事業の売上減少時に何か対策を講じなければならないとは思いつつも、具体的にどうすればよいのか悩んでいる経営者は多いのではないでしょうか。
売上が減少・低迷したときに、適切な対策を打てるかどうかは会社の命運を左右します。何の対策もせず放置しても、場当たり的な対策をしても、事態が好転することは稀です。
この記事では、売上減少の原因やその分析に役立つフレームワーク、売上回復の対策についてご紹介しています。是非、最後までお読みいただき、お悩みの解決にお役立てください。
売上減少の対策実施の前に! その理由を把握しよう
売上減少の理由①外的要因
売上が落ち込む要因は、企業の内側と外側の両方に存在します。そのうち、企業の外で起こっている変化に起因するものが外的要因です。
外的要因は、市場ニーズ・流行の変化や競合他社の台頭等であり、自社では対応することが難しいという特徴があります。しかし、自社にとってその影響が大きければ損失を被ることになり、その変化に対応できなれば企業は衰退してしまいかねません。
売上を減少させる外的要因となるものがどのようなものか、詳細を見ていきましょう。
顧客のニーズの変化・流行が終わった
消費者の購買意欲はニーズや流行に左右されます。よって、ニーズが減ったり流行が廃れたりすれば売上は低迷します。
一時的にニーズが増加している商品や流行している商品を取り扱っている場合は、現在の売上が好調だとしても、それがいつまでも続くわけではありません。世間の流行が変われば、購買意欲は下がり売上も落ちます。
あれほど話題になったタピオカドリンク店であっても、今は閉店して別のお店になっているのを見かけた方は少なくないでしょう。
ニーズや流行が終わる前に、別商品の開発に取り組む等の対策を講じておく必要があります。
店舗の近隣環境が変化した
企業が販売する商品・サービスに変化はなくとも、それらを販売する周囲の環境が変化すれば、売上が減少することがあります。売上が減少したときには、何か周囲に変化があるかどうか観察してみましょう。
近くに新しい道が開通したことで人の流れが減ってしまったり、公共交通機関の減便や廃線等によりアクセスが悪くなってしまったりすれば、客足が遠のいてこれまで通りの集客ができません。近隣の大きな工場やオフィスが移転すれば、見込み顧客が少なくなることも考えられます。このような変化があれば、売上は下がってしまうでしょう。
売上がロケーションに大きく影響されるなら、環境の変化についてコンスタントに情報収集を行い、変化があれば早めの対策を検討すべきです。
また周囲の変化で言えば、不況も売上減少の原因となるでしょう。一般的に、不況になれば購買意欲が低下し、売上が低下する傾向があります。
ライバル企業が現れた
他社の台頭も、売上に大きな影響をもたらします。ライバル企業が類似した商品や代替商品を発売し、それが自社商品に比べて価格競争力や機能性等で勝っていれば、自社のシェアが奪われてしまいます。
また、他社が魅力的な広告やキャンペーンを打ち出したことにより、自社がシェアを失うこともあるでしょう。
ですから、ライバル企業の新商品の発売情報等は、常にチェックしておくことが重要です。ライバル企業と言うと同業他社を想定しがちですが、時には異業種がライバル企業になることがあります。まったく異なる商品が自社商品の代替品になったり、業界に参入してきたりすることがあるからです。情報は広い視野で集めましょう。
商品やサービスの評価が下がった
自社や商品・サービスへのイメージ悪化が、売上の低下に繋がることもあります。
SNSの普及により、企業の対応や商品等への不満が拡散されやすくなりました。ネガティブな口コミが広がれば、当然ながら購買意欲を削がれる顧客も少なからずいるでしょう。
たとえ自社の商品・サービスに問題はなくとも、他社の不祥事により類似した商品や業界全体に不信感が募り購買が忌避されるケースもあります。
自社の商品・サービスや業界イメージが悪化するような出来事が発生していないか、情報収集をしておきましょう。
SNS・サーチエンジンからの集客に失敗した
ネット集客に注力している場合は、SNSやホームページへのアクセス数の減少が売上の低下に繋がります。
特にホームページは、サーチエンジンの検索順位がどれだけ上位表示されるかによってアクセス数は大きく左右されるのが一般的です。検索順位がひとつ下がれば、閲覧数が半分程度になると言われています。
検索順位が下がればそれだけ集客の機会を失うことになりますから、そうならないためにSEO対策をしたり、SNS等のサーチエンジン以外で集客を考えたりする等の対応が必要です。
SNSの場合は、ユーザーに関心を持たれ、話題にしてもらえるかどうかがアクセス数の肝となります。ですから、コンスタントに情報を発信する等の顧客を飽きさせない工夫が重要です。
検索順位やSNSのアクセス数をチェックして集客が低下していないか確認すると同時に、上位表示されるホームページの傾向やSNSでトレンドになっていたり沢山検索されていたりする事柄が何かについて情報を仕入れるとよいでしょう。
売上減少の理由②内的要因
内的要因は、外的要因とは異なって企業内部の事業内容に起因し、コントロールする事が可能なものです。
売上を低迷させる内的要因は、商品・サービスの質や客単価の低下、新規顧客の獲得への対応不足等が考えられます。
売上を減少させる内的要因についても、詳細を見ていきましょう。
新しい顧客が獲得できていない
継続的に新規顧客を獲得できなければ、売上は下がります。既存顧客の全員が、リピーターになることは稀です。たとえリピーターになったとしても、いずれリピーターではなくなってしまう人もいるでしょう。
既存顧客を大事にすると同時に、新規顧客の獲得ができているかを確認することが重要です。
商品・サービスのリピートが無い
既存顧客のリピート率低下や離脱も売上の低下の原因です。顧客の総数に変化がなくても、購入回数が減れば売上は下がります。
また、既存顧客が離脱することでも売上は減少するものです。他社の商品に鞍替えしたり、顧客がその商品を必要としなくなったりすれば購入自体がなくなります。
顧客が離れてしまわないよう、継続して購入・利用してもらえるような仕組みや工夫が求められます。
客単価が低い
客単価が低くなることも、売上減少の原因です。顧客の総数が同じならば、単価が下がれば売上は減少します。
高価な商品から安価な商品に切り替えたり、購入する量が減ったりする動きがないかを確認しましょう。
企業の質(接客・商品)が低い
商品や接客の質が低いことが原因で、売上が減少することがあります。
質が低下すれば、やがて顧客はそれに気付きます。それにより、不満を抱いて離れていく既存顧客が生まれるでしょう。新規顧客であっても、他社と比較して企業の質が低ければリピートには結びつきません。そうなれば、顧客も売上も減少の一方です。
知らず知らずのうちに商品や接客の質が落ちることもありますので、定期的に顧客へのアンケート等から企業の質の評価を点検することが大切です。
現状分析・改善をしていない
何も対策を打たず、現状維持に甘んじていることも売上低下に結びつきます。
自社が変わらずとも、他社が新商品の開発やキャンペーンを打ち出すことによりシェアを伸ばそうとしていれば、顧客が流れてしまいかねません。
事業が好調であっても、常に何か施策を講じ続けることが重要です。
現状分析についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>現状分析の意味を簡単に紹介! 効果的なフレームワーク10選
売上低下の原因分析に有効なフレームワーク4つ
売上が減少・低迷したときは、原因を明確にし、それに合った対策を実施しなければなりません。そして、対策を講じた後も、分析と改善を繰り返し、時には対策を見直すことも必要となります。
売上の減少・低迷の原因を洗い出すためのフレームワークを、4つご紹介します。
1.ロジックツリー
ロジックツリーは論理的に問題の解決策を導き出すことができ、汎用性が高いフレームワークです。
ひとつの大きな問題は複数の小さな問題から成り立っているため、問題をツリー状に分解し、問題の原因や解決策を網羅的に洗い出します。現状を整理して「問題を見える化」しやすいのが特徴です。
ロジックツリーの種類は、以下のものです。
- Whatツリー:要素分解
- Whyツリー:原因究明
- Howツリー(イシューツリー):問題解決
- KPI(Key Performance Indicator)ツリー:KGI(Key Goal Indicator) の関係を表したもの。問題解決策の各要素に、数値を関連付けたものだと言えます。
売上の低迷の場合は、Whyツリーで問題の根本となる原因を探ったり、Howツリーで問題の解決手段を探ったりするのが有効でしょう。
2.PEST分析
PEST分析は、前述した外部要因を分析・整理するのに役立つフレームワークです。外部環境の変化が、自社にどのような影響を与えるかを把握・予測します。外的要因に強く影響する「政治」「経済」「社会」「技術」の英単語の頭文字を取った名称です。
外部環境の変化によって生じた不利益を最小化し、業界における自社の立ち位置や強み・弱みを理解することにも役立ちます。
- Politics(政治):法強化や規制緩和等
- Economy(経済):景気やインフレ・デフレ等
- Society(社会):世論や流行、価値観の変化等
- Technology(技術):技術革新等
PEST分析についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>PEST分析の目的・やり方を解説|ITや飲食等、様々な業界で有用
3.3C分析
3C分析は、マーケティング環境を分析するフレームワークです。外部環境として「市場・顧客」「競合」を、内部環境として「自社」を分析の対象としています。
- Customer(市場・顧客):市場や顧客のニーズの変化
- Competitor(競合):競合が市場・顧客の変化にどう対応しているか
- Company(自社):自社が成功できる要因は何か
上記の分析から、成功要因(KSF:Key Success Factor)となるものを発見して事業を成功に導きます。
4.SWOT分析
プラス要因 | マイナス要因 | |
---|---|---|
内部環境 | 強み: 自社の強みや長所、得意とすること等 | 弱み: 自社の弱みや短所、苦手とすること等 |
外部環境 | 機会: 社会・市場の変化等で有利に働くこと | 脅威: 社会・市場の変化等で不利に働くこと |
SWOT分析は、事業分析のツールとなるフレームワークです。
自社の状況を、内部環境(資産やブランド力等)のプラス要因となる「強み(Strengths)」・マイナス要因となる「弱み(Weaknesses)」と、外部環境(市場動向や政治動向等)のプラス要因となる「機会(Opportunities)」とマイナス要因となる「脅威(Threats)」の4つの項目で整理して分析します。
SWOT分析についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
>>SWOT分析とは? やり方・書き方やポイントを詳しく説明します
企業が実施するべき売上減少の対策を紹介!
無駄なコスト・在庫の削減をはかる
利益は収益から費用を差し引いたものです。ですから、売上が減っていても経費を減らすことができれば、利益の減少を少なくすることができます。だからこそ、売上が低迷している商品・サービスは、経費を見直すことが重要です。
売上が落ちた商品については、無駄な経費を減らすのは勿論のこと、生産数を絞って在庫数を削減しましょう。在庫の維持管理には、少なくない費用と手間がかさみます。
客単価をアップさせる
客単価が下がることで売上が低下・低迷するのとは逆に、客単価が上がれば売上を回復させることができます。客単価向上のために検討できるのは、以下の方法です。
- 商品等の価格を上げる
- 接客時に関連する商品や新商品を紹介する
- セット販売を行う
- 高額商品を認知・体験する機会を設ける 等
客単価を上げられれば、顧客数が増えずとも売上を伸ばすことが可能です。また、客単価・顧客数の双方を増やすことができれば、一層売上を伸ばせます。
リピート率を上げるイベント・サービスを実施する
リピート率を上げることは、売上を増加させます。リピート率とは、新規顧客が商品等をリピートしてくれた割合のことです。
新規顧客にリピートされないのであれば、商品等の質が良くないかリピート対策をしていないと考えられます。
商品・サービスの質に問題があれば改善することが必要です。また、ポイントカードの発行等によって定期的に利用するとメリットがあるということを訴求したり、リピートの切っ掛けとなる情報をLINEやSNSで発信したりすると良いでしょう。
商品開発や改善によって企業の質を高める
商品や接客の質を高めることは、顧客の満足度向上に繋がり、売上にも良い影響を与えます。新規顧客のリピート率向上や既存顧客の離脱を防ぐことに繋がるでしょう。
内部評価だけでなく、顧客へのアンケート等といった外部評価も交えながら企業の質を確認し、質の悪い部分は改善を行うことが必要です。
また、同業他社に負けない商品・サービスの開発を進めていきましょう。
【注意】分析を行わない売上減少の対策実施は危険
売上が減少・低迷したときにやってはいけないのは、分析を行わないまま根拠がない対策を実施することです。根拠がない対策は、悪手になりかねません。
逆にやらなくてはならないのが、売上の減少・低迷する原因を分析し、根拠を伴った論理的な改善を行うことです。今回ご紹介したフレームワークが、自社の内外の状況の分析に役立つでしょう。
まとめ
売上が減少・低迷しているなら、まずはその原因を分析することが必要です。その原因には、内部要因と外部要因の2つがあることを覚えておきましょう。つい、原因は自社内にあると考えがちですが、原因は自社外にある可能性もあります。
原因を詳細に分析できれば、より良い対策を講じやすくなります。是非、今回ご紹介したフレームワークを活用してみてください。
そして、原因に応じて売上減少の対策としてご紹介したこと等を実施してみましょう。