流動負債をわかりやすく紹介|固定負債との違いや勘定科目も

負債について、なんとなくマイナスなイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。しかし負債は会社が事業活動を行う上で必ず発生する、必要不可欠なものです。負債は2種類に分類でき、それぞれを正確に把握しておくことが大切です。

この記事ではそのうちのひとつ、流動負債について解説します。概要や区別の仕方、具体的な勘定科目や経営に役立つ指標等を理解して、経営に活かしていきましょう。

負債のひとつ|流動負債とは?わかりやすく解説

流動負債とは1年以内に支払う義務のある負債のこと

未払金や借入金等、将来支払わなければならない負債は、支払期限までの長さによって「流動負債」と「固定負債」の2種類に分類します。このうち、1年以内に支払う義務があるものを「流動負債」といいます。

会社の財政状況を表す貸借対照表において、流動負債は右側の「負債の部」に記載されます。流動性の高いものから順に上から記載するというルールがあり、流動負債は「負債の部」の最初の項目となっています。

負債のうち2つの基準に当てはまるものが流動負債とされる

2種類のうちのどちらの負債であるかを厳密に識別するには、2つの基準に当てはめて考えます。以下の基準のどちらかに当てはまれば流動負債、当てはまらなければ固定負債であると言えます。

1.正常営業循環基準:本業の営業サイクルに該当するか?

商品や原料の仕入等、会社の本業の営業サイクルの中で発生する負債は、すべて流動負債です。この基準を「正常営業循環基準」と呼びます。営業活動は、仕入によって得た商品を販売し、その利益で次の商品を仕入れて販売するという一連のサイクルの中で行われています。ただし、この基準に当てはまらなければすべて固定負債というわけではなく、以下の「1年基準」に当てはめて再度判断します。

2.1年基準:支払い義務は1年以内かどうか?

上記に当てはまらない場合でも、支払期限が1年以内であれば流動負債と判断され、、1年を超える場合は固定負債となります。この基準は「1年基準」と呼ばれ、会計では1年という単位が様々な判断や処理に使われます。

この基準で判断されるものには、会社の備品等を後払いで購入する「未払金」、返済期限が1年以内である「短期借入金」等があります。

流動負債と固定負債との違い|固定負債は2つの基準に当てはまらないもの

上記の2つの基準に当てはまらないものが固定負債です。具体的なものには、「長期借入金」や「社債」等があります。これらは将来返済しなければならないものですが、裏を返せば現時点での資産とも言えます。

なぜなら、負債は「資産の調達方法」を表す項目でもあり、借入金や社債等の資金調達の手段によって、資産を所有していると言えるからです。返済まで期間が長いため、調達した資金を使って将来の返済に備える、という長期的な視点が必要です。

負債を流動負債と固定負債に分けて貸借対照表に記載する理由

負債を2種類に分けて記載する理由は、財務状況の判断に役立つからです。流動負債は近い将来に支払う義務があるため、資金繰りに大きく影響します。金額が大きくなると資金繰りの余裕がなくなり、財務の安全性が低いとして金融機関からの評価も下がってしまいます。反対に、固定負債の金額が大きい場合は、支払期限までの時間的余裕があり、資金繰りにも余裕が生まれ、安定した財務状況であるとして、金融機関や取引先からも信用を得やすくなります。

このように、流動負債と固定負債を識別して把握しておくことで、自社の財務状況を正確に判断することができ、目標設定や戦略策定にも役立つのです。また、金融機関等の外部の利害関係者にとっては、同じ基準で作成された貸借対照表により判断がしやすくなります。

流動負債に分類される主な勘定科目8つを紹介

①買掛金

買掛金は、営業活動に関わる商品を後払いで購入したときに発生します。会社の営業活動では、同じ取引先から何度も商品を購入することが多く、都度支払を行うのではなく、締日を設けて一定期間分の支払をまとめて行う「掛取引」が一般的です。掛取引で商品を買うため、「買掛金」といいます。多くの場合の支払までの期間は、1か月から数か月と比較的短期間です。

②支払手形

手形とは、相手への将来の支払を約束するために発行する証書のことで、支払金額や期日が記載されています。手形で支払を行う場合の債務を支払手形といい、支払の期限を延ばすことができるという特徴があります。現金や振込の場合は、支払う時点でお金が必要です。しかし手形は将来の支払いを約束するものであり、その時点でお金がなくても発行できます。もちろん期日までに支払代金を準備する必要がありますが、売掛金の入金を待って支払ができるなど、資金繰りの面でメリットがあります。

③未払金

未払金は、営業活動に直接関係しない物品等を後払いで購入したときに発生します。買掛金と同じ後払いですが、営業活動に関わるかどうかで区別して扱います。備品の購入等の継続的でない営業外の取引や、継続的なサービスが終了している場合の未払代金を仕訳する際に使われます。

④未払費用

未払費用も営業活動外で生じた債務を表しますが、未払金と違って継続的なサービスを受けている最中に使われる勘定科目です。主に決算時に使われる科目で、決算日の時点でサービスを受けている途中であるが支払は行っていないという場合は、今期分の費用を未払分として計上しておく処理を行います。具体的には、保険料や水道光熱費、従業員への給与等、サービス等の発生と支払時期にずれがあるものに使われます。

⑤前受金

前受金は、商品を渡していない、サービスの提供が終了していない等の、取引が完了する前の時点で受け取るお金のことです。「内金」「手付金」というとイメージしやすいのではないでしょうか。お金を受け取っているにもかかわらず負債に分類される理由は、前受金によって将来商品やサービスを提供する義務が発生しているからです。取引が完了していないため、負債として扱う必要があります。

⑥前受収益

前受収益は、本来なら翌期に受け取るはずが、今期に既に受け取っている収益のことで、主に決算時に使われる科目です。具体的には、翌期分の地代家賃を前もって受け取っている場合や、貸付を行う際に利息分を前もって控除し、受取利息として扱っている場合等があります。既に収益として受け取った資産を減らす処理をするため、前受収益は負債として扱われるのです。

⑦短期借入金

短期借入金は、返済期限が1年以内のもののことで、期限が1年を超える長期借入金と区別されます。

長期にわたる借入金は、1年ごとや半年・ひと月ごとなど、少しずつ返済していくものです。そのため、最初は長期借入金として仕訳をしていても、時間の経過とともに期限が1年以内に迫った金額は、短期借入金として計上する処理を行う必要があります。

⑧賞与引当金

賞与引当金とは、翌期以降に賞与を支給することを見越して当期相当分を計上する引当金のことです。賞与の支給対象期間が決算をまたぐ場合に、決算時に計上するもので、将来支払うものとして取っておく意味合いがあるため、負債に分類できます。

流動負債を使用して求める主な財務指標3つ

短期的な支払い能力をみる「流動比率」

流動負債は支払期限の近い負債であるため、短期間で現金化が可能な流動資産を準備しておく必要があります。これらを比率にして、短期的な支払能力を測る指標が「流動比率」で、以下のように算出します。

流動比率(%)= 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

この数値が高ければ流動資産が多く、資金繰りに余裕があると判断できます。ただし、流動資産としているものの中に回収不能なものや遅れているものがないか、確認しておくことが必要です。

流動比率よりより厳しく判断する「当座比率」

流動資産の中でも、より簡単に現金化できるものに絞って、流動負債との比率を算出することで、より厳しく支払能力を判断できます。このような指標を「当座比率」といい、以下のように算出します。

当座比率(%)= 当座資産 ÷ 流動負債 × 100

当座資産とは、現金や預金、売掛金や受取手形等の売上債権、有価証券等、すぐに現金化できる資産のことです。流動資産の中でも現金化するのに時間のかかる、商品や原料の在庫等である棚卸資産は含んでいません。より現金化しやすい物のみを対象とすることで、より細かく支払能力の安定性を判断できます。

自己資本と負債から財務状況の安全性を判断する「流動負債比率」

上記の2つの指標は、実際に所有する資産額との比率によって安全性を測るものでしたが、「流動負債比率」は流動負債を自己資本で賄えるかどうかという観点から安全性を評価します。以下のように算出します。

流動負債比率(%)= 流動負債 ÷ 自己資本

流動負債は外部から調達した資金であるため返済の必要がありますが、自己資本は返済不要です。両者の比率によって、資金を借りすぎていないか判断するもので、この比率が高いほど財務の安全性が低いと判断されます。

流動負債が多い会社の経営状況はどうとらえることができるか?

流動負債が多いということは、短期間で多額の支払が控えていることを意味します。資金に余裕のない場合が多く、財務状況が良いとは言えません。そのため、金融機関からの評価は低くなります。また、取引先から見ても支払能力に不安があれば、スムーズに契約することは難しいでしょう。流動負債は可能な限り減らすことが好ましいと言えます。

とはいえ、事業活動を行うには仕入は必要不可欠であるため、流動負債は必然的に発生します。過度な仕入をなくしたり、借入金を生かした効率的な売上創出を考えたりして、流動負債の額ではなく割合を見ながら、バランス良く経営をすることが大切です。

流動負債が少ない会社の経営状況はどうとらえることができるか?

流動負債が少なければ、資金に余裕をもって事業を行うことができます。健全な財務状況と判断されるため金融機関からの評価も良くなり、融資を受けやすくなります。そのため事業の規模を拡大したり、戦略の幅を広げたりもしやすくなるでしょう。取引先からの信用も得られるため、事業がますます活発になることが考えられます。

事業が拡大すれば資産も増えますが、仕入やその他の費用等の負債も増えるものです。ここで流動負債が増えすぎると財務状況が悪化することも考えられるため、やはりバランスを保ちながら経営を行うことを意識しておきましょう。

まとめ

流動負債は営業活動において必ず発生するものです。固定負債と区別して把握しておくことで、短期的な経営判断に役立つため、是非理解しておきたい概念です。

増えすぎると経営状態も悪化し、外部からの評価も下がってしまう流動負債ですが、ただ減らすことを考えるのではなく、全体から見た割合を考えることが大切です。ご紹介した指標も利用しながら、バランス良く経営を行っていきましょう。

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oneplus編集部

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