取引先から送られてくる納品書。
各税法や会社法で規定されている証憑書類に該当し、一定期間の保管義務があることをご存知でしょうか?
また、電子帳簿保存法改正をきっかけに、ペーパーレス化を検討している方も増えてきていることでしょう。
今回は、納品書の保管期間およびデータで保存する際の保管方法について解説いたします。
取引先とのやりとりで生じる納品書とはどんな書類?
納品書とは、販売者から購入者に対して、商品等が納品された際に発行される書類のことです。販売者から商品を受領した際に、同封されているのを見たことがある方も多いでしょう。
納品物の内容を明示した書類
納品書には、納品物の内容等の項目が明示されます。明示される項目は、発行者名、発行年月日、商品名および納品個数、合計金額、宛名等があります。
購入者は、納品書に目を通すことで、発注した内容と受領した納品物の内容に相違がないことを確認することができます。「納品書を発行しなければならない」という法的義務はありませんが、発注時のトラブル防止のために、多くの企業で納品書が発行されています。
納品書について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】納品書の役割や発行側の注意点、受領後の流れをわかりやすく解説
納品書は取引の証憑(しょうひょう)書類にあたる
納品書は取引の証憑(しょうひょう)書類に該当します。
証憑書類とは、「取引が成立した」という事実を証明する根拠となる書類です。
納品書であれば、「販売者から購入した商品をきちんと納品した」という事実を証明するための根拠となります。
税法上の証憑書類の例
証憑書類の保存期間は、各税法や会社法によって定められています。
まず、文書保存が税法で定められている証憑書類についてまとめます。保存期間は7年です。
区分 | 証憑書類 | 保存期間 |
法人税法 | ・仕訳帳 ・総勘定元帳 ・現金出納帳 ・売掛金元帳・買掛金元帳 ・固定資産台帳 ・売上帳・仕入帳 ・棚卸表 ・貸借対照表・損益計算書 ・決算に関して作成されたその他の書類 ・注文書・契約書・送り状・領収書・見積書 | 7年 |
消費税法 | 資産の譲渡、課税仕入れ、課税貨物の 保税地域からの引取りに関する事項 | 7年 |
会社法の証憑書類の例
一方、会社法上で保存が義務付けられている証憑書類には、以下のような書類があります。
「備置き」するべき書類と「保存」するべき書類で、保存期間がそれぞれ5年、10年と異なります。
「備置き」の書類は、閲覧要求があったときに、いつでも閲覧できる場所へ保管しておく必要があります。「閲覧」を前提とした書類と言えるでしょう。
一方、「保存」の書類は、倉庫の奥にでも存在していれば問題ありません。
区分 | 証憑書類 | 保存期間 |
備置き | ・計算書類 ・事業報告(附属明細書含む。) ・監査報告 ・会計監査報告 | 5年 |
保存 | ・会計帳簿および事業に関する重要な資料 ・計算書類 | 10年 |
作成の義務はないが保管(保存)義務はある
前述したとおり、納品書作成の法的義務はありませんが、請求書等と同様に保管(保存)義務は存在します。
発注時のトラブル防止のためにも、慣例的に作成されることが多いのですが、中には作成をしない販売者もいることでしょう。
「作成をしない販売者もいるくらいだから特に保存しなくていいかな」と納品書の保存について軽視しがちですが、納品書も大切な証憑書類の一つです。
保存されていないと、経理に関する申告をする際に思わぬトラブルを招く危険性もありますので、「作成義務はないけれど、保管義務はある」ときちんと心に留めておきましょう。
納品書の保管(保存)期間は?
納品書の保管(保存)期間は、法人税法で定められており、「7年間」の保存が義務付けられています。
7年経過後には破棄しても問題ありませんが、7年間の保管期間中の破棄や紛失が発覚すると、余分な納税が発生してしまう可能性があります。
納品書の保管は請求書と同じ保管期間
なお、納品書の保管期間と請求書の保管期間はまったく同じ7年間です。
取引先ごとに、納品書と請求書をセットで保管し、保管期間経過後にはセットで破棄するようにすると、漏れなく管理できるでしょう。
【関連記事】電子化した請求書の保存期間は?電子帳簿保存法の概要についてはこちら
企業では税法と会社法を合わせて保管期間を10年とると良い
企業が取り扱う請求書や納品書などの文書の保管期間に関して、前述したとおり、税法では7年間保管することが義務付けられています。これは、税務調査などで必要となる場合に備えるためです。
しかし、会社法においては、計算書類など特定の証憑書類については10年間の保管期間が必要とされています。これは、企業活動におけるより広範な法的責任を考慮したものです。
また、青色申告の承認を受けている企業は、欠損金(税務上の赤字)が発生した事業年度の請求書に関して特別な規定が適用されます。*2018年4月1日以降に発生した欠損金については、その事業年度の請求書を10年間保管する必要があります。これにより、将来黒字が発生した際に、欠損金を繰り越し相殺することが可能になります。
したがって、企業の場合すべての書類を10年間の保管期間で運用しておくのが間違いのない方法と言えるでしょう。
*但し、2018年4月1日までに欠損金が生じた事業年度の請求書の保存期間は9年になります。
個人では消費税課税事業主かどうかで保存期間が異なる
一方、個人の場合は、納品書の保管期間は原則5年となっています。
ただ、消費税課税事業主の場合は、企業の場合と同様7年となりますので注意が必要です。
個人事業主だと「基準期間(前々年度)の課税売上高が1,000万円以下の場合」は消費税免税事業主、また「基準期間(前々年度)の課税売上高が1,000万円を上回る場合」は消費税課税事業主となります。
注意! 納品書の保管期間が終わるのは法人税の確定申告が済むまで
証憑書類の保管期間は、確定申告書の提出期限の翌日からはじまります。
例えば、令和5年3月31日が決算日の企業の場合、令和4年4月から令和5年3月の間に受領した証憑書類の保管開始日は、確定申告書の提出期限日(決算日の2か月後)である令和5年5月31日の翌日、令和5年6月1日となります。
納品書の場合は、この日から7年間の保管義務がありますので、保管期間の終了は、7年後の確定申告書の提出期限日となります。
注意! 納品書を管理不足で紛失すると税務調査で指摘される恐れあり
保管期間内に納品書等の証憑書類を紛失してしまった場合は、税務調査で指摘される恐れがあります。
税務署から追徴課税や加算税といったペナルティを受ける可能性もありますので十分に注意が必要です。
会社法第976条の「過料にすべき行為」においても、証憑書類の紛失が対象となっており、違反した場合は、100万円以下の過料が科せられます。
最悪の事態に陥らないために、証憑書類をきちんと保管しておく必要があります。
納品書の整理・保管方法には大きく2通りある
納品書の整理・保管方法には大きく分けて2通りの方法があることをご存知でしょうか。
一つは「紙保管」、もう一方は「データでの保管」です。
証憑書類について、税法上の原則は「紙保管」となっています。
ただ、2022年1月から施行された電子帳簿保存法の改正によって、規定の書類(納品書含む)については、今まで必要とされていた税務署長の事前承認を得ることなく、「データでの保管」が可能となりました。
紙の納品書を整理・保管する際のヒント
ファイルでの管理方法を工夫する
多数の取引先や取引件名が存在する企業にとって、納品書を10年間も紙保存するとなると、その量は膨大なものとなることでしょう。
紛失を防止し、税務調査でのリスクをなくすためにも、ファイルでの管理方法を工夫することが非常に重要です。
納品書の分量や、保管期間の切り分けやすさに応じて、月別・年度別・企業別等に整理して、誰が見てもわかりやすい形でファイリングしましょう。
最近は様々な用途に向けた、あらゆる形状のファイルが販売されているので、ファイリング方法に応じて、使いやすい形のファイルを選択することも大切です。
A4以下の納品書は台紙に貼って保管する
納品書のフォーマットは取引先によって様々で、中にはA4以下の小さなものも存在するはずです。
小さな納品書をそのままの形で直接ファイリングしてしまうと、後で探そうとしたときに見つけるのが難しくなりますし、気づかないうちにファイルから抜け落ちてしまうリスクもあります。
多少手間はかかりますが、A4以下の納品書の場合は、台紙に貼って保管するようにしましょう。白紙のA4用紙等を台紙として利用すると便利です。
インデックスやタグシールを利用する
証憑書類を保管するときには、「あとから探すときに、ひと目でわかる」ことが大切です。
書類が必要になったときに、当てもなくファイルをひっぱり出して、1枚1枚ページをめくっていては非効率ですし、見落としてしまう可能性も高くなります。
日付や取引先ごとに、インデックス(見出し)やタグシールをきちんと貼って、誰が見てもわかりやすいように管理しましょう。
細かい作業で面倒かもしれませんが後のことを考えると、必ずやっておくべきひと手間です。
注意! 電子データで受け取った納品書を印刷して保存はNGに
2022年1月の電子帳簿保存法改正によって、データで受け取った納品書を印刷して、「紙」で保管する方法は原則認められなくなりました。
データで保存する場合は書類データにタイムスタンプを付与して、検索機能を確保しなければならないので注意しましょう。
ただし、紙での保管の廃止には2年間の猶予期間が設けられているので、今のところは2021年12月までの運用方法を継続することが可能です。
【納品書発行側】控えをナンバリングして保管しておく
納品書を発行する側において気をつけなければならないのが、「控えをナンバリングして保管しておく」ことです。
納品書を発行した後に、先方で紛失等が発生した際に、きちんと発行した証拠を残しておくことでトラブル防止にも繋がります。
取引先ごとに管理番号を設定し、いつでも取り出せる形で整理しておきましょう。
納品書を電子化するメリット
紙の納品書を電子化すると、以下のようなメリットがあります。
- 保管スペースを削減できる
- 検索が容易になる
- 紛失・劣化を防げる
ひとつずつ解説していきます。
保管スペースを削減できる
先述の通り、納品書は7年間の保存が義務付けられています。
請求書と一緒に管理することが一般的ですが、取引が多い企業では膨大な紙書類が発生し、社内のキャビネットだけでは保管が追いつかなくなるかもしれません。
もし書類保管サービスを契約すると、月額保管料や入出庫料、送料などが発生してしまいます。
その点、電子化された納品書はクラウドやサーバーで管理されるため、物理的な保管スペースが不要となります。関連書類の保管にかかるコストを大幅に削減できるでしょう。
検索が容易になる
納品書を紙で運用している場合は、必要な書類を見つけるのに手間がかかります。ファイルを一枚ずつめくったり、インデックスやラベルを頼りに探さなければならず、時間がかかることもしばしばです。
電子化された納品書であれば、発行日や取引先名、金額などの条件を入力するだけで、数秒で必要なデータを表示できます。特に、数年前の取引記録でもすぐに検索できる点は、会計監査や税務調査の際に非常に心強いポイントです。
紛失・劣化を防げる
紙の納品書は湿気や経年劣化に弱いため、いざというときに取引記録を正確に確認できなくなるかもしれません。また、万が一紛失してしまうと税務調査時に証憑不足を指摘され、追徴課税や加算税といったペナルティを課されるリスクも伴います。
しかし、納品書をデータとして保存することで、紙の劣化やインクの薄れを心配する必要がありません。さらに、クラウド上にバックアップを取っておくことで、システム障害やトラブルが発生した場合でもデータの消失を最小限に抑えることが可能です。
【関連記事】納品書の電子化とは?電子化のメリットと注意点、システムの選び方も解説
納品データを保管する際の注意点
続いて、納品書をデータで整理・保管するときに気をつけるべきことを見ていきます。
電子帳簿保存法改正によって、今まで紙で保管をしていた企業も対応が必要となりましたので、是非一読ください。
電子帳簿保存法に則った管理が必要
納品書や請求書などの証憑書類をデジタル形式で整理・保管する場合、電子帳簿保存法に準拠した管理が必須となります。この法律は、デジタル時代の会計処理における透明性と信頼性を高めることを目的としています。
2022年1月には、電子帳簿保存法に重要な改正が施されました。この改正により、企業はより柔軟に文書をデジタル化し、保存することが可能となりました。
【関連記事】電子帳簿保存法改正 猶予期間・請求書電子化の義務化への準備を
証憑書類や重要書類に関係する電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法は、企業が証憑書類をデジタル形式で整理・保管することを認め、そのための規則を定めた法律です。この法律は1998年に成立し、当初はデジタル保存に関する要件が厳格でしたが、法改正を重ねることで要件が緩和され、デジタル化の導入が進む企業が増えてきました。
特に、2022年1月の改正では、電子取引に関連する文書のデジタル保存についての重要な変更があり、この改正により、企業は税務署長の事前承認なしに紙の証憑書類をデジタル化し、保存することが可能になりました。
これは、紙ベースの管理の非効率性を解消し、企業の文書管理の柔軟性を高めるためのものであり、近年はデジタル化を導入する企業が増えてきています。
電子帳簿保存法に則った納品書管理に必要な条件
納品書をデータで保存する場合は、電子帳簿保存法で定められたいくつかの条件を満たす必要があります。
【条件】
①システム概要に関する書類(マニュアル等)の備え付け
②見読可能装置(データを確認できるディスプレイ等)の備え付け
③検索機能の確保
④データの真実性を担保する措置
①と②については、企業の各社員等の関係者がデータを確認するにあたって、必要不可欠なものです。
③(検索機能の確保)にあたっては、取引日や金額等で、いつでも対象のデータを検索できる状態にしておきましょう。
④(データの真実性を担保する措置)にあたっては、タイムスタンプの利用や事務処理規程を整備する等の対応が必要となります。
電子データでの保存に必要だった届出要件はなくなった
これまで、データで証憑書類を保存する場合は、事前に税務署長への届出と承認が必要でしたが、2022年1月の電子帳簿保存法改正によって、届出は不要とされました。
ただし、「優良な電子帳簿の要件」を満たした上で、事前届出をした場合は、税法上のメリット(過少申告加算税5%軽減※)を受けられます。
※事前届出した証憑書類に関して申告漏れがあった場合は、過少申告加算税が5%軽減される。
電子データを消失しないように保管する
データは企業の財産です。
データを消失してしまった場合は、会社の信用低下を招くのはもちろん、余分な納税が発生してしまうリスクもあるため、データの消失を防止することは企業にとっての大きな課題と言えます。
社内の文書管理規程を定期的に見直し、紙での文書保管の場合と同様に、月別・年度別・企業別等できちんと管理しましょう。
また、万が一の場合に備えて、バックアップ体制も確実に整えておく必要があります。
【納品書発行側】作成したデータを控えとして保管する
納品書を発行する側についても、作成した納品書のデータを控えとして保管しておきましょう。
紙での保管と同様に、台帳を用意する等して取引先ごとにナンバリングして保管しておくのが理想です。
特に複数の担当者がいる場合は、共通の保存場所と保存する際のルールを設定する等して、漏れのないように注意する必要があるでしょう。
電子データ管理は効率的なサービス利用がおすすめ
特に取引先の多い企業の場合は、納品書を受け取る数が膨大になります。
受け取った納品書を整理するだけでも、大変な時間と労力がかかることでしょう。効率的に、かつ漏れなく運用していくためには、データ管理サービスを利用するのがおすすめです。
「oneplat」は納品書保管(管理)や請求書管理にも優れたサービス
納品書や請求書をデータとして保管するサービスは多数存在しますが、特におすすめなのが「oneplat(ワンプラット)」です。oneplatは納品書と請求書の管理を一元化することで、煩雑な業務を大幅に効率化します。
以下に、oneplatの主な特徴を紹介しますので、是非ご検討ください。
会計システムと連携されるため効率的
oneplatを利用すると、販売者様が発行した納品書をデータで受け取れるうえ、会計システムとも自動的に連携されます。
紙の納品書を手作業でシステムに転記する手間がなくなり、複雑な仕訳作業も自動で行われるため、経理担当者の業務負担が大幅に軽減されるでしょう。
電子化の手間が少ない
oneplatなら、販売者様を登録して納品を受けた際に承認を行うだけで、データとして簡単に管理できます。運用がシンプルなため、新しい業務フローへの不安を最小限に抑えられるでしょう。
電子帳簿保存法に対応済み
oneplatは電子帳簿保存法に準拠した形式でデータを管理でき、半永久的な保存が可能です。財務や経理部門をペーパーレス化したい企業や、業務の効率化を目指す企業にとってぴったりのサービスと言えるでしょう。
まとめ
納品書は各税法と会社法で保管期限が定められている証憑書類であるため、10年を基本に保管する必要があることをお伝えいたしました。
保管する際には、紙での保管およびデータでの保管それぞれの場合で、紛失や消失が発生しないように、きちんと運用方法を整理しておく必要があります。
また、電子帳簿保存法の改正により、今後はデジタルでの保管が一般的になると予想されます。
この機会に、納品書の管理方法を見直し、より効率的な保管方法を検討することをお勧めします。
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