最後のポイントとして、3桁ごとに「,(カンマ)」を打つことが挙げられます。
例えば、3万1500円の領収書の場合は「¥31,500-」や「金31,500也」といった形で金額を記入します。
これまで挙げた3つのポイントをおさえて金額を記入することで、金額の改ざんがしにくくなります。領収書を発行する際にはしっかりと意識しておきましょう。
あて名を記入する
領収書のあて名には、支払を行った人の氏名や会社名を記入します。
あて名の書き方としては、支払者に必ず確認し、原則として正式名称を記入します。具体的には、以下のような点に注意しましょう。
- 上様等の曖昧な表記は使わない
- (株)等の省略形を使わず、「株式会社」と記入する
- 株式会社の表記は、前につくか後ろにつくか(前株か後株か)に注意する
- 個人事業主の場合はフルネームを記入する
ただ、サラリーマンが会社の経費として計上するため、といった場合はあて名のない領収書でも有効とみなされます。
一方で、上でも説明した通り消費税法上は、あて名は必須項目となり、あて名のない領収書は認められません。業者があて名の記入を忘れている場合や誤ったあて名になっている場合は作成し直してもらいましょう。もし、自分で記入してしまうと領収書の改ざんと見なされる可能性もあるため、避けた方が良いでしょう。
また、例外として以下の事業者が発行する領収書については、「あて名」を省略することができます。例えば、レストランで食事をした場合は、レシートがあれば別途領収書を発行する必要がない、ということです。
- 小売業(スーパーマーケット等)
- 飲食店業(レストラン等)
- 旅客運送業(タクシー、電車、飛行機等)
- 駐車場業
- 旅行業 等
「領収証」であることを表記する
領収書には、これが領収書であることが明確になるよう、上部等に大きく「領収書」と表記しておきましょう。
「納品書兼領収書」や「請求書兼領収書」についても同様です。
収入印紙を貼るスペースも用意しておく
課税文書である領収書には、印紙税が課税されます。こちらは印紙税法によって定められており、印紙代は領収書を発行する業者側が負担を行うものになります。
領収書のテンプレートにおいても、収入印紙を貼るためのスペースを用意しておくことをおすすめします。
収入印紙が必要となるのは売上金額が5万円以上となる場合で、5万円未満は収入印紙の貼り付けは不要です。5万円以上の領収書を発行する際には、領収書に売上金額に応じた収入印紙を貼り、割り印を行う必要があります。
金額 | 収入印紙の金額 |
---|---|
5万円未満 | 非課税 |
5万円以上~100万円以下 | 200円 |
100万円超~200万円以下 | 400円 |
200万円超~300万円以下 | 600円 |
300万円超~500万円以下 | 1,000円 |
500万円超~1千万円以下 | 2,000円 |
もし領収書を改ざんするとどうなる?
ここまででも何度か記述していますが、領収書を改ざんすることは犯罪にあたります。もし税務署から改ざんを指摘され、違反していることが発覚した場合はどうなるのでしょうか。
領収書の改ざんは国税通則法に違反する行為です。違反した場合は、重加算税を課されることになります。
重加算税とは、確定申告に偽装が合った場合に課せられる行政罰であり、新しく支払うことになる所得税額に加えてさらに35%の追徴課税が発生するというものです。
例えば、改ざんによって100万円分の所得税を免れていた場合は、100万円に加えて35%の追徴課税となるため、合計135万円を納めなくてはいけません。この金額が大きければ、国税局から脱税として刑事告発される可能性、文書偽造として刑事罰の対象となる可能性もあります。
領収書の改ざんにあたる行為とは?
領収書の改ざんにあたる行為の例として、以下のようなものが挙げられます。金額の改ざん以外にも様々なケースがあるため、うっかり改ざんしてしまうことがないよう、予め確認しておきましょう。
金額を書き換える | 経費を調整するため、金額を自分で書き換える行為。または、お店に金額を調節した領収書を発行してもらう行為。 |
日付を書き換える | 年度や月次の利益を調整するため、日付を書き換える行為。または、お店に日付を書き換えてもらう行為。 |
領収書を自分で記入する | お店に白紙の領収書をもらう、または自分で白紙の領収書を用意し、日付や金額を自ら記入する行為。 |
架空の領収書を作る | 実際には行われていない取引を捏造して、領収書を自分で作成する行為。 |
領収書の保管期間は?
領収書の保管については、法人については法人税法、個人事業主については所得税法によって期間が定められています。
領収書は確定申告で税務署に提出する必要はありませんが、税務調査の際には提出が求められることもあります。経費に計上した取引を証明するための重要な書類であるため、定められた保管期間に従って必ず保管しておきましょう。
領収書の保管期間は、法人でも個人事業主でも基本的に『7年』です。
この保管期間は、確定申告の提出期限の翌日からの換算となり、領収書の日付ではない点に注意が必要です。
もし欠損金の繰り越し控除(赤字を翌年度に持ち越して節税する仕組み)を利用する場合は、保管期間は『10年』となります。領収書以外の決算書等重要な資料は10年間の保管が求められるため、合わせて領収書も7年より10年間保管しておく方がおすすめです。
領収書に関するよくある疑問
ここで、領収書に関してよくある疑問について紹介していきます。
上様って何?
領収書のあて名としてよく使用される『上様』という言葉。こちらは「うえさま」以外にも、「かみさま」や「じょうさま」と読む場合もあります。
領収書のあて名を求められた際に、個人名や会社名を伝えることが面倒な時等に使われることが多い「上様」ですが、なぜ上様と書くのでしょうか。
上様の由来としては諸説ありますが、よく言われているものとしては以下の2つ。
- 上得意様、上客、を略したもの
- 帝や将軍等、身分が高い人を尊敬して「上様」と呼んでいたことから
通例的に使用されることのある「上様」ですが、税務調査に引っかからないようあて名には個人名や会社名を正式名称で記入してもらうようにしましょう。
領収証と領収書の違いは?
手書きで領収書を貰った際に、よく目にするのが「領収証」という言葉。
「領収書」と「領収証」ってどんな違いがあるの?と疑問に思ったことがある人も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。
実はこの2つに大きな違いはありません。簡単に言うと、「領収書」というカテゴリーの中に「レシート」や「領収証」が存在しており、領収書の方が若干広い意味を持っているという違いはあるのですが、意味合いはほぼ同じものであると言ってよいでしょう。
【無料】おすすめの領収書テンプレート
領収書には正式なフォーマットがないため、無料でダウンロードできる領収書テンプレートを利用すると便利です。
ここでは、誰でもすぐに使えるおすすめの領収書のテンプレートを紹介していきます。
自動計算付きのシンプルな領収書テンプレート
こちらはMicrosoft公式サイトのエクセルテンプレートで、自動計算付きの直接入力タイプと手書きタイプの2パターンから選ぶことができます。
自動計算になっているため、金額と必要項目を入力するだけで簡単に領収書が完成します。社名ロゴを挿入することもできるため、簡単に自社オリジナルの領収書テンプレートが作成できます。
ダウンロードはこちらから
https://www.microsoft.com/ja-jp/office/pipc/template/result.aspx?id=13284
領収書付きの納品書テンプレート
こちらは領収書付き納品書、または受領書付き納品書を作成することができるテンプレートです。
納品書に数値を入力するだけで、領収書や受領書に合計金額が自動算出されるため、計算間違い等のリスクが少ないところも嬉しいポイント。社名ロゴも挿入することができます。
ダウンロードはこちらから
https://www.microsoft.com/ja-jp/office/pipc/template/result.aspx?id=13282
領収書を電子化するメリット
紙で発行されることが多い領収書ですが、最近では電子発行されることも増えてきています。
電子発行された調収書は電子領収書とも呼ばれ、はじめからPDF等のデータで送受信した領収書はもちろん、紙で発行された領収書をスキャンする等して電子化したものも電子領収書に該当します。
領収書を電子化することは、発行する側にとっても発行される側にとっても様々なメリットがあります。
発行する側は郵送代や印紙代の節約になる
領収書は金額が一定以上になると収入印紙を貼り付けて印紙税を納める必要があることは上でも説明した通りですが、PDF等をデータで送付した電子領収書であれば金額に関わらず収入印紙の貼り付けが不要となります。
印紙税の課税は印紙税法で定められており、「FAXやPDFを介した契約の取り交わしは文書作成に当たらない」とされていることが、電子領収書の印紙税が非課税である理由です。特に高額の領収書を頻繁に発行するような企業の場合は、印紙代を節約できるだけでもかなりの節税となるでしょう。
また、これまで領収書を郵送していた場合は郵送代も削減することができます。
発行される側は劣化防止やスペースの節約になる
領収書には、税務調査のため7年の保管期間が定められています。
領収書の保管方法については、ファイルに保存する、ノートに貼り付ける等の方法がありますが、専用の棚や、日付やジャンル分を行い、7年もの間すべての取引における領収書を保管しておくには、多くの作業時間やスペースが必要となってしまいます。
また、レシートには「感熱紙」がよく使われていますが、感熱紙は光や外気の影響で印字された文字が消えてしまう可能性があるため、湿気や直射日光を避ける等領収書の保管場所にも注意を払う必要があります。
しかし、データで領収書を管理すれば、こうした管理に必要となる用紙代や印刷代、ファイル等の事務用品にかかる無駄なコスト削減に繋がります。
経理業務を電子化するならoneplatがおすすめ!
経理担当者は、領収書はもちろん納品書や請求書等様々な書類を日々取り扱っています。そして、取引が増えればその分それらを管理するためのスペースや印刷費等のコストも多くかかってきます。
こうした経理にかかる様々なコストを削減するためにおすすめなのが、納品書や請求書をクラウド管理する『oneplat(ワンプラット)』というサービスです。
oneplatを使えば、販売者ごとにフォーマットが異なる納品書や請求書をすべて取りまとめることができ、データは様々な会計システム・販売管理システムとも連携が可能。現場の作業時間が大幅に削減できます。
ほかにも、承認済みの納品書を請求書へと自動変換できるため、請求書の間違いは実質ゼロ!
納品書や請求書をデータで受取・管理することができるoneplatなら、ペーパーレスで効率的な業務が実現できます。
まとめ
今回は、領収書の基礎的な知識から、保管期間、電子化のメリットやおすすめの領収書テンプレートについて詳しく紹介してきました。
効率的に経理業務を行うためには、帳票をデータで管理できるクラウドサービスの導入がおすすめです。
経理業務の電子化に興味がある人は、初期導入費用無料で翌営業日からすぐに利用可能な納品書・請求書のクラウドサービスoneplatを是非チェックしてみてください。